カステラ

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    現在トモフスキーとして活動中のオオキトモユキが、89年にプロ・デビューした時のバンド。もともとは早稲田大学のサークル・バンドで、盟友には真心ブラザーズの2人やエレファントラブのメンバーもいた(余談だが、真心デビューのきっかけになる「勝抜きフォーク合戦」出演の話がTV局からまずサークル代表だった桜井に来た時、「声に特徴のある」という意味で相方を倉持にするか大木にするかギリギリまで迷ったという)。
    カステラは93年に解散するが、音楽性は現在の一人宅録ユニット・トモフスキーのそれをそのままパンク・ロックで演奏したものと考えて良い。つまり、ヒネクれていて、言葉の暴力に長けていて、当て擦りや挙げ足取りが何よりも大好き。要するに「ひたすら底意地悪く」という極めてパンクな理念が、我がもの顔の傍若無人さでやりたい放題に奏でられているのだから、これはもう聴く者の倫理観次第で「快感」か「不愉快」かがキッパリ2分される。しかも、その矛先がもっぱらロック・ファンにも向けられているところがさらに性悪?というか秀逸?なところで、カステラというバンド名も「なるたけロックっぽくないバンド名にしたかったから」だし、歌詞をざっと思い出してみても「定期が切れちゃった?」だの「つるっぱげ?」だの、おおよそ所謂ロック美学の線上にはない世界をフニャけた甲高い声で歌うもの。つまり形や気分ばかりの「ロック」を思い切りコケにすることにこそ「ロック」の意味を見ていたわけで、そういう意味では目茶苦茶「ロック」なバンドだったと言うこともできないわけではない。2重3重にヒネクレまくった結果、「飽きたから」解散。——こんな理由も、カステラっぽい? (小池清彦)

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