【amazarashi】まだamazarashiに出会
っていない人たちへ

デビューから約7年、amazarashiの軌跡を26曲に集約した初のベスト盤、それが『メッセージボトル』。選曲、想い出、分岐点、そしてファンへのメッセージまで、秋田ひろむ(Vo&Gu)が真摯に綴るメールインタビュー。
取材:宮本英夫

“メッセージボトル”というタイトルにはどんな思いを込めていますか?

アマチュア時代にやったライヴイベントのタイトルが“メッセージボトル”でした。当時の僕らの歌は宛のない手紙で、誰かに向けたSOSだと感じていたので、そういうタイトルを付けました。今になってamazarashiとしてひと区切り付けて、またここから新たに、まだamazarashiに出会っていない人たちに届いてほしいという気持ちを込めて“メッセージボトル”としました。

完全生産限定盤と初回生産限定盤には最初期である“あまざらし”時代のミニアルバム『光、再考』の全曲、イラスト、小説などアーカイブ要素の強い豪華パッケージになっていますね。

アーカイブというのは最近とても意識してます。ここ2〜3年はCDがなくなるんじゃないかと言われたりしていて、でも未だにリリースできてるわけなんですけど、せっかく作ったものがいつかはなくなってしまうっていうのは悲しいので、できるだけかたちに残したいという気持ちがあります。YouTubeにあげているMVとかもアーカイブと言えると思うんですけど、CDを買ってくれるのは熱心なリスナーだと思うので、できるだけ豪華に盛りだくさんに、というのは意識してます。

26曲の選曲はどのように進めていきましたか?

初めてamazarashiを聴く人をイメージして、あとはこれからもずっとライヴでやっていくであろう曲を選びました。どの曲を入れるかはスタッフとも結構意見が割れて、amazarashiは人によって思い入れのある曲がとても分かれるなぁと思いました。最終的には僕が独断で入れるのが正しいだろうということで、そうしました。いわゆるリード曲(「アノミー」「クリスマス」など)で収録してない曲もあるし、ポエトリーリーディングの名曲とかも入れたかったし、「雨男」とか「エンディングテーマ」とか入れたいけど泣く泣く外した曲もたくさんありました。

シンプルに“よくできた”と思う曲、自身の中で満足度が非常に高い曲を、ひとつ挙げるとするならば?

「ひろ」でしょうか。思い入れと完成度が両立している曲だと思います。

初期からずっと変わらないことと、変わってきたこと、その両面について今感じることは?

歌詞、曲に関しては、やりたいことはそんなに変わってない気がします。環境が変わった分だけ視点が違っているという変化は感じますが。ライヴをやってきた分だけ、ライヴメンバーとの関係も縮まってバンドとしての成長もあるので、アレンジの部分とかバンドらしさとか、そういうところは自ら望んで変化してきた部分だと思います。

振り返って、分岐点だったなと思うような曲や時期はありますか? そして、バンドの成長曲線というものが描けるとすれば、どんなラインを描けるでしょう?

初期はライヴもやらなかったので、他者を意識し出したという意味で分岐点は「終わりで始まり」を作ったあたりでしょうか。誰かのおかげで今がある、みたいな感情が芽生えてきた時期だと思います。ミクロの視点で見れば、僕らの歴史は曲がりくねってたと思います。逃げ出したいこともたくさんありました。でも、今になって遠くから俯瞰すると、わりと右肩上がりで、楽しく音楽をやれる方向に向かっていると思います。

アルバム中の新曲「ヒーロー」は、ドラマ『銀と金』の主題歌ですが、どのように作っていったのでしょうか?

僕らの曲を気に入ってくださったので、『銀と金』を意識して少し歌詞に手を加えて完成させました。僕が作ったデモの段階ではわりとゆったりした曲調だったんですけど、ドラマの切迫感や緊張感に合わせてアッパーな曲になりました。僕は怠け者なので、よく“ヒーローだったら頑張れるのにな”と考えるんです。けど、逆境の時こそ立ち上がるのがヒーローだとすると、誰もがヒーローになり得るんじゃないかということを考えながら作りました。

新録音「つじつま合わせに生まれた僕等(2017)」ですが、リメイクにこの曲を選んだ理由は?

「つじつま合わせに生まれた僕等」は、僕の大事な曲で人気もある曲です。これが入ったインディーズ盤はリリースした当時は百万枚売れると思ってました。でも、数百枚しか売れませんでした。さっきのアーカイブの話も関係するんですけど、MVもないのでYouTubeにも公式の動画はありません。なんかそういうものが諸々もどかしくて、それなら今回リード曲にして、MVも作ってアーカイブとして残して、もう一度世の中に広まってくれないかなと願って収録しました。今の僕らの生々しさが出てると思います。

ファン、リスナーの存在は、秋田さんにとってどういうものですか? それを踏まえて、このベスト盤を手に取った人へメッセージをお願いします。

amazarashiは良い意味でファンとの距離感があると思ってます。シビアな目線で見られてるというか。僕もファンに依存して曲を作ったら違うだろうし。その分、僕のやりたいことを尊重してくれてる感じもあります。いいものは買う、要らないものは要らないという関係がお互いのためにいいと思います。今回のベストも価値を感じない人は買わなくてもいいと思ってます。MVもフルで公開するので。
『メッセージボトル』2017年03月29日発売Sony Music Associated Records
    • 【完全生産限定盤(3CD+DVD)】
    • AICL-3302〜6 6264円
    • ※変形A4サイズ布貼り上製本(amazarashi詩全集、小説、イラスト集)、あまざらしミニアルバム『光、再考』
    • 【初回生産限定盤(3CD+DVD)】
    • AICL-3295〜9 4104円
    • ※CDサイズ上製本(小説)、あまざらしミニアルバム『光、再考』
    • 【通常盤(2CD)】
    • AICL-3300〜1 3024円
amazarashi プロフィール

アマザラシ: 青森県在住の秋田ひろむを中心としたバンド。2010年のデビュー以来、一切本人のメディア露出がないながらも、絶望の中から希望を見出すズバ抜けて強烈な詩世界が口コミで広まり、瞬く間にリリースされたアルバム全てがロングセールスを続けている。ライヴではステージの前にスクリーンが貼られタイポグラフィーなどを使用した映像が投影されて行なわれるスタイルで独自の世界観を演出し、3DCGアニメーションを使ったMVは文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞するなど国内外で高く評価されている。amazarashi オフィシャルHP

OKMusic編集部

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