【J】10枚目に対する自分なりの答え
を詰め込んだ

約2年振りとなる、ソロ10作目のアルバム『eternal flames』。そのタイトルが示すかのように、そこには熱く燃え滾るバンドサウンドが詰まっている。そんな本作を作らせたJの現在のモードであり、本作に対する想いを探った。
取材:石田博嗣

火や炎がJさんのパブリック・イメージとしてありますが、ソロ10作目となる本作のジャケットでは、ついにシンボルであるベースが燃えているという。でも、そういうエネルギーやテンションの高ぶりを感じるアルバムでした。

ありがとうございます。自分自身はあまり意識しないようにしていたんですけど、いちベーシストがソロワークを始めて、ソロアルバムを10枚もリリースすることはなかなかないっていうのは周りからも言われていたし…まぁ、“意識していない”ってこと自体が意識していたのかもしれないですけど、10枚目という節目でもあるので、これまで鳴らし続けてきた自分自身の音をより強く出さなきゃっていう気持ちでレコーディングしてましたね。

それこそ1stアルバム『PYROMANIA』の頃からバンドサウンドを軸にしたガツンとした音を鳴らし続けてきているわけですが、その熱量は毎作高まっているし、10作目にしてさらに熱くなっているというのは、すごいことだと思いますよ。

逆に言うと、それが挑戦というか。自分が好きになったロックバンドを思い返してみると、自分たちのサウンドを武器にして、ずっとその音を鳴らし続けているんですよね。僕自身もいつかそうなりたいと思って楽器を始めたし、バンドを始めたし。そういう意味では、初期衝動をどれだけ自分の中で感じていられるかが勝負っていう部分があるんですよ。1stアルバムを作った時の想いが嘘じゃなければ、それはずっと続いていくと思うし。だから、やればやるほどやりたいことが増えていき、求めるものがどんどん大きくなっていって…そういう意味でも、自分自身がやってきたことは間違ってなかったって感じるんですよね。だからこそ、自分のフォームにはこだわりを持って、プライドを持って、向かっていきたいっていう気持ちでしたね。

そこで今作を作る時のモードだったり、テンション感はどんなものだったのでしょうか?

“自分自身の音をどれだけ鳴らせるか?”ってところで、自分の中のロック感というものをもっともっとネイキッドに出していいんじゃないかって思ったのは、前作の『FREEDOM No.9』、前々作の『ON FIRE』以上の変化かなって思いますね。それが節目に対する自分自身の挑戦というか。

その中でやはり、LUNA SEAの存在が切り離せないものとしてあると思うのですが。1stアルバム『PYROMANIA』はLUNA SEAを休止させてのソロ作品で、2ndアルバム『BLOOD MUZIK』以降はソロアーティストとしての作品で、8thアルバム『ON FIRE』と9thアルバム『FREEDOM No.9』はLUNA SEAの活動と並行してのアルバムだったわけですが、現在のLUNA SEAが途轍もなくバンド力を高めているだけに、それに対するソロということで、より熱量の高いアルバムを作らせたのかなと。

まさにそうですね。LUNA SEAというバンドも時間が経ち、25周年というアニバーサリーツアーをやっていく中で、もう戦っている場所が違う…昔は余計なものとも戦っていたと思うんです。いろいろ絡み付いてくるものだったり、自分たちの想いと違うものだったり。でも、25年が経ってバンドとして太くなったんでしょうね。今は“バンドとしてどうあるべきか?”ってことで5人はつながっているし、自分たちが求めるものをパーフェクトに作り上げていくことにしか答えを求めてない。その中でベーシストの自分がやり続けたソロワークというのは、その時の反動であったり、自分自身の解答でもあったりするんですよ。逆に、それって分かりやすかったりするんですよね。LUNA SEAというものに対しての俺っていうのが、分かりやすく映っていくから。考えてみたら贅沢なことですよね。そのどちらが欠けていることってないんですよ。どっちも100なんです。ミュージシャンとして、いちベーシストとしてできている環境があるというのは、とんでもなく贅沢なことだなって。

そういう意味では、LUNA SEAだけじゃなく、アコースティックユニットのDessert Flame Frequencyもあって、そこでも100が出せるので、よりソロに特化できますよね。

そうなんですよ。でも、ソロワークというものが、それらの反動なのか、反射なのか、解答なのかは、自分の中で整理しないでいようと思ってるんです。それをやり始めると何かを隔てることになってしまうんで。だから、その中でJっていう奴が10枚目のアルバムで鳴らすべきものをたぐり寄せていった気がしますね。

あと、本作の背景として、ギタリストにmasasucksさん(the HIATUS、FULLSCRATCH)が復活したのも大きいのかなと。レコーディングには参加していましたが、またバンドメンバーとして一緒にやるとなると、新しいバンドがスタートしたようなモードだったのかなと思うのですが。

彼がバンドに戻ってきて、より今の自分が求めている世界観が明確になった部分があると思います。前任の藤田高志さんにしても、もうひとりのギタリストのゴッチン(溝口和紀)にしても、“こういうことがやりたいんだよね”ってリクエストしたものに対して100パーセント以上のものを返してくれるので、今回のレコーディングでも“こういう世界なんだ”ってデモテープを投げると、その世界をより強く、よりカラフルなものにしてくれた…まぁ、masaとゴッチンは彼ら自身が世代も近いので、より滲まずっていうか、ストレートに作り上げていってくれましたね。

そんな本作のサウンドはもちろんバンドサウンドなのですが、よりストイックになっているというか、音数が少なくても一音一音が強いから、その余韻で音の隙間が埋められていて、他の音を必要としていないですよね。

今回のアルバムで僕がやろうとしていたのは、まさにそういうところだったんです。隙間を大事にしていかないと、プレイヤーの息吹みたいなものが感じられないし、伝わらないんじゃないかっていうことを、今回のレコーディングを通して確かめていたというか。なので、言われた通り、ストイックに音数を減らしていって…音数を減らすのって結構大変だったりするんですよ。だから、何度も何度も確かめては進みっていう作業をやってましたね。

バンドの音以外のものも必要としていないですしね。

近年のモードなんですけど、よりカッコ良いバンドサウンドを作りたいなっていうのが自分の中にあるんですよ。バンドってバンド的なことしかできないんですけど、だからカッコ良いっていうか。それでもちゃんと届くんだよって。もちろんキーボードの音や打ち込みベースの音は出ないんだけど、それに勝る世界が見せられるっていうのを、まだまだ追いかけられるんじゃないかなって思っていたりしますね。もちろん、打ち込みが入っていたり、キーボードが入っているサウンドも好きなんですけど、自分がやっているのはロックバンドであって、4人編成のバンドだから、そこはストロングスタイルで、その場所で戦っていきたいなって。そういう意味では、10枚目に対する自分なりの答えを詰め込んだつもりです。

そのせいか、これは今作のひとつの特徴だと思うのですが、ミディアムやメロウな楽曲であっても、アッパーなものに負けない熱量を持ってますよね。

そうなんですよ! 今回のミディアムテンポの曲はライヴ映えするものが多いと思います。ミディアムであっても、聴いている人を熱くさせるっていうことをすごく意識していたというか…単純に歌モノを作るっていうよりかは、ロックバンドがプレイするロックチューンを作るってことをベースに考えてましたね。

今作はミディアムやメロウの曲が多いのにもかかわず、高い熱量を感じたのは、そういう意識で作られていたからでしょうね。

そこを言っていただけるのが、すごく嬉しいです。実はその部分が今回の挑戦だったりもするので。作り手としては派手にも聴かせたいし、強くも聴かせたいから、アッパーなものだったりハードなものを並べたりするんだけど、そこの壁を壊していかないと、毎回同じようなもの、いつも同じ世界になってしまうなって。極論ですけど、1曲もハードなものがないのに、ものすごくハードなアルバムが作れたとしたら、そのアルバムはマスターピースになると思うんです。10枚目だから、そういった部分での勝負もやっていかないといけないと思っていたんですよ。

あと、これまでの楽曲にも多くあった“火”“炎”“光”“進む”というワードなのですが、今作は多用してるせいもあってか、より説得力を感じました。

ありがとうございます。自分の言いたいことって言い尽くしている部分があると思うんですよ。じゃないと嘘になるというか…それこそ1stアルバムの時にもう言い尽くしていたのかもしれないし。だから、いつもだったら言葉が重複しないように他の言葉を使ったりするんですけど、今回はそこから逃げなくていいやって思ったんですよね。逃げることをやめようっていうか。例え重複したとしても自分が伝えたいことだったり、想いというのを伝えることがベストだと思って、歌詞も書いていました。

まさにJさんの“魂を燃やして、光へと突き進む”姿が明確に表れたアルバムになりましたね。

作っていく前には見えなかったものがいろいろ見えてきたし、自分自身の中で不確かだったものが確かなものに変わっていく経験も、このレコーディングを通して得れたし、なんか不思議な感覚でしたね。今回のアルバム作りは。10枚目に行き着くまでのドラマみたいなもの、時間の蓄積みたいなものがあったからこそ、ここに辿り着けたと思うし、すごい武器を手に入れられたし、これからも突き進んで行けるなって感じています。

そんなアルバムをリリースした3日後にツアーがスタートするという。

今作は制作している段階からツアーを見据えていて…まぁ、聴けば一発で分かってもらえると思いますけど、ライヴで熱くなる曲ばかりだし、ライヴによって完成するようなアルバムになっているので、これを持って全国ツアーに出れることはすごく嬉しいですね。

ライヴを焚き付けるナンバーばかりですからね。

そうですね。自分の世界を広げてくれて、みんなと熱くなれる曲ばかりなので、今回のツアーはすごいことになると思います。
『eternal flames』2015年09月02日発売ONECIRCLE/avex
    • 【スペシャルBOXセット】
    • CTZD-20034/B 10800円
    • ※初回生産限定盤 ※DVD+『eternal flames』バンドスコア+最新撮り下ろし写真集
    • 【CD+DVD】
    • CTCD-20035/B 4104円
    • 【CD】
    • CTCD-20036 3240円
J プロフィール

ジェイ:1992年にLUNA SEAのベーシストとしてメジャーテビュー。97年、LUNA SEA の活動休止を機にソロ活動を開始。翌年LUNA SEA を再開するが、00年12月の東京ドーム公演にて終幕し、本格的にソロ活動をスタートする。03年にはアリーナ・オールスタンディングによる、ソロ活動初の武道館公演を実施。その後もとどまることなく自身の音楽を追求し続け、17年3月にはソロデビュー20周年を記念したベストアルバム『J 20th Anniversary BEST ALBUM <1997-2017> [W.U.M.F.]』を発表。現在は10年に再始動したLUNA SEAとソロの両輪で活動中。J オフィシャルHP

LUNA SEA プロフィール

ルナシー:1989年、町田プレイハウスを拠点にライヴ活動を開始(当時の表記は“LUNACY”)。90年にバンドの表記を“LUNA SEA”に変更し、翌91年に1stアルバム『LUNA SEA』をリリース。そして、92年にアルバム『IMAGE』でメジャーデビューを果たす。00年12月26日&27日の東京ドーム公演を最後に終幕を迎えるが、07年12月24日の満月のクリスマスイヴに東京ドームにて一夜限りの復活公演を経て、10年に“REBOOT(再起動)”を宣言。13年12月には13年5カ月振りとなる8枚目のオリジナルアルバム『A WILL』を発表する。その後、バンド結成25周年を迎え、自身初の主宰フェスとなる『LUNATIC FEST.』も開催し、17年12月にはオリジナルアルバム『LUV』を、19年12月にはグラミー賞5度受賞のスティーヴ・リリーホワイトとの共同プロデュースによる10枚目のオリジナルアルバム『CROSS』をリリース。LUNA SEA オフィシャルHP

OKMusic編集部

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