【amazarashi】百年後の未来のために
僕らは何を選択するのか?

悲観主義的な表現を提示することで闇の
正体を再認識したい

特に強く印象に残ったいくつかの曲について具体的に質問したいと思います。「タクシードライバー」は冷酷なニュース映像のような、あいまいな現代のドキュメントのような、アルバムを象徴する一曲だと思います。バンドサウンドというよりトラックミュージックのような、空間を活かしたサウンドも素晴らしいです。この曲はどんなテーマで作られたのですか?

去年の夏に東京でリハーサルをしてる時に歌詞がちょっとできて、それを広げて作りました。タクシーに乗ってる時に実際感じたところを歌にしました。都会と田舎の対比や、幸せと不安とか、そういうものがテーマの歌です。出来上がった時、これは絶対アルバムの1曲目だなと思ってました。

「多数決」にも現代の世情や政治状況を踏まえた、激情の高ぶりや嘆きや、さまざまな感情が渦巻いて聴こえます。これはどんなきっかけで作った曲ですか?

多様性に関して寛容さがないなと感じていて、生きづらさを感じることが多いです。ひとつの価値観だけがもてはやされて、その他の価値観がないがしろにされてる気がします。例えば、社会の中ではコミュニケーション能力至上主義みたいな空気があって、それはコミュニケーション下手だけど他に才能がある人間を排除することになるんですよ。そういうことを言いたかった歌です。

「分岐」はアルバムの中でも核になる曲だと思います。《後になれば分かる今が分岐点》というフレーズには本当に共感します。この曲に込めた思いは?

人生は選択の連続で、たくさんの選択の結果、今の自分があると思います。なので、分岐点で選択をするということは未来の自分を作るということでもあるんで、そういう重みを持って後悔しない選択をしたいな、という気持ちを込めた曲です。

「百年経ったら」は秋田さんの歌い方にハッとしました。これまでとは違ううねりのあるメロディー感で、“歌”に焦点を当てた丁寧な歌い方に聴こえます。この曲のテーマとともに、歌の表現についても教えてください。

SF的な世界観と、僕の普段の田舎の暮らしと対比して、人間としての大事なところって何だろうか?っていうのを歌いたかったです。歌に関しては、この曲が一番難しかったです。レコーディングでも苦労しました。いつもみたいにがなるタイプの曲でもないんで、大切に歌おうと意識しました。

「ライフイズビューティフル」はアルバムの中でもほぼ唯一、未来への希望をストレートに望む曲のように思います。地元の友人との会話がキーになっていますが、これはどんなふうに作った曲ですか?

昔の友人と呑みにいく機会があって、昔話をしてしみじみしてしまって、そういう気持ちで作った曲です。失敗や挫折があっても未だに頑張ってるのは、やっぱり人生を肯定したいからで、昔の暗い話も笑って話せるようになるのが、一番の報われ方じゃないかなと思います。

「エンディングテーマ」も良い意味で驚かされた曲でした。真正面から“死”をとらえた悲しいテーマですが、だからこそ皮肉やレトリックを一切排した、極めてストレートな感情表現が胸を打ちます。“ありがとう”とここまでシンプルに言い切った曲は今までなかったのではないでしょうか? この曲に込めた思いを知りたいです。

満たされたくて必死に頑張って、そういう渇望がある分、満たされない状況は幸せなのかもしれない、と思って作った曲です。一番満たされない状況である“死”を目前にした自分が、それでも幸せと言えるのか?という自分に対しての問いでもあります。

ラストチューン「収束」も「分岐」とともに特に大事な曲のように思います。歴史的にも非常にスケールの大きな描写と、先の見えない未来への冷徹な視線。この曲を最後に置いた理由は?

これまであった曲のような苦悩とか不安とか、希望も含め、そういうものを全部終わらせたかったというのが理由です。ある種のハッピーエンドだと思うんですけど、自暴自棄な気持ちもありました。

アルバム全体を通して、これまで以上に“死ぬ”“生きる”という言葉が示す深さ、広がり、大きさに圧倒されました。最初の質問とかぶるかもしれませんが、歌詞について、アルバム全体で表現したかったことを知りたいです。

一曲一曲は僕の普段の暮らしから生まれたもので、今までと変わらないものだと思います。ただ、アルバムとしてこういう報われない結果というか、悲観主義的な表現はやったことがなかったので、ここで提示して、僕らが今飲み込まれそうな闇の正体を再認識できたらな、という気持ちです。

“世界収束二一一六”というアルバムタイトルは制作のどの時期に考えたものですか? そして、そこに込めたものは?

タイトルは制作の最後の最後に考えました。今回の歌詞にも出てくる百年後っていうのは、僕らの次の世代の時代だと思うんですけど、直結はしてないけど間接的に僕らが関わってる時代とも言えます。僕らの選択の結果が大きく影響する未来という意味で、このタイトルにしました。これまで“千年幸福論”とか、歌詞の中で“千年”という言葉をよく使ってたんですけど、千年は僕の中で永遠と同じ意味でした。それよりももっと身近な未来、僕らの手の届く範囲での未来、そういう意味を込めました。

ツアーはすでに始まっていますが、手応えはいかがですか?今回特に意識していること、そしてツアーファイナルへ向けて磨きをかけたいことなど、今思っていることを教えてください。

新作発表前に新曲をやるツアーは初めてなので、緊張感はまだありますね。今現在、2公演を終えたところです。いつも通りテンションは切らさず、魂を込めて歌えたらと思ってます。

ツアー以降にも、活発な動きがありそうですか? ひと言いただければ。

今年もライヴはたくさんできたらなと思ってます。幕張メッセでのライヴも決まったし、そこに向けていろいろできたらと考えてます。でも、とりあえず今はツアーを成功させることに集中したいです。
『世界収束二一一六』2016年02月24日発売Sony Music Associated Records
    • 【初回生産限定盤A(DVD付)】
    • AICL 3068~9 3780円
    • ※オリジナル小説、詩集本 封入
    • 【初回生産限定盤B】
    • AICL 3071~2 3780円
    • ※5000枚限定 ※amazarashi フィギュア付
    • 【通常盤】
    • AICL 3070 3000円
amazarashi プロフィール

アマザラシ: 青森県在住の秋田ひろむを中心としたバンド。2010年のデビュー以来、一切本人のメディア露出がないながらも、絶望の中から希望を見出すズバ抜けて強烈な詩世界が口コミで広まり、瞬く間にリリースされたアルバム全てがロングセールスを続けている。ライヴではステージの前にスクリーンが貼られタイポグラフィーなどを使用した映像が投影されて行なわれるスタイルで独自の世界観を演出し、3DCGアニメーションを使ったMVは文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞するなど国内外で高く評価されている。amazarashi オフィシャルHP

OKMusic編集部

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