ライヴ写真@日本武道館_1

ライヴ写真@日本武道館_1

チック・コリア&上原ひろみ ライヴ
in 武道館「デュエット」をレポート

昨年9月のブルーノート東京公演3日間は瞬く間にソールド・アウトとなり、今度は舞台をジャズ・コンサートとしては異例の日本武道館へと移した。巨大なステージにポツリと2台のピアノが置かれ、後方には二人の手元を克明に映し出す巨大スクリーンが設置されている。

今年頭にリリースされたライヴ盤『デュエット』の冒頭も飾ったビル・エヴァンスの「ヴェリー・アーリー」で幕を開けたこの日のショウ。ガーシュインの「サマータイム」ではひたすらベース・ラインで下支えするチックに、奔放にメロディを叩きつけるような上原——この実に判り易い“役割分担”が傍から見ていて微笑ましくもあり、楽しくもある。
このデュオの生命線である明快さは、いわゆる単純さとは違う。上原ひろみの何をしでかすか判らない即興演奏は時折ピアノの弦をこすってみたりとボーダーを軽々と越えてくるし、一方でチック・コリアもパーカッション片手にラテンのリズムを奏でたりと予測不能で、一つ一つの表現がアトラクション的に点在して全く飽きることがない。
一つ象徴的だった演奏がビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」。悠々として淀みないチックのテーマに、正に丘を駆け上がるかのような上原のフック部分が曲想と見事はまっていた。

曲調により様々な表情を見せつつも、猛進するようなスピードと圧倒的なテクニック、そして自由奔放なインプロヴィゼーションでひたすら走り続ける上原ひろみと、対照的に流れの中での重要な局面で奏でる“一音一音の深み”で大きな存在感を示すチック・コリア。この2人の役割は最初から最後まで一貫していた。

最後は聴衆の多くが期待していた「スペイン」で——ベタな表現だが“しなやかな闘牛士”と“猛牛”これもまた絵になる。当初、武道館に「演奏者2人はちょっと物足りないな……」という思いが過ぎったが、この2人の存在感と底知れぬ表現力に2時間近い時があっという間に過ぎて行った。
セットリスト

1.ヴェリー・アーリー (ビル・エヴァンス)
2.サマータイム (ジョージ・ガーシュイン)
3.チルドレンズ・ソング#12 (チック・コリア)
4.Place To Be (上原ひろみ)
5.ハンプティ・ダンプティ (チック・コリア)
6.フール・オン・ザ・ヒル (ジョン・レノン)
7.古城、川のほとり、深い森の中 (上原ひろみ)

アンコール
8.ボリヴァー・ブルース (セロニアス・モンク)
9.スペイン(チック・コリア)

アーティスト

OKMusic編集部

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