【amazarashi】世界を斜に構えて見て
いるけど、でも生きていくしかない

“amazarashi 史上最高に忙しい一年”と振り返る2014年を終え、2015年の幕開けを告げるニューシングル。アニメ『東京喰種トーキョーグール√A』ED曲となった「季節は次々死んでゆく」について、秋田ひろむ(Vo&Gu)がメールインタビューに応えてくれた。
取材:宮本英夫

“1stシングル”と聞いて少し驚きました。単純に機会がなかったのか、アルバムという形態にこだわりがあってシングルに興味がなかったのか、秋田さんのシングル観とは?

単純にシングルリリースの機会がなかったです。僕の世代の感覚としては、シングルを幾つか出して、それを収録したアルバムを出して、みたいなのが当たり前だったんですが、最近はそういうやり方もあまりないみたいだし。“リード曲”という観念も曖昧になりつつあって、amazarashiはそういう流れの中で、アルバムでどう自分の世界観を伝えるかをすごく考えてやってきたバンドだと思います。そういう意味では、今回のシングルの作り方は新鮮でした。シンプルで直接的な表現になったと思います。

アニメの原作『東京喰種』についてなのですが、作品の印象と、特に好きなポイントがあれば教えてください。

善悪の概念が敵味方同士それぞれあって、キャラクターがストーリーのためではなく、自分の意志に則って行動している感覚が素晴らしいと思いました。人間性や動機付けを描く際、幼少時代にまで及ぶのも、凄惨な漫画ながら、人間味があって誠実だなと思いました。

『東京喰種』はショッキングなダーク・ファンタジーのかたちを使って、いくつかの価値観の間で揺れる人間の弱さと強さを描いた作品のようにも思います。秋田さんはこのコミックの本質的なテーマをどんなふうに受け止めていますか?

奪い合うことでしか生きられない人間と、それを否定したい自分と、でもそこから逃れられない人の業、でしょうか。日常生活でよくあるジレンマとも通じるので、これだけ人を惹き込むのではないかと思います。

《季節は次々死んでいく》という歌い出しが、最後には《季節は次々生き返る》に変わるのですが、この鮮やかな転換は最初から考えていましたか? それとも、書きながらそうなっていったのでしょうか?

“季節は巡る”っていうことと、“時間は過ぎる”っていうことが主題だったので、死んで生き返るっていうイメージは始めから何となくありました。歌の構成としてはまったくの偶然でできたんですが、最後の最後でひっくり返す展開は自分でも良かったなと思います。

《何はなくとも生きて行くのだ》、この言葉が特に胸を打ちます。この言葉を書いた時の想いを教えてください。

この部分が僕の心情に一番近いと思います。どこか世界を斜に構えて見ているけど、でも生きていくしかないという結論に至ってしまう、そういう気持ちがこもってます。

前アルバム『夕日信仰ヒガシズム』の際にも、命は有限であるからこそ日常を大事にしたい、という言葉をいただきました。「季節は次々死んでいく」は、それをさらに明確にした曲だと思います。現在の秋田さんの心境がこの曲にあると受け取っていいでしょうか?

そうですね。現在ツアーを終えたところで、より明確になりました。いろんなことが終わってしまうのが寂しいから、悲しんだり、奮い立ったりするんだと思います。感傷的になるか、無理してでも進むかの二択でしかなくて、僕は進むほうを選びました。

迷いを振り切るように力強い歌が印象的でした。歌入れの時はどんな心境でしたか?

アップテンポな曲ですが、メロディーがきれいな曲でもあるので、あまり切ない感じになりすぎない様に意識して歌いました。衝動的な感覚のほうを優先しました。

カップリング「或る輝き」は音と言葉のコラージュのような、抽象絵画のようなイマジネーション豊かな楽曲だと思います。描きたかったのはどんなイメージですか?

これに関しては詩の意味はありません。文節ごとは僕の心情とか、どこかで見た風景とかそういうもののコラージュなんですが、それを積み上げることで意味がどんどんなくなっていく、ということをやってみたかったです。実験的なポエトリーリーディングです。もともとのアイデアはアレンジャーの出羽良彰くんで、こういうのはどう?というやり取りの中から生まれた曲です。

もう1曲のカップリング「自虐家のアリー」は、愛されていない少女の悲しい物語なのですが、秋田さんの目にアリーはどんな少女に映っていますか?

悲劇をちゃんと悲劇として書こうと思ってできた曲です。amazarashiの作風として、どこかに希望を込めたりとかやってきたんですが、悲劇的な終わり方でしか伝わらないこともあると思うので、こういう曲になりました。でも、最後をぼかしてあるのはアリーに対して申し訳なさがあるからだと思います。

初回限定盤のDVDには、プレミアムアコースティックライヴとニコニコライヴから6曲が収録されているのですが、観どころを教えてください。

デビューしてからたくさんのプロの方と仕事をしていく中で、自分の音楽家としての価値ってなんだろうってすごく考えました。僕ひとりの力なんて大したことないんですが、でもそれを磨いていかなければという想いがあって、弾き語りをやっています。その記録として観てもらえたら嬉しいです。

昨年の12月24日には渋谷公会堂でライヴが行なわれましたが、手応えはどうでしたか?

すごくいいライヴでした。ツアーファイナルということもあって自分の力以上のものが出せたと思います。ただ、今度はこういうライヴを自分の力でできるようになりたいと思いました。

2014年はどんな年でしたか? 特に印象に残った出来事など、いくつか教えてください。

amazarashi史上最高に忙しい一年でした。レコーディングとライヴが重なったり、ライヴも普段の形態とアコースティック形態のものが同時進行で頭が混乱したり。下半期はほとんどホテル暮らしみたいになったりして、そういう環境の変化も音楽に還元できたから良かったかなと思います。

そして、2015年が始まりました。どんな活動をしていくか、どんな曲を作りたいか、リスナーの方へ向けて抱負をお願いします。

昨年蒔いた種でまだ芽が出てないものもあるので、引き続き頑張ります。いい曲があってこそ活動できると思うので、今年もいい曲をたくさん作りたいです。
「季節は次々死んでいく」2015年02月18日発売Sony Music Associated Records
    • 【期間生産限定盤】
    • 1404
    • ※アニメジャケット仕様 +TV edit収録予定 期間:2015年4月30日まで
    • 【初回生産限定盤(DVD付)】
    • AICL-2819 ~20 1944円
    • 【通常盤】
    • AICL-2821 1296円
amazarashi プロフィール

アマザラシ: 青森県在住の秋田ひろむを中心としたバンド。2010年のデビュー以来、一切本人のメディア露出がないながらも、絶望の中から希望を見出すズバ抜けて強烈な詩世界が口コミで広まり、瞬く間にリリースされたアルバム全てがロングセールスを続けている。ライヴではステージの前にスクリーンが貼られタイポグラフィーなどを使用した映像が投影されて行なわれるスタイルで独自の世界観を演出し、3DCGアニメーションを使ったMVは文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞するなど国内外で高く評価されている。amazarashi オフィシャルHP

OKMusic編集部

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