【アンモフライト】“あらゆる人の日
常に染まる”進化したピュアサウンド
メジャーデビューから早1年、待望のメジャー1stフルアルバム『FLASH4』がいよいよ完成! 豪華ゲストを迎え、葛藤と成長の末に生まれたポップサウンドの正体を探るべく、メンバー4人の胸中を訊いた。
取材:町田ノイズ
まずは“完成おめでとうございます!”ということで、今の率直なお気持ちを聞かせてください。
津久井
シングルの時は“自分たちの歴史が始まっていくなぁ”っていう思いが強かったんですけど、今回は本当にいろんなタイプ楽曲が集まって、自分たちの新しい一面を見てもらえる一枚になったと思います。“もっと見て!”という感じ(笑)。
収録曲にはタイアップソングも多く含まれていますが、周囲の反応はどうですか?
葛西
“CMの曲聴いたよ!”って言ってくれる人がいると、単純に嬉しいですね。
久保田
ラーメン屋に行った時、たまたま有線で自分たちの曲が流れてたんですけど、最初気付かなかったんですよ(笑)。でも、“自然に溶け込んでる”っていう意味では嬉しかったですね。
例えば、『はなまるマーケット』EDテーマの「cheese:-)」や、CMに起用された「7の魔法」は、普段音楽を聴かないような人も耳にすることになるわけですが、制作の段階でそういった点は意識しましたか?
津久井
“自然にみんなの耳に入っていくものを作りたい”っていう思いがやっぱり基本にあるし、メジャーで活動するにあたって、自分たちだけの音楽じゃなくて、いろんな人たちのことを考えて作らなきゃいけないという実感もありました。関わってくれる人の分も背負わなきゃいけないなって。
今回はシライシ紗トリさんさんの他にも、レミオロメンの前田啓介さんがプロデュースで、Akira Sunsetさんがゲストで参加していますね。
葛西
得るものが多かったですね。インディーズ時代は絶対出てこなかっただろうなってパターンが生まれたり、今までの自分にできなかったことが自然にできるようになったり。
合宿?
久保田
完全にふたりきりで、ああじゃないこうじゃないって2泊3日話し合いました。シライシさんとはまた違ったやり方なので、すごく新鮮でしたね。
鳥居塚
僕は歌モノのバンドをやるきっかけが前田さんのプレイだったので、今回プロデュースをやっていただけるというのは本当に嬉しかったですね。だけど、プレイヤーとプロデューサーとしての立場はわきまえようと思ったので、“ファンです!”とは言えませんでした。
言えば良いじゃないですか(笑)。
鳥居塚
レコーディングが終わってからでいいかなって。でも、結局、言うタイミングなくて…。
それはもうぜひ、アルバムを持ってお礼と一緒に告げてください(笑)。前田さんは今回ボーナストラックの「sewing amoment」で共同アレンジされていますが、シライシさんはデビュー直後から作詞などで関わっていらっしゃるんですよね。
葛西
シライシさんは「夏色ドット」で歌詞を書いてもらったんですけど、津久井くん以外の方が作詞するということに、最初はやっぱり不安もありましたね。でも、津久井くんが歌うことでちゃんとアンモフライトの曲になるんだなって確認できたというか。だから、Akira Sunsetさんが参加した「cheese:-)」も違和感なく受け入れられましたね。
津久井さんとしても、ヴォーカリストとして、バンドのフロントマンとして、キャパシティーを広げなきゃいけない場面に立たされたわけですね。
津久井
そうですね。だから、最初は正直言って“嫌だ”という気持ちもありました(笑)。でも、歌う人として、表現する人として、成長していく方向にだんだんシフトして、求められることをちゃんと演じ切れることがカッコ良いなって、頭が切り替わりました。それからは、いろんな音楽に足を踏み入れることができるんだなと思えるようにもなりましたね。
結果として、バンドのステップアップにもつながったと。
津久井
作詞にしても、例えば4曲目の「スーパーステップ」はアニメ(「ファイ・ブレイン ~神のパズル」第2シリーズ)のEDテーマなんですけど、歌詞の内容自体は普遍的なものでも、もっと作品に感情移入できるように、切り取り方が違うかたちになりました。
逆に6曲目の「HAPPY☆CAMPER」は、目の前の情景をそのまま切り取ったような歌詞ですよね。“向かいに座る老夫婦”“小田急の改札”“小田原”など、具体的なワードが出てきますし。
津久井
それは本当に目撃した光景ですね。タイトル通り、ウキウキした感じの…恋が終わる寸前の(笑)、一番楽しい時間。
終わる寸前ですか!(笑)
津久井
僕あんまり明るい青春送ってないんですよ。大学時代本ばかり読んでて。
11曲目の「カメレオンダンス」の歌詞中に《アインシュタインもヘッセも賢治も》って出てきますしね。この曲は社会と自我の摩擦を描いていますけど、ちゃんと踊れるポップソングとして着地しているところが素晴らしいと思います。
津久井
あらゆる意味で複雑な曲ですね。コードも歌謡曲テイストだし。
この歌詞はインディーズからメジャーに移行したみなさんの心情も滲み出ているのではないのかなと、深読みしてしまうのですが。
津久井
知らず知らずのうちに表れているかもしれないですね。“君はそれでいいの?”って自分に問いかけたところから始まって、改めて自分と向き合いたいなと思って書いた曲です。
ひとつ前の「Moonlight St.」とは打って変わってショッキングな印象を受けます。そんな「Moonlight St.」はストレートなメッセージソングですね。
津久井
それ、最初は“リトルカブ”ってタイトルになる予定だったんですよ。
そう言えば、歌詞にも《夜を駈ける リトルカブ》が登場しますね。
津久井
それで“リトルカブ(仮)”って書いていたんですけど、大人の事情でNGになってしまって(笑)。でも、自分ではJ-POPの歌詞の世界観が表現できたと思っていて、すごく気に入ってます。
さまざまなジャンルの曲が詰まっていて、耳に楽しいアルバムですね。同時にアンモフライトというバンドの存在が明確に伝わってきます。それでは最後に、作品への思いを語ってください。
鳥居塚
いろんな人に聴いてほしいですね。前田さんに自分のプレイを引き出してもらったし、ロックもポップスもバラードも入っていて、バンドとしての可能性が広がったアルバムだと思います。
葛西
プレイヤーとして攻めの姿勢で作ったので、ライヴで新曲をやるのが楽しみです。
久保田
もし自分がこのバンドのメンバーじゃなかったら相当悔しいだろうなって、客観的に思える自信作になりました。
津久井
アルバムタイトルの“FLASH4”は“もっと自分たちに注目してほしい”という意味で付けたので、いろんな人たちに聴いてもらえるようにフックを作っています。どんな人でも必ずどれかの曲が引っかかってくれると思うので、とにかくたくさんの人に届いてほしいです。
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『FLASH4』2013年07月03日発売Colorful Records/ビクターエンタテインメント
- 初回限定盤(DVD付)
- VIZL-543 3300円
アンモフライト:2008年3月結成。小田原出身の4人組バンド。キャッチーなポップサウンドと、日常に埋もれがちな幸せや普遍的な思いを描いた歌詞の世界観は、“J-ピュアロック”と称される。2012年3月にシングル「桜グラフィティ」でメジャーデビューを果たした。オフィシャルHP