選曲のエキスパート“ミュージックソムリエ”があなたに贈る、日常のワンシーンでふと聴きたくなるあんな曲やこんな曲――今回は、列島に雪の予報も目立ちはじめる冬本番、「ラーメンが食べたくなる曲」をお届けします。

1.「いーあるふぁんくらぶ」/作:みき
とP

●ラーメンと音楽は、国境も海も超えていく
動画共有サービス「ニコニコ動画」発祥の名曲たちの中で、「日台友好」という政治的にデリケートなタグを冠しながらも不動の人気を誇る「いーあるふぁんくらぶ」。アレンジや関連動画は数知れず、小説化・コミック化まで果たした異色の“ボカロソング”です。
同サイトでの日台ヲタク交流は、2007年「北京大学のヲタクサークルが組曲『ニコニコ動画』を大合唱(動画あり、ご存じない方はぜひ検索を)」という歴史的快挙から、今年で10年目を迎えます。
なぜこの曲でラーメンを食べたくなるのか。実は、丼でおなじみの“雷文”をバックに、ラーメンはじめ中華ごはんのイラストが次々と目に飛び込んできて……思い出すだけでお腹が鳴るのです。
(選曲・文/麻布さやか)

2.「ラーメン†デュエル」 / logical
emotion

●命がけで戦うラーメン同好会の男達
アニメソングやボーカロイドの曲をピアノでカバーした動画の配信や、TOYOTAのCMでPerfume「チョコレイト・ディスコ」と初音ミク「千本桜」のカバーを手掛け(2013年)、一躍全国区の人気ピアニストとなったまらしぃさん。彼が率いる3ピースインストバンド“ろじえも”ことlogic emotionのアルバム『TWELVE』から、今回は「ラーメン†デュエル」をご紹介します。
メンバー自ら“名古屋のラーメン同好会”と名乗るほどのラーメン好き。一体何と戦っているのか、麺が最高に美味しい瞬間を逃さない瞬発力や、どの具材から食べるべきかを見極める洞察力などが表現されています。ラーメンへの情熱が熱々の一曲です。
(選曲・文/下森 也実)

3.「可能性」/サンボマスター

●ラーメンもサンボマスターも人を元気にするのだ!
深夜1時。繁華街にある、煮干しラーメンの名店で聴きたいのが、この曲。ラーメンは、ちぢれ太麺にチャーシューも乗っているので、けっこうなボリュームなのですが、深夜に食べても胃がもたれない、優しさがあるのです。サンボマスターも、ロックでパンチがありますが、聴いている人を励ます優しさを持っています。
こんな深い時間に冷静にラーメンを食べるのは、誰かと真剣に話し込んだとか、深夜まで働いていたなんて時でしょう。ラーメンもサンボマスターも、どちらもパンチはあるけれど、優しく人の心を温めてくれる存在です。しっかり食べて、音楽聴いて、明日からも頑張ろう!と思うのです。
(選曲・文/石井由紀子)

4.「Bite My Nails feat.藤原さくら」
/冨田ラボ

●優しい雰囲気のラーメンと藤原さくらに癒される
野菜と鶏だけからスープを取って、最後の一滴まで飲み干せるラーメン。しかも、店内のインテリアは、木のぬくもりが感じられるオシャレ空間。そんな場所では、ゆったりとした曲を聴きたいと思うのです。
この曲は、音楽プロデューサー、冨田ラボが今を輝く若手アーティストとのコラボレーションで発表された曲のひとつです。藤原さくらの少し憂いの感じる歌声と、美しいメロディに耳を傾けながら、野菜ポタージュのようなスープに細麺を絡ませてすする。なんとも優雅な時間が流れていきます。
裏路地にたたずむお店で、優しい味のラーメンを食べれば、午後からも豊かな気持ちで仕事に臨めそうです。
(選曲・文/石井由紀子)

5.「大寒町」/あがた森魚

●懐かしい中華そばが食べたくなる曲
私が学生だった頃、まだ東京の町中でも夜になると中華そばの屋台が現われました。冬の寒空にすするしょっぱいしょうゆ味の中華そば。今思えばとるに足らないことに一喜一憂しながら、今日を終わらせて明日を迎えるた めの一人の儀式。「輝け星よ 月よりも あの娘のしあわせ てらし出せ」。夜空に別れた恋人の幸せを願うセンチメンタルなこの曲を聴くと、何故かあの中華そばを食べたくなります。
あがた森魚の近作は、過去挑戦した様々な音楽スタイルが消化されて自由で開放的になり、特に昨年発表された『近代ロック』は、人懐こいメロディとシュールな詞、そして刺激的なサウンドとユニークなボーカルが一体化したタイトル通りの快作です。
あがた森魚『噫無情』(1974年作)収録。
(選曲・文/藤原学)

6.「ラーメンたべたい」/矢野顕子

●「ラーメンな女たち」のための、ラーメンが食べたくなる曲。
「男もつらいけど女だってつらいのよ」と、カップルの横で一人黙々と、でもしっかり「葱とにんにく山盛りね」とか注文付けてラーメンを食べる「わたし」。「あきらめたくないの」という「あなた」への気持ちを、熱くてうまいラーメンで乗り越えようとする「わたし」。切なさと、現実的な逞しさの仲をラーメンが取り持って同居している、矢野顕子にしか書けないこの曲は、高校の国語の教科書にも載りました。
今年1月に再上映されたドキュメンタリー『SUPER FOLK SONG』では、彼女の音楽の裏にある創作の厳しさと喜びを垣間見ることができました。同名アルバムの「大寒町」の弾き語りでは、切なさと現実的な強さが一発録りで一層際立って、あがた森魚のオリジナルとはまた違った深みを与えています。
矢野顕子『オーエスオーエス』(1984年作)収録。「大寒町」は『SUPER FOLK SONG』(1992年作)収録。
(選曲・文/藤原学)
さて、お気に召した選曲はございましたか。
ぜひこれを機にCDやレコードなどの音源でも、楽曲をお楽しみいただければ幸いです。

それでは、また次回に。

著者:NPO法人ミュージックソムリエ協会

OKMusic編集部

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