【フジファブリック】時間はかかって
しまったけど 無駄なことはひとつも
なかった
前作から約2年のインターバルののちに完成した3rdアルバム『TEENAGER』。じっくり時間を費やして制作され、メンバー個々の作品が収録されるなど、これまで以上にバラエティに富んだカラフルなアルバムに仕上がった。
取材：岡本 明
今回のアルバムはリリースまでに時間が空きましたけれど、楽曲の制作は続けていたのですか?
金澤
ずっとやってましたね。ただ、ドラマーが抜けて、今までスタジオでやっていたセッションができなくなってしまったんです。それでドラマーを探したり、みんながそれぞれの家でデモを作って持ち寄ったり。
山内
今になって思うと長いと思うんですけど。時間がかかってしまったのはしょうがないよ、こんないい作品ができたんだから、ということで（笑）。
加藤
でも、その間に無駄なことはひとつもなかったので、全部が作品に結び付いていると思います。音楽以外でも何であれ、影響を受けたり、取り込んだり。それらを発するためにこの期間はあったので、意味があったと思います。
確かにバラエティに富んだアルバムに仕上がりましたね。山内さんの「まばたき」は落ち着いた曲ですけれど、「記念写真」「B.O.I.P」はアッパーだし。
山内
僕が作ると暗い曲が多いんです（笑）。作った時の心境もあるんですけど、「まばたき」はアコースティックギターで作っていて落ち着いた感じになっています。「記念写真」「B.O.I.P」はアルバムを作っている最中だったので、テンポのある曲を作りたいと思って作ったんです。
「星降る夜になったら」は金澤さんと志村さんの共作ですね。
金澤
これは自分で最初から最後まで作ってみて、ちょっと惜しかったので、志村に手直ししてもらいました。こういう形で完成するのは今回が初めてですね。1stや2ndで自分の曲をやろうとは思ってなかったんですけど、今回やってみようと思ったんです。結果、すごく良かったです。
共作といえば、志村さんとロジャー・マニング（元ジェリーフィッシュ）との「Chocolate Panic」も面白い曲ですね。
志村
そうですね。僕が書いた曲のスケッチにロジャーがサビを付けてくれたんです。そこからアレンジをフジファブリックでやりました。この曲、ジェリーフィッシュっぽいじゃないですか。でも、それはロジャーが参加したからじゃなくて、間奏の部分もフジファブリックが考えているんですよ。だから、してやったりというか。ロジャーに挑戦してやる、そういう“VS”精神を込めて作りました。曲を作るには尊敬しているアーティストでも対等の立場ですから。ロジャーがどう思っているかは別ですけど（笑）。
レコーディングはどんなふうに作業が進んでいったのですか?
志村
2007年はフェスにたくさん出ていたので、夏は週末がフェス、それ以外は練習とレコーディング。その気持ちの切り替えが難しかったですけど、逆に新鮮でした。レコーディングしている時に、“ライヴでこういう曲やりたい”って作ったものもあったし。「TEENEGER」とかそうですね。いい形でライヴとレコーディングのバランスが取れていたと思います。
加藤
レコーディング自体は時間があったので、曲を詰めるプリプロの時間がちゃんと取れました。ライヴとレコーディングが、お互いにいい作用をもたらしたというか。
山内
やれることはやったという感じはあります。レコーディングマジックが起きてプレイを変えたり、そういうことが結構あったんです。「B.O.I.P」や「Chocolate Panic」のエンディング、「ペダル」のアタマとか、要所要所ありますね。みんなが曲に対して、歌に対して、向き合ってレコーディングができたんじゃないかな。今後のレコーディングの楽しみが増えたと思います。
これから先の作り方に影響ありそうですね。
山内
デモを作っているところから、今までとは違うので。これまではセッションで土台を作ってましたから。ただ、制限も出てくるんです。デモを出した時点である程度完成しているじゃないですか。それを超えるというのは難しいんですけど、まったく別物と考えてやるようにしました。その曲のあるべき姿を突き詰められたと思います。
志村
曲を作ってメンバーと合わせた時に、“自分ではこれは浮かばないな”というフレーズが出てくるとうれしいですね。そういうバンドマジックを求めてやっていきたいです。好きなのはセッションですけど、やり方として筋道が通っているのはデモなので。両方ありですね。
“TEENAGER”というタイトルにしたのは、勢いにあふれたティーンエイジャー魂みたいなところから？
志村
中学生～?高校生のはちきれんばかりのパワーってあるじゃないですか。あの集中力に負けてはいけないと思ったんです。いろんなことを経験して、あの時とまったく同じことはできないけれど、これからも追い続けていくっていうことを象徴した曲が「TEENAGER」。アルバムもそうしたいと思ったんです。ロックをやる限り、永遠にロック少年でいたいという決意がありますから。26?27歳で少年というのもどうかと思いますけど（笑）、潔く言っちゃう。ジャケット写真は女の子がぶら下っていて、顔も引きつってる。それがロック。ロックの定義は重力に逆らうことなんです。丸くならないで尖っていたい、逆らい続けることがロックですから！
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