【SpecialThanks】新しいスペサンが
始まった感覚がある
ミニアルバム『heavenly』は大きな“変化”を刻み付けた転機作だ。日本語詞の割合がグッと増え、聴かせることに比重を置いた魅惑の楽曲が並ぶ。新たな輝きを放つスペサンの新作についてMisaki(Vo&Gu)が語る!
取材:荒金良介
昨年11月に行なった下北沢GARDENのワンマン公演(今作にライヴDVDが収録)は素晴らしかったです! 約30曲2時間半に渡る内容でしたが、あのライヴの感触はどうでした?
楽しかったです。あのツアーは初日と最後のほうで、私の中で歌い方が全然違ってて。初日は完璧な状態ではなく…演奏、精神的にも(笑)。ツアーでお客さんと一緒に成長できたらいいなって思って…結果、成長できたと思います。
成長できたポイントと言うと?
メンタルですね。初日は堅くて、気合いが入りすぎちゃって。それでお客さんの笑顔に励まされて、結果として誰かのために歌いたいという気持ちが芽生えました。
アコギの弾き語りもMisakiちゃんにとってチャレンジでしたよね? アコギを弾きながら、“腕が疲れちゃった”と言う人は初めて観ましたけど(笑)。
そう! アコースティックは自由ですから(笑)。バンドは大きな音が魅力だけど、アコースティックは自分の声が埋もれないから、そこが好きです。
それで改めて紙資料を読むと、スペサンはデビューから毎年作品を出し続けてて、それにも驚いたんですよ。
レーベルから後押しされた部分もあるけど、自分の中でも働きながら音楽活動を続けているから、1年に1枚は出そうと。それをやらないと、どちらも頑張ってない気がするので。
なるほど。すごいことだと思いますよ。そして、今作は日本語が増えたことも大きなトピックで、新しいスペサンの姿が刻まれた良いアルバムですね。
今までずっと自信満々でインタビューを受けていたんですけど(笑)、今回はレーベルの社長のKOGAさんに、毎回“大丈夫かな?”と訊いてました。カッコ悪い曲を作ったとは思わないけど、ちょっとドキドキしてます。前アルバムの『missa』(2015年7月発売)を作ったあとに変わりたいという気持ちがあって…。今までは安定主義だったし、老後のことを考えるような人でしたからね。
それはデビュー時から言ってましたね(笑)。
だけど、仕事でも経験を積んだし、ちゃんといいふうに変われる自信も付いて。「DOUNARUNO!?」に《ときめいてる心に 素直に やってみたいの》という歌詞があるんですけど、トキメキのアンテナを張り巡らせたいなと。
それは『missa』でひとつやり終えた感覚があるから?
“やり終えた”と言うより、まだまだこれからやるぞ!って。今回の音源から新しいスペサンが始まった感覚はあります。あと、自分が魅力的にならないと、誰にもカッコ良いと思ってもらえないから。前は、自分で変わっちゃいけないと思ってたんですよ。でも、ある時に“自分が決めたルールなんて別に破っちゃえばいいじゃん!”って思えて。
日本語が増えたのもそういう理由ですか?
日本語の楽しさに気付いたことが大きいですね。最初はTVアニメ『オオカミ少女と黒王子』のオープニング曲(「LOVE GOOD TIME」)を書いた時に、歌ってても楽しいし、作詞するのも楽しかったんですよ! 最初の頃の歌詞は自分の日記みたいな内容だったから、恥ずかしかったけど。徐々にみんなのために歌いたいと思うようになり、自然と歌詞も変わりましたね。みんなに伝えるなら、日本語でしょ!って。
今作はパンキッシュな曲がグッと減りましたよね。
MVにもなった「HELLO COLORFUL」「Getting on」とか、そういうノリも好きだから。メロコアは乗りやすいけど、静かな音楽をやる人たちのお客さんは、みんなじっと観てるわけじゃないですか。そういう観せ方にも挑戦したかったんです。完全に静かなバンドになる気はないし、両方できたらいいなと。
「SWEET」はアコギで静かに始まり、2ビートに突入する展開は新鮮でした。
今までのスペサンを受け継ぐような曲ですね。だけど、歌詞は挑戦でした。
《世界平和安全〜》という冒頭の歌詞は今までにないテイストですね。
震災もあったじゃないですか。日本の政治とか、あまり詳しくないけど、自分でも日本の状況はあまり良くないと思うから。ありきたりな歌詞は嫌だし、そこも新たな挑戦ですね。
メッセージ性の強い歌詞も含め、今作は聴かせる曲調が多いですしね。聴き手と目と目を合わせて、じっくり語り合いたいという気持ちが曲調からも伝わります。
お客さんともっと深く関わりたい。その気持ちは強いですね。あと、スペサンのファンは英語、日本語どっちも好きと言ってくれる人が多かったから。自信を持ってやれました。
個人的には「KOKOKARA」が一番好きな曲です。ウィスパーヴォイスと低い声を使い分けて、まるで女性、男性と役柄を演じているような歌声にびっくりしました。
本当はそういう声も出せるんですよ(笑)。小学生の頃から宇多田ヒカルさんみたいな囁くような歌い方もしていたけど、バンドではそれを出したことがないだけなので。普段歌ってるような歌声も入れてみようと。あと、最後の「Please watch me」はインディーズデビュー作を出す前からあったデモ曲なんですよ。中学生の頃に作った曲で、なかなかいいセンスしてるなって(笑)。
歌詞は全体的に理想と現実のギャップを歌ったものが多いですね。さっきも話してくれた「ときめいてる心」もそうですが、揺らめく心情を素直に書き綴っているなと。
リアルですよね。日本語になると全然変わりますね。いろんな立場の人が読んでも当てはまりそうだし、自分の状況に当てはめてほしい。今は全てがハッピーなわけではないし…私も葛藤してます。本当にここからという気持ちですね、バンドも人生も(笑)。ワクワクしてます。
それがこのアルバム名にもつながってます?
そう! “天国に行っちゃおうぜ! どこまでも行っちゃおうぜ!”って。不安もあるけど、ドキドキする方向に行きたいから。
- 『heavenly』
- KOCA-89
- 2016.05.11
- 2700円
スペシャルサンクス:ガールズヴォーカルメロディックパンク&ギターロックバンド。絶対的な歌唱力と表現力の高さ、聴く人全てを釘付けにするMisakiの才能あふれる歌、そしてルックスも兼ね備えたピュアな魅力を軸に、メロディックパンクから王道ポップロックまで日々を進化を追求する本格的バンドサウンドは日本において唯一無二の存在。2019年7月にサポートメンバーのToshiki(Gu&Cho)、KOUSUKE(Ba&Cho)、YOSHIDA(Dr&Cho)が正式加入することが発表された。SpecialThanks オフィシャルHP