取材:石田博嗣

新しい武器を手に入れて、さらに強くな
れた

前作『URGE』は“一番すごいアルバム”を作りたいということで、ロック感を出し惜しみせずに詰め込んだ作品だったのですが、今作は?

それをさらに推し進めることに重点を置いた…アルバムを出す時には毎回そういうことを思うんですけど、今回はその想いがより強かったですね。なぜかと言うと、『URGE』が僕に与えてくれた自信とか、そこから見えた自分のスタイルみたいなものを、さらに絶対的なものにしていくために、“ここで前のアルバムに負けられないだろう”っていう想いがあったんで。

でも、『URGE』が音の塊のような作品だったのに対して、『RIDE』はギターリフを押し出したバンドサウンドだし、楽曲自体はスケール感があってポップですよね。

『URGE』で突きつけた衝動は当然のように今回にもあるんですけど、同じことを繰り返しても刺激を感じないんで、『URGE』の先にあった世界がこれなんですよ。聴いた瞬間に何かが弾け飛ぶようなインパクトのある曲を作っていきたいと思っていたんです。自分の中でのポップ…“優しくなる”とかそういう感じでは全然なくて、より鮮明に、より色濃く、エネルギーを生み出すためには、こういう世界が必要だった。“今までの自分にはなかった新しいものだな”と思いつつやってたんで、それこそトライでしたね。リフの重要性、メロディーの重要性を考えるというのは。

アレンジもシンプルですよね。

そこも新しいところなんですよ。より曖昧なところをなくしていきたかったというか、バンドとしてやれることがまだ全然あるよねってことで。レコーディングのエンジニアとも“今までで一番すごいサウンドを作りたいよね”って話してたんですよ。それでレコーディング方法を変えたのかっていうと、実はそうではなくて、視点を変えたんです。例えば、ギターをパワフルするために何本を重ねるんじゃなくて、1本のギターをよりパワフルなものにするっていう発想で、マイナスすることによってプラス以上の効果を望んでいたというか。プレイヤーの息吹や呼吸感を感じるように。だから、今回のアルバムの曲ってすごく色めき立っているのかもしれない。

実際にバンドアレンジを進めていく時はどんな感じだったのですか?

作っては壊しってことを何度もやってましたね。ギターソロも何タイプも録って、“一番いいのはどれだろう?”とか。バンドサウンドの原点に立ち返りたかったというか…“今の俺たちだったら、シンプルにしてもカッコ良くできるよね”って感じでしたね。

個人的には「Speed of Love」の間奏部のグルーブがすごく気持ち良かったです。

まさに『Speed of Love』は、そういうことが如実に出ている曲ですね。実は、あの間奏部ってメロディーを弾いている楽器がないんですよ。なぜかと言うと、メロディーを入れることによって緊張感やグルーブ感が壊れてしまう可能性があると思ったんですね。だから、そのままリフでどんどん押していこうよって。そういう意味では、もともとロックバンドが持っているスリルというものが、この曲には入っていると思うんです。狙ってやることはできない音、曲になったと思いますね。

歌入れにはどんな気持ちで挑みました?

言いたいことばかりが先行するわけでも、メロディーばかりが先行するわけでもなく、その両方をうまくやれたらどんなものになるんだろうって。そこでの試行錯誤はありましたね。今までの手法だと上手くいかないと思ってたし、いろんな表現方法を試して初めて成り立つと思ったんですよ。例えば、人を包み込むようなイメージの曲って、実はものすごくパワーがいるんだろうなって。シャウト一発と同じぐらい…いや、それ以上の強さがないとできないなって思ったので、そこに向ってのトライをしていきました。

歌詞は曲が出そろってから書いたのですか?

だいたいのビジョンは頭の中にあったんですけど、それを言葉に置き換える作業は曲が出そろってからですね。気が付けば歌詞に“時間”とか“光”という言葉を無意識に使っていたんですけど、そういうベクトルが前に向いているものに乗っていくイメージがあったんですよ。だから、アルバムを作っている時から、タイトルの“RIDE”という言葉はキーワードとして、ずっと頭の中にありましたね。アレンジがシンプルになった分、サウンドをさらに力強くしていていくためには、自分たちが音に乗っていかないといけない…乗り物って前に進むために乗るものだと思うんですよ。バックするために乗る車ってないじゃないですか。目的地に行くために乗るわけだから。そんなベクトルが前に向いているものに乗るようなイメージがあったんで、“RIDE”をタイトルにしたんです。

この『RIDE』は『URGE』が1stアルバムだとしたら、2ndアルバムのような感じですね。

そうですね。『URGE』というアルバムを作ってなかったから、ここに辿り着けなかったと思うんです。だから、新しい武器を手に入れて、さらに強くなれたと思いますね。

アルバムのリリースに先駆けてツアーがスタートするのですが、どんなライヴが期待できますか?

『RIDE』というこのアルバムに入っているのは、ライヴのために書いた曲ばかりなので、今までになかった要素がパンパンに詰まっていると思うんですよ。そんなアルバムを引っ提げてのツアーなんで、すごいライヴになるって思っていて、今からドキドキしてますね。それに、全国をぐるっと一周してきたファイナルが日比谷の野音だし、野外で独特な会場なんで、そこででかい音で最高のロックを鳴らせると思うと楽しみでしょうがないです。“オフィス街をぶっ壊せ!”って感じですね(笑)
J プロフィール

ジェイ:1992年にLUNA SEAのベーシストとしてメジャーテビュー。97年、LUNA SEA の活動休止を機にソロ活動を開始。翌年LUNA SEA を再開するが、00年12月の東京ドーム公演にて終幕し、本格的にソロ活動をスタートする。03年にはアリーナ・オールスタンディングによる、ソロ活動初の武道館公演を実施。その後もとどまることなく自身の音楽を追求し続け、17年3月にはソロデビュー20周年を記念したベストアルバム『J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> [W.U.M.F.]』を発表。現在は10年に再始動したLUNA SEAとソロの両輪で活動中。J オフィシャルHP

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