覆面シンガーとして数々の名曲のカバーを配信し、話題となったGILLE。メジャーデビューアルバム『I AM GILLE.』では素顔を公開し、1stシングル「GIRLS/Winter Dream」ではオリジナル曲を披露し、その実力を証明した。そんな彼女の新曲は、背中を優しく押すメッセージソングだ。
取材:吉田可奈
デビューして半年が経ちますが、実感はありますか?
それがまったくないんですよ(笑)。テレビに自分が映っていても、天気予報などに外野で写り込んでいる人たちの心境と同じで、“これ、私!?”という感覚なんです(笑)。だからこそ、ライヴでたくさんの人が来てくれたり、憧れのアーティストさんたちと共演できていること自体、今でも夢のようなんですよね。
でも、現実です(笑)。
そう! その現実に気付いた瞬間に、一気に自分の実力のなさに気付いて、すごく焦るし、凹むんです。自分がここにいていいんだろうか、なんで私はもっと思うように歌えないんだろうって毎日思うんですよ。
デビューを掴んだからって調子に乗ることをせず、そうやって葛藤し続けるからこそ、GILLEさんの歌を聴いている人は共感を持つんでしょうね。
そうだと嬉しいですね。私自身、デビューする半年前までは田舎の宮崎で歌っていたインディーズアーティストだったので、聴いてくれた人にも“頑張れば田舎でも全国、世界に発信できるんだ、それなら私も頑張ろう”って思ってもらえるのが一番嬉しいんです。
「Try Again」はまさに、その心境を歌っていますね。
どんな人にも、大なり小なり夢ってあると思うんです。でも、中には叶わないと思い込んで動かない人もたくさんいて…。私も最近になって、やっとの思いでデビューを掴んで、さらなる葛藤と向き合うようになって、どんな年齢であっても夢に気付いた時から努力すれば、絶対に未来につながるんじゃないかなって思えるようになったんです。その心境を歌詞にそのまま、等身大の言葉で歌いました。
GILLEさんがYouTubeに自分が歌った動画を投稿したのは25歳の頃。これって普通に考えると、夢を目指す年齢的には“遅い”ととらえる人が多いですよね。
そうなんですよね。私自身、20歳までは日本舞踊の師範を目指していて、一生懸命頑張っていたんですが、名取りができる20歳の時に、歌への興味のほうが大きくなってサマースクールを受けに海外に行ったんです。その時点で、私が住んでいる田舎では、もう何をするにも“遅い”と言われる年齢だったんです。
確かに、女性なら結婚して子供を生んで…と言われがちですよね。
私の周りにも同級生でお母さんになっている子も当たり前にいたし、家族で集まればお母さんが私の未来を心配して泣いたりしていて…。親友も私を思うがあまり、もう夢は諦めなよって真剣に怒られることが続いたんです。
それでも、諦めなかった。
はい。そこでYouTubeに投稿することにしたんです。英語で歌えば、世界中の人から評価してもらえるし、自分の実力を試せると思ったんですよね。無事、こうやって結果につながったから過去のことは笑えるけど、過去の私の状態にいる人はたくさんいると思うんです。そんな人たちにこの歌が届いてくれたら嬉しいですね。
歌詞は応援歌ですが、熱いのに、どこか等身大で、押し付けないところが印象的でした。
私が10代の頃は、ただ“頑張れ!”と熱く背中を押してくれるような曲が勇気になったし、元気になったんです。でも、20代も半ばに差し掛かって夢を目指し続けていると、頑張ればかりだと疲れちゃうなと思ったんですよね。だから、一緒の目線で手を取り合うような曲にしたかったんです。まるで友達に言ってもらっているような、そんな感覚で歌いたかったんですよね。
メロディーは今までのGILLEさんのイメージとはまた異なる、メロウでナチュラルなものですね。
メロディーはすごく悩みました。今までのカバー曲のイメージだったり、1stシングルも力強い歌声でトラックもクールなもので、それがGILLEとして定着している気がして…でも、そこに私自身、違和感を感じていたんですよね。泣きたい時も、笑いたい時も、癒されたい時も、どんな時もカバーできるような曲をそれぞれ歌っていきたいと思ったんです。
そう考えると、この新曲は挑戦になるんですね。
挑戦することが、独りよがりになってしまうかもと怖かったんですが、しっかりとメッセージに個性を残し、これもGILLEの歌なんだというのを感じてもらいたいです。
今後は極上バラードなども聴けるかもしれないですね。
これからどのように成長をしていきたいですか?
今までのカバー曲でのイメージをいい意味で裏切るような曲をたくさん作って、歌って、オリジナルもいいって言ってもらえるようなアーティストになりたいです。それと、私の最終的な目標は世界。機会があれば、しっかりと世界で勝負したいと思っているんです。
そのために、毎回“English Ver”も収録しているんですね。
そうですね。YouTubeで動画をアップしていた頃から、世界とつながることができるように英語で歌い続けていたんです。その気持ちは今でもまったく変わらないので、これからも英語で歌うことは続けていきたいですね。
基本的にすごく貪欲なんですね。
う~ん…。これ!と決めたら前しか見ないし、後悔してもしかたないからとにかく突き進むんです。その結果、できなくて焦って“何でできないの!”って自分に苛立つことばかりですが、その焦りが全て未来につながると信じて、ポジティブに過ごしている姿が、貪欲に映るのかもしれないですね。ただ、単純なだけなんですけどね(笑)。
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Try Again2013年01月30日発売UNIVERSAL J