【クリープハイプ】1枚目と対になる
4枚目のアルバム
藤原竜也主演のドラマ『そして、誰もいなくなった』の主題歌「鬼」や映画『脳内ポイズンベリー』の主題歌「愛の点滅」など、4枚のシングルを収録した4枚目のアルバム『世界観』。初の小説『祐介』も好調な尾崎世界観(Vo&Gu)が語るバンドの今とは!?
取材:永堀アツオ
ドラマ『そして、誰もいなくなった』の主題歌として書き下ろした最新シングル「鬼」のお話からお伺いしたいと思います。ドラマ主題歌のオファーがきた時はどんな心境でした?
やっぱり素直に嬉しかったですね。ドラマタイアップというのは、ずっと辿り着けなかったところであって。タイアップというもので考えると、ひとつのゴールだという気もしていました。
楽曲制作はどのように進めたのですか?
最初にプロデューサーの方と監督さんと顔合わせもかねてお話をさせていただいて。その時に脚本の一話を読ませてもらって、すごく面白いなと思って。そのあと、まとめて4話分いただいて、そこまで読んで作りましたね。すごく不思議というか、どんどん振り回される話なので、思った通りのことを無茶苦茶に書こうと。今までは、例えば映画なら原作や脚本が完成しているものを読んでから作っていたけど、今回は最後まで読んでいなかったので、まだ自分の中でも完結していなかったんです。そういうことも含めて、全部前向きにとらえようと思って作りましたね。
“キャスト全員が容疑者”というドラマと同じように、鬼がどんどん入れ替わるようなスリリングな曲になってますね。
そうですね。歌詞は人との関係性というか、自分と他人や、人が見ている自分と自分が思う自分とのズレだったりとか…いつもとやってることは変わらないんですけど、今回もそれを“かくれんぼ”とか“鬼ごっこ”というテーマにして書いていて。鬼が自分なのか人なのかということも含めて曖昧なものにしているし、主観や客観もあまり気にせずに、グチャグチャに入り乱れてもいい方向にいくだろうと思って感覚でバッて書いていきました。曲が強いというか、音に引っ張られるところもあったので、サビは記号的なリズムを出すための言葉にしようっていう感覚で作りましたね。せっかくドラマのタイアップという機会をいただいたので、代表曲になるようなものにしたいなと思ったし、僕らにとってはアルバムにつながる大事な曲になったと思います。
この曲のMVでは松居大悟監督とのコラボレーションがシングルとしては4作振りに復活しますよね。
深い意味はないんですけどね。久しぶりだし、なんとなくいいかなと思って。たまたまタイミングが合って全部はまった感じで。偶然なんですけど、出来上がってみて、いいものができて良かったなと思っていますね。すごく安心しました。
メジャーデビュー作にして初タッグを組んだ「オレンジ」と近いムードを感じました。原点回帰を思わせるシチュエーションで、さらにダンスシーンとか新しい挑戦もあって。
そうですね。それぞれが変わっていっている感じもちゃんと出せたと思うので、このタイミングに一緒にやれて良かったです。
そうですね。それぞれが変わっていっている感じもちゃんと出せたと思うので、このタイミングに一緒にやれて良かったです
そうですね。できた時から「手と手」みたいな曲だなと思ってました。いろんなことをやりたいなと思いながら作っていった中で、最後にこの曲ができて。8ビートで前のめりな曲が欲しかったんですけど、あまりにもこれまでのクリープハイプらしい曲だったので、逆になかなか歌詞が書けなかったんです。でも、「手と手」で別れたあとの話として展開しようって決めてからはすぐに書けました。グチャグチャになったアルバムがちゃんと締まったと思うし、結果的には4枚目のアルバムだけど、溜めてきたものを全力でぶちまけた1stと対になるようなアルバムになったと思いますね。
今、“いろんなことをやりたい”と言ってましたが、アルバムでも映像と同じように初心に返りながら新しいことにたくさんチャレンジしていますよね。一番驚いたのは、ラッパーのチプルソをフィーチャリングしたヒップホップの「TRUE LOVE」です。
MCバトルを好きで観てたんですけど、その中で一番カッコ良いなと思っていて。すごく好きになって、イベントにも出てもらったりしたんですね。大阪に行くたびに会ってるし、アルバムで一緒にやりたいって決めていて。ある種、冒険ではあるけど、今回はやってみたいことはやろうと思っていたから。「TRUE LOVE」のレコーディングでフリースタイルを10分以上もやってくれたのも貴重な経験でしたね。
また、全編打ち込みによるアーバンR&Bの「5%」も入ってますよね。
もともとは弾き語りであった曲なんですよ。今までだったらやらないか、無理やりバンドでやって、イメージと違うところで着地するかっていうふたつの選択肢しかなかったんです。そういうもんだって諦めていたんですけど、今回は初めて理想のところでやってみようって思えて。
これもかなりの挑戦ですけど、より自由になった感じがしますよね。曲に対するアプローチの幅が広がったというか。
ただ、ライヴでどう表現するかが難しいんですよね。まだどうなるか分からないけど、楽しみたいとは思ってます。
バンドという形態にこだわらない自由さを見せる一方で、最後にメンバーへの愛を込めた「バンド」が収録されていますが。
バンド以外のこともやり始めたので、最後にバンドのことを歌って、いろんな人に安心してもらいたいなと思って。自分の過去を振り返ったのが初めての小説『祐介』だとしたら、今の自分が詰まってるのが、このアルバム『世界観』なんですね。たくさんのことを得て、同時に失ってもきたけど、時間が経ち、今はいろんなことがいい方向に向いてるんだなっていうことを感じてもらえたらいいなと思いますね。
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『世界観』2016年09月07日発売UNIVERSAL SIGMA
- 【初回限定盤(DVD付)】
- UMCK-9860 3996円
- ※三方背トールケース仕様