【Superfly】Superflyの“現在・過去
・未来”が示された、 初のベストア
ルバムが完成!


文:内本順一

Superflyが初のベストアルバム『Superfly BEST』をリリースする。2枚組で29曲。この6年の間にリリースされた全シングル曲(配信限定曲含む)に加え、過去・現在・未来をテーマにした新曲3曲を含んだ決定版。デビューから6年の歴史の集大成とも言える内容だ。志帆自身はどんな気持ちでこのベストアルバムを世に送り出そうとしているのだろうか。
「ベストアルバムには抵抗がありました。ずっと新しい作品を届けたかったからです。でも今は、濃厚な6年間で作り上げてきた曲たちをもう一度届けたい、そんなふうに素直に思っています」
これはベストアルバムのリリースの発表と同時に届いた彼女の声明文の出だしの部分だが、なぜ彼女はこのように気持ちを変化させたのか。初めは抵抗があったベストアルバムのリリースに、どうして前向きになり、自ら“届けたい”と思うようになったのか。それを探るにはまず3月から4月にかけて9公演行なわれた2度目のアリーナツアー『Superfly 5th AnniversarySuper Live GIVE ME TEN ! ! ! ! ! 』を振り返ってみる必要があるだろう。昨年10月から今年1月にかけて35公演行なわれたホールツアー『Live Force』とはテーマもセットリストも趣向も大きく変え、過去の代表曲や隠れた名曲を網羅しながら現在のSuperflyの全てを見せ切った同アリーナツアー。志帆がそこで表わしたかったのは、これまで自分を支えてくれた大勢のファンへの感謝の気持ちだった。5周年という区切りの時だからそれを示したかった…というだけではない。その前のホールツアーの途中、志帆の体調不良でやむなく公演が延期されたことがあったが、その際に誰も彼女を責めたりせず、払い戻しもほとんどないままみんなが温かく復帰を待っていてくれたことに対しての気持ちも大きかった。だから、彼女は「みんなに感謝の気持ちを伝えるには、どんなセットリストを組んで、どんな観せ方をすればいいのかをまず考えた」と言っている。また、ライヴの中でも話していたことだが、「この5年の間に、みんなもいいことだけじゃなくて辛いこととかもいろいろあっただろうし、そういうことに折り合いを付けて頑張ってきたところがあったと思う。今日だけはそういう時間と自分を褒めてあげてほしい」という思いがあり、ゆえに観客ひとりひとりがそれを実感できるライヴの流れを作ろうと考えたのだそうだ。実際、過去のどのツアーよりも大きな反響があり、“過去最高”との声も多く聴こえてきた。とりわけ“昔のあの曲が聴けて嬉しかった”“改めてあの曲に感動した”といった声が、その時の彼女にはやけに嬉しく感じられたそうだ。
「あのライヴの流れによって自分がみんなに言いたかったことをストレートに伝えられた。そういう実感が持てたんです。しかも、それを過去の楽曲と『Force』(4thアルバム)の楽曲を織り交ぜたかたちで伝えられたことが大きかった」
つまり、彼女は過去と現在のSuperflyをひとつにして表わし、それによって未来をも照らし出す表現の仕方をしたのだ。そのような表現の中で、彼女は改めてこうも実感した。
「自分の力だけではなく、お客さんの存在によって、こんなふうに曲が育っていくんだなって。それはすごいことだと思ったし、それに気付かせてくれたことに対してもまた“ありがとう”と言いたくなって…」
この気持ちがベストアルバムにつながった。志帆は自ら、「ベストアルバムを出したい」とスタッフに伝えた。彼女から届いた声明文は次のように締められている。つまりこれが偽らざる気持ちだ。
「今は胸を張って、このベストアルバムを届けたいと思います。カラフルな楽曲たちを楽しんでください。全ての人たちに愛と感謝をこめて」
述べてきたように、このベストアルバムの発表の“動機”をひと言で書くなら、それは“愛と感謝”になる。そして“テーマ”はと言えば、ずばり“現在・過去・未来”。志帆は「現在から見た過去、現在から見た未来を結びつけて見せられる作品にしたいと思った」と語る。それを分かりやすく見せるためには、過去と現在と未来を象徴する曲が新たに必要だと考えた彼女。急遽制作作業に入り、完成してここに加えられることになったのが新曲3曲だ。まずDisc1のオープニングを飾るのが“現在”を表現した華やかな「Bi-Li-Li Emotion」。Disc1の締めが“過去”を表現した「Always」。静かなこの曲がDisc2への懸け橋となり、そのDisc2の最後に収められたのが“未来”を表現した「StartingOver」。そのような配置も絶妙で、2枚29曲の並びを通して大きな物語性も感じ取ることができる。
ここで新曲について簡単に触れておこう。「Bi-Li-LiEmotion」はホーンセクションも加えた賑々しいサウンドで展開していく歌謡風味のロック。大衆的なメロディーと“ビ・ビ・ビリ”という言葉の響きのキャッチーさが効いていて、耳にこびりつく上、繰り返し聴きたくもなる。「エンターテインメント性の強い曲だから『Force』の時だったらどう歌えばいいか悩んだと思うけど、アリーナツアーをやり終えたあとだったので、こういう曲も楽しんで思い切り歌えましたね」と志帆。「稲妻みたいにビリビリくる感情を表現したかったので、とにかく高いテンションのまま歌入れに臨んだ」そうだ。
バラードの「Always」は、故郷・愛媛の愛着のある風景を思い出しながら書いたもの。「田舎の大好きな景色の中でも、特に“ずっと変わらずにあり続けてほしい”と思うのが、れんげ畑で。幼い頃から私はそのれんげ畑に見守られていた。それはいつでもあの頃の自分に戻れる場所であり、家族にずっと元気でいてもらいたいと思うのと同じような気持ちをその景色に抱いているんです」。時代や環境の変化に自分は流されてはいないだろうか。ときどきあの景色を思い出し、そのことを確かめながら歩いていきたいという気持ちも込めたこの歌を、志帆は“語りかけるように”歌おうと意識したと言う。誰に?“ いつの日も見守って”いてくれるその景色と、あの頃の自分に。
そして、3曲目「Starting Over」は、アリーナツアーを終え、その時の心境をそのまま綴ったミッドバラードだ。《そっと歌い続けるよ。さぁStarting over》。そんな歌詞と希望に満ちたメロディーがSuperflyの未来を照らし、同時に世界への願いや祈りもそこから伝わってくる。素直な気持ちで綴られ歌われたこの曲は、聴く人みんなの心を晴れやかにするだろう。
「去年からファンクラブツアー、ホールツアー、アリーナツアーと続けてきたわけですが、全てやりきったあとに、ヘトヘトになってもうしばらく歌いたくないって思うのではなく、表現って楽しいな、この先も続けていきたいな、続けていってもいいんだなって思えたんです。もう一度ちゃんと自分の夢を見つめて追いかけてみようと自然に思えた。すごく明るい気持ちで書いた曲ですね」
この新曲3曲が本作の大きな魅力となるのは間違いないが、既発曲でも9thシングル「Dancing On The Fire」や、歌詞が付いた13thシングル「あぁ」、トータス松本とのデュエットシングル「STARS」…などオリジナルアルバムには未収録だった曲が収められているのも嬉しいところ。こうした楽曲が全て網羅されていることで、サウンド、歌詞、そして何より彼女のヴォーカル表現の変化と進化がはっきり感じとれる構成になっている。
さて、次に彼女は何をどんなかたちで示すのか。そのあたりも大いに期待しながら、今はSuperflyの“現在・過去・未来”が示されたこの『Superfly BEST』を存分に楽しみたい。
『Superfly BEST』2013年09月25日発売WARNER MUSIC JAPAN
    • 初回生産限定盤(DVD付)
    • WPZL-30712~4 3980円
    • *三方背BOX仕様
    • 通常盤
    • WPCL-11605~6 3400円
    • *永久デジパック仕様
Superfly プロフィール

スーパーフライ:越智志帆によるソロプロジェクト。2007年にシングル「ハロー・ハロー」でデビュー。08年に1stアルバム『Superfly』をリリースすると、2週連続1位を記録! 以降、オリジナルアルバム及びベストアルバム計6作品でオリコンアルバムランキング1位を獲得。09年にはニューヨーク郊外で行なわれた『ウッドストック』の40周年ライヴに日本人として唯一出演し、ジャニス・ジョップリンがかつて在籍したBig Brother & The Holding Companyと共演を果たす。シンガーソングライターとしてのオリジナリティーあふれる音楽性、圧倒的なヴォーカルとライヴパフォーマンスには定評があり、デビュー17年目を迎えてもなお進化を止めずに表現の幅を拡げ続けている。Superfly オフィシャルHP

OKMusic編集部

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