【Superfly】L.A.録音の成果もありの
開放的な5作目

Superflyが約3年振りとなる5枚目のオリジナルアルバム『WHITE』を発表。BONNIE PINKや元・椿屋四重奏の中田裕二、元・JETのクリス・セスターらが楽曲制作に参加し、多彩にしてフレッシュな仕上がりとなった。
取材:内本順一

今作はいろいろなアーティストの方が楽曲制作をされていて、志帆さんが作詞も作曲もしていない楽曲が半数近く収録されています。つまり、今回、志帆さんはシンガーとしての表現に徹したかったということですよね。

そうですね。ある意味では受け身になろうと思ってましたから。私が自分で発信するというよりは、周りから“こういうの、やってみたら?”と言われたものを、とりあえず受け入れてやってみる。それを歌声で表現する。…そういう立場に徹したかったんです。だから、極端に言うなら私らしい歌詞じゃなくても良かったんですよ。そういう歌詞であっても、今の私が歌えば絶対に自分が出るだろうと思ったし、流されてやってるようには見えないだろうという自信もあったので。

それはいつにも増して開放的で伸びやかな歌から伝わってきますよ。こういう歌い方もああいう歌い方もいろいろ試したいという気持ちを強く持っていたんだろうな、と。

そうですね。それはやっぱり歌うことが楽しくなってきてたからだと思います。去年、フェスとかで歌いながら、“こんな声も出ちゃうんだ、私!?”みたいな発見があったので。今の自分ならいろんな歌い方ができるぞ、って思って。

まさしく、“こんな歌い方もあんな歌い方もできるぞ”という喜びがたくさん詰まったアルバムだと思います。

やったー!(笑)

去年話した時に、“今は力を抜くことが自分のテーマ”って言ってたでしょ? 今回は力の入れ方と抜き方のバランスが絶妙なんですよ。パワフルに歌ってもいるけど、中には遊び心を持って歌っている曲もある。そこがいいなと。

あぁ、良かったー。私、気を抜くとすぐ力が入っちゃうタイプなんですよ。

気を抜くと力が入るって、珍しいですね(笑)。

あははは。確かに。“あ、しまった! 気合い入っちゃった”みたいな(笑)。でも、今回はいい意味で力を抜くこともできたみたいで、良かったです。

今回はL.A.でもレコーディングをしたそうですが。

はい。海外でのレコーディングは3rdシングルの「i spy i spy」以来。「A・HA・HA」と「脱獄の季節」の2曲を録音しました。まず、クリス(オーストラリアのロックバンドJETの元メンバー、クリス・セスター)から相変わらず彼らしい個性的な曲をもらって、日本に来てもらって録るか、任せてもらうか、いくつか選択肢があったんですけど、せっかくだから向こうの空気を感じながら録ったらいい経験にもなるんじゃないかって、L.A.に行くことにして。日本できちんとまとまったものにするよりも、向こうでクリスと一緒にやったほうが面白くなるんじゃないかってことで。だから、あえてノープランで何も準備しないまま行ったんですよ。

「i spy i spy」での経験上、クリスのことだから作りながらどんどん変わるに違いないって思ったんでしょ?

そうそう(笑)。案の定、デモの段階からだいぶ変わりましたね。でも、そうやって思い付きで激変させてしまう時の妙な説得力とか、段取りがいいわけじゃないんだけど一生懸命な感じとか、なんか素敵なんですよ、彼。その場でフレーズを思い付いて、私の歌入れを止めてまで録音するとか、たまにちょっと腹立つんですけど(笑)、その情熱がいい結果を生むというか。無駄も多いけど、型にはまってないのが面白いんです。そういうL.A.でのレコーディングを通して、私は今までちっちゃな世界を見てたんだなって思いましたね。自分で“Superflyはこうあらねば!”って決め付けちゃってたところがあったことにも気付けた。だから、帰国してから何かスコーンと抜けて楽になりました。

L.A.の空気によって、より気持ちを開放させられた?

はい。そもそも私がやりたかったことって、こういうふうに何も縛りのないものだったんだよなって分かったというか。クリスって私がちょっとしたことで悩んでいても、“それよりさー”ってすぐ自分の話をし出す人で(笑)、要するに細かいことを気にしているよりも、どんどん面白いことを考えていくタイプなんですね。だから、気が付くとポジティブさを注入された感じになるんです。それによって私も思い出したんですよ。そもそも音楽を始めた頃って、こうやって段取りとか関係なく、ただただ無我夢中でやってたよなって。

なるほど。いろんな意味で、L.A.に行ったのは良かったわけですね。

そうですね。健康的に過ごせたし。あと、クリスがあんまり時間を気にせず作る人なので、結構私とスタッフは待ってる時間が多くて。だから、みんなで久々にじっくり話をすることもできたし。

あぁ、確かにこのアルバムは、スタッフやいろんなクリエイターたちとのチームワークで作られたものなんだなってことが分かりますね。前作『Force』は志帆さんがひとりで抱え込んで作ったアルバムという印象でしたけど。

本当にそう。蔦谷(好位置)さんと一緒にご飯を食べに行った時にも言われましたね。“志帆ちゃん、そんなに自分ひとりで抱え込んで何でもやろうとしなくていいよ”って。それまでフロントマンは何でも自分でやるのが当たり前だと思って必死にやってきたんですけど、そう言われて“あ、いいんだ”って思って。それからもっと人に頼ろうと思ったんです。それはこのアルバムを作り始めた頃の話ですけど。

そういうこともあって徐々に開放的になり、こんなに遊び心のあるフレッシュなアルバムを作ることができた。新しいSuperflyがここから始まった感じがありますよね。

ありますね。面白いなって思います。今、なんだか面白いぞって(笑)。私、わりとネガティブになりがちな性格なんですけど、今はすごく肯定できる。“私たち最高!”って素直に思えますね。うん。サイコー!! あははは。
『WHITE』2015年05月27日発売WARNER MUSIC JAPAN
    • 【初回生産限定盤(2CD)】
    • WPCL-12089〜90 3888円
    • ※BOX仕様スペシャルパッケージ ※特典CD:邦楽カバーミニアルバム
    • 【通常盤】
    • WPCL-12091 3240円
Superfly プロフィール

スーパーフライ:越智志帆によるソロプロジェクト。2007年にシングル「ハロー・ハロー」でデビュー。08年に1stアルバム『Superfly』をリリースすると、2週連続1位を記録! 以降、オリジナルアルバム及びベストアルバム計6作品でオリコンアルバムランキング1位を獲得。09年にはニューヨーク郊外で行なわれた『ウッドストック』の40周年ライヴに日本人として唯一出演し、ジャニス・ジョップリンがかつて在籍したBig Brother & The Holding Companyと共演を果たす。シンガーソングライターとしてのオリジナリティーあふれる音楽性、圧倒的なヴォーカルとライヴパフォーマンスには定評があり、デビュー17年目を迎えてもなお進化を止めずに表現の幅を拡げ続けている。Superfly オフィシャルHP

OKMusic編集部

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