選曲のエキスパート“ミュージックソムリエ”があなたに贈る、日常のワンシーンでふと聴きたくなるあんな曲やこんな曲――今夜は十五夜にちなみ、夏目漱石の逸話から「あの人に“月がきれいですね”と贈る曲」です。

1.「花束を君に」/宇多田ヒカル

●死んでもいい、なんて言わないで
5年ぶりに歌手活動を再開した宇多田ヒカルさん。NHK『とと姉ちゃん』主題歌の新曲は、深みと軽やかさ、濃厚さと爽快さという相反する音色を内包し、母の死や結婚、妊娠、出産と、人生の激動を経た彼女の新次元をうかがわせる逸品です。
夏目漱石の「月がきれいですね(I love youの意訳)」をもとにした勘違いは、ドラマ第28話で描かれました。若者たちのかわいらしい恋愛模様も、この曲でどこか苦味を帯びて、より味わい深く楽しめます。
(選曲・文/麻布さやか)

2.「月の裏で会いましょう」/ORIGINA
L LOVE

●月を見上げるだけで幸せとワクワクに包まれる!
1991年の松雪泰子さん主演ドラマ『バナナチップス・ラヴ』は、当時でも異例の全編NYロケ!で、とても話題になりました。主題歌であるこの楽曲は、シングルの他、再収録バージョンがORIGINAL LOVEの中でも人気のアルバム『結晶』で聴くことができます。
――遠く離れた場所にいても、月は変わらず輝いている。初めての場所で見る月は、なんだか違って見える。そんな月の下で出会う人たち。細かい話をしなくても「月がきれいだね」って夜空を見上げるだけで、あの頃の気持ちがよみがえり、気持ちと景色が共有できる。もちろん今の気持ちも――
この楽曲を聴いていると、月を見上げるたびに出会いの奇跡とワクワクを感じさせてくれますよ。今夜、言葉の代わりに「月の裏で会いましょう」を誰かに贈ってみませんか?
(選曲・文/和久井 直生子)

3.「Moonlight In Vermont」/JUTTA H
IPP

●月のきれいな夜、あなたとお散歩
以前、犬を飼っていました。満月が近くなると血が騒ぐのか、吠えるため散歩に連れて行ったものです。
四季を綴りながら、それでも月明かりだけは変わらないね、と歌う「ヴァーモントの月」。この曲はスタンダードとして数多くの名演が残され、今も受け継がれています。今回はドイツのユタ・ヒップによるピアノ演奏を
チョイス。丁寧で優しいタッチが曲の美しさを引き出しており、素晴らしい。
犬はもういないけれども、いつか誰かと月夜の散歩をしてみたいな。こんな曲を聴きながら。
(選曲・文/旧一呉太良)

4.「マジック・イズ・ザ・ムーンライト
」/プラシド・ドミンゴ

●月明かりを浴びて素敵な魔法にかかりたい夜
ジャズのスタンダードナンバーから一曲。タイトルも歌詞も英訳コピーで、原曲はスペインの歌です。アルバム『ドミンゴ~ザ・グレイテスト・ヒッツ50』では、スペイン出身のプラシド・ドミンゴが歌うオリジナル版を楽しむことができます。
さすが世界三大テノールの一人、全てを受け入れてくれるような、安心感に包まれる歌声です。この曲を聴きながら月明かりに照らされたら、確かに魔法にかかってしまいますね。
(選曲・文/山本陽子)

5.「I say You say I Love You」/mou
moon

●月もあなたも、今日はとても美しい
YUKA(Vo)とMASAKI(G)の2人組、 moumoon。ユニット名は仏語の「やわらかい(=mou)」と、英語の「月(moon)」を組み合わせた造語です。今回紹介する曲は、2014年のアルバム『LOVE before we DIE』収録。美しいメロディーと言葉に彩られるYUKAの澄み切った歌声は、世界を浄化させてくれます。あなたが遠くにいるから“言葉にできぬI Love You”、“このメロディーに乗せて”やわらかい月が照らす思いは、愛しい人に届くでしょうか……。
(選曲・文:Kersee)

6.「Fly Me To The Moon」/宇多田ヒカ

●別の言葉で言うならキスしてってこと!
1962年のフランク・シナトラ版が有名ですが、今回は宇多田ヒカルによるR&B色が強いバージョンをご紹介。特有の深みと儚さが共存する歌声が、恋する切ない気持ちとリンクします。シングル「Wait&See~リスク~」(2000年)のカップリングとして収録され、歌詞カードには彼女手製のオリジナル邦訳も掲載されています。当時10代だった彼女の感性が溢れる、ちょっと可愛い内容ですよ。
ちなみに原曲は“月に連れて行って”が、つまりは“キスをして”や“愛している”って事なのよ、と歌う、とてもロマンチックな曲です。古今東西、月は恋する気持ちを代弁してくれる存在なのかもしれませんね。
(選曲・文/石井由紀子)
さて、お気に召した選曲はございましたか。
ぜひこれを機にCDやレコードなどの音源でも、各曲をお楽しみいただければ幸いです。
それでは、みなさまにも「死んでもいいわ」というお返事が来るよう祈りつつ……。

著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会

OKMusic編集部

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