取材:金澤隆志
ミラーボールの乱反射が体温を上昇させ
ていく
本作はラグジュアリー・ディスコシリーズ3部作の第2弾ということになりますが、前作と比較してイケイケ感が強くなっていますね。
コンセプトは“アフター・ミッドナイト”。深夜0時過ぎの一番ホットな時間帯ってことで、ダンサブルなものを立て続けに送りたくて。あと、前作『ready to disco』が“キラキラ”だとしたら、こっちは“ギラギラ”。白と黒、天使と悪魔という相反した関係。よりダークで“夜”の雰囲気が強いかも。気が付いたら、スウィートな部分がまったくなかったんです(笑)
リードトラックの「Leave」なんて、まさにそういった雰囲気を持った曲ですよね。これは、ブリトニー・スピアーズ、マドンナ、カイリー・ミノーグとの仕事で知られるスウェーデンの著名トラックメイカー、Bloodshy & Avantによる曲なんですね。
これは5つの候補曲の中で一番頭に聴いた曲で、ほぼ一目惚れ。聴いて3回目ぐらいには、もうメロディーと歌詞の内容が浮かんできました。トラック自体がすごくシンプルでストレートだったので、R&B風、ブラック風といった感じではなく、ストレートで凛々しい歌を乗せようと。スピリットは完全にロック。“キレイじゃなくていい、メッセージもダーティーでいい”という。私自身のライフスタイルが、あまりハッピーなモードではなかったので、そういった部分とカチッとハマったんでしょうね。
イメージを作り込んだというよりは、全てをさらけ出した…ボールドな雰囲気が感じられるのは、それが理由かもしれないですね。
そう、ボールド! まさにそういうことなんですよ。女のヒステリックな部分、異常にエロい部分、それら全てひっくるめて表現したくて。女性なら誰もが持っているはずなんだけど、それを出せないのなら、私が出すからそれを感じてほしいなと。
「The Sign」は徐々に曲のスピードが増していく、不思議な曲ですよね。
途中でBPM(曲のテンポ)が上がっていくように感じるんだけど、実はずっと一定。この曲はブロックごとにキーが半音ずつ上昇していき、最後まで戻ってこない。音程が上がることによって、スピード感が増しているんですよね。要は、“サビでは必ず盛り上げよう”という意識の延長なんだけど、2番が来たら“もっと盛り上げたいから、もう少し上げようか?”とやっていたら、そのままどんどん上がっていってしまったという(笑)
キーがブロックごとに上がっているということは、レコーディングでも使い回しが効かないということだから、かなり歌ったんじゃないですか?
メインは歌うにしても、せめてコーラスとかはコピーペーストしますよね。それが一切できなかったから、全て歌ってるんですよ。本当に大変でした(笑)
「Hot Love」は、タイトルに反してすごくクールダウンした曲になっているという。
80'sを強く意識した曲。ミッドテンポな感じもそうだし、歌詞やタイトルのプチダサな感じとかも(笑)。“ヒール履いて”“グロスを舐めて”とか、普段の私だったら絶対に歌わないようなものを何のためらいもなく、しっかり歌うのがコンセプト。当時はそういうものが好きで、クールだと思っていたわけだから。今だからこそ、そういうものをやりたいという気持ちもあるんですよ。
ラストの「One More Song」は、まさにディスコのラストを締め括るのに相応しいスローバラードですね。
これで今日は終わり、“私の思いまで持って行ってしまうの?”というちょっと悲しいチューン。“もう終わっちゃうの?”という。朝の5時ぐらいのイメージかな。言い替えれば、全然帰らない迷惑な客なんだけど(笑)。恋愛が絡まない、クラブそのものをフィーチャーしたスローなディスコバラードというのを、日本では聴いたことがないなぁと思って、そういうドライなものにしたかったんです。
「バビロンの奇跡」のリミックスは、カラッとしたオリジナルの空気感から一転して、ダークな雰囲気が出ていますね。
の曲は私のソロ2ndシングルだったんだけど、それまでずっとダンスミュージックをやってきたこともあって、スタッフやリスナーともどもウケが良くなくて。でも、ずっとライヴでやり続けてきたこともあって、私らしさのひとつの要素として確立できたと思うんです。今回こうした私らしいアレンジになって帰ってきて、スタッフがこの曲を受け入れてくれたことがすごく大きかったですね。
こうして見ると、前作に引き続き80'sの要素がキーとなっていますよね。それは当時の表現手法ということだけではなく、1曲に詰まったメロディーの豊富さも含めて。
やはりあの時代を通過していたから、自然とそうなるんですよね。1フレーズでループというのも嫌いじゃないけど、私にとってメロディーの豊富さを追求することは自然なことだから。80'sの楽曲の持つメロディーとメッセージは本当に強烈で、もしそれがなかったら私はここまで音楽にのめり込んでいなかったと思いますしね。
タイトルは、80'sらしさを匂わせつつも、楽曲の幅をうまく表しているように感じられました。
“fever”という言葉は、イケイケな側面ばかりが捉えられがちだけど、“熱”“クレイジー”“ドラマチック”、そして“病気”というニュアンスを含んでいて、今回の楽曲にはそうした要素が全て詰まっているんです。