【城 南海】『ウタアシビ2016 Xmas』
2016年12月23日 at 日本橋三井ホール

取材:石田博嗣

 ニューアルバム『月下美人』の1曲目「晩秋」を最初に聴いた時、そのサウンドの幽玄さであり、《つぎの季節を生きぬくために》という歌詞を歌い上げる声のやさしさと力強さに心を持っていかれた。そして、この日のライヴも「晩秋」で幕を開けると…当然、胸に染みた。“カラオケの女王”と呼ばれるほど、彼女の高い歌唱力は周知の通りだ。しかし、上手いだけでは胸を打たない。そこに人となりが出てこそ、生きてきた人生分の喜怒哀楽が滲み出てこそ、歌は響くもの。それを改めて実感した。故郷の奄美を愛し、シマ唄を歌い続けている彼女のために、笹川美和がこの曲を書き下ろしたのも至極納得だ。その後も、三味線を弾きながらシマ唄で観客と歌い踊り、クリスマスソングのメドレーでは圧巻のヴォーカリゼーションで感動を誘うなど、アットホームでハートウォームな“ウタアシビ”が展開されていく。特筆すべきは、ゲストに25絃箏奏者の中井智弥を迎えた「月下美人」とシマ唄の標準語Ver.「祈りうた~トウトガナシ~」、そしてオーラスの「七草の詩」。MCで何度も“日本の美しい季節を感じてほしい”と言っていたが、グリッサンドで奏でられる琴の音色が季節の風を吹かせるように、たおやかな楽曲に和の彩りを加えていた。また、バースディケーキのサプライズも。3日後の12月26日に27歳の誕生日を迎えた城は、年齢をカラットに例えていたが、それを如実に感じたのは本編を締め括ったデビュー曲「アイツムギ」だ。前述したようにデビューの時から積み重ねてきた年齢分の輝きを、その歌声に感じた。それは温もりだったり、包容力だったり、厳しさだったり。そうやって日々、「アイツムギ」や「晩秋」は説得力と深みを増していくのだろう。

セットリスト

  1. 晩秋
  2. 彼岸華
  3. 風人~かぜびと~
  4. 月のしずく
  5. 安里屋ユンタ
  6. クリスマスメドレー
  7. きよしこの夜
  8. ~All I Want For Christmas Is You
  9. ~ロマンスの神様
  10. ~雪の華
  11. ~Happy Christmas(War Is Over)
  12. 夜の風
  13. アカツキ
  14. 月下美人
  15. 祈りうた~トウトガナシ~(標準語Ver.)
  16. いつか星になる
  17. アイツムギ
  18. <ENCORE>
  19. 君だけがいない冬
  20. 七草の詩
城 南海 プロフィール

キズキミナミ:平成元年 鹿児島県奄美大島生まれ。奄美民謡“シマ唄”をルーツに持つシンガー。2006年に鹿児島市内でシマ唄のパフォーマンス中にその歌唱力を見出され、09年1月にシングル「アイツムギ」でデビュー。代表曲は、NHKみんなのうた「あさなゆうな」、「夢待列車」をはじめ、NHKドラマ『八日目の蝉』の主題歌「童神~私の宝物~」、NHKBSプレミアム時代劇『薄桜記』の主題歌「Silence」、一青窈作詞、武部聡志作曲・プロデュースのシングル「兆し」など。また、テレビ東京『THE カラオケ★バトル』に2014年7月に初出演以来、毎回高得点をたたき出し、現在、番組初となる10冠を達成。オンエアの回数が重なるにつれ、カバーアルバムを望む声が多く集まり、15年に初となるカバーアルバム『サクラナガシ』『ミナミカゼ』、17年11月には3枚目のカバーアルバム『ユキマチヅキ』をリリース。20年にはディズニー実写映画『ムーラン』の日本版主題歌「リフレクション」の歌唱が決定し、日本版の訳詞も担当。ライヴでは毎年恒例のワンマン公演『ウタアシビ』の他、さまざまな音楽フェスティバル、イベントに出演している。城 南海 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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