【新居昭乃】聴いた時にビジョンが見
えるように 言葉の響きを重視して作
った曲です

2012年4月にリリースした3年振りのアルバム『Red Planet』と『Blue Planet』に続く新作は、テレビアニメ『まおゆう魔王勇者』のエンディングテーマ「Unknown Vision」。広がりのあるサウンドと心に刺さる歌詞で、新居昭乃にしか作れない世界観を作り上げている。
取材:田中隆信

アルバム『Red Planet』『Blue Planet』以来、9カ月振りの新作となるシングル「Unknown Vision」ですが、これはどんなきっかけで作られた曲なんですか?

『まおゆう魔王勇者』というテレビアニメのテーマ曲に、と依頼を受けて作りました。

では、曲作りもアニメのストーリーなどを意識しながら作られたということですね。

はい。物語の雰囲気やスケール感みたいなものを知るために、原作のコミックを読ませてもらいました。人間界と魔界を行き来している人がいたりして、すごく壮大な感じもあるんですけども、経済とかわりと現実的なことも含まれていたりして面白いお話だなって思いました。

そのイメージをもとに?

そうなんです。でも、アニメのテーマ曲という依頼はあったんですが、曲が完成してからオープニング曲にするか、エンディング曲にするかを決めますと言われて、結果的にエンディング曲になりました。

静かで広がりのある曲調がエンディングに向いていると、アニメのスタッフの方が判断されたんでしょうね。

そうだと思います。この曲はちょっと暗めなので、実はもう1曲、明るめの曲も作ってお渡ししたんですけど、ディレクターの方をはじめ、アニメを作ってらっしゃるスタッフさんたち全員がこっちがいいと言ってくださったそうです。

独特の雰囲気の曲ですから、印象的だったんだと思いますよ。

そう思ってもらえたら嬉しいですね。

“Unknown Vision”という言葉がタイトルにもなっていますが、やはりこの言葉がキーワードになっているのでしょうか?

はい。原作を読んだら、主人公が“あの丘の向こうに連れていってくれないか”という場面があって、“まだ見たことのないものを見せてくれる”というのって、すごく素敵なパッションというか、心が動きますよね。ですから、“Unknown Vision”という言葉を一番のモチーフにしたんです。

歌詞も音に言葉がポンポンと乗せられている感じがあって、すごく心地良く響いてくる印象がありました。

読んで辻褄が合うというよりは、聴いた時にビジョンがパーッと見えるような歌詞がいいなって思って、響きを重視して言葉を選びました。まさに、音の上に言葉をポンポンと置いていくような感じでしたね。

《遠い光…》《小さい光…》という部分では、光を感じますし、“雷鳴”や“燃え上がる雲”など、風景も見えてきます。

“私はこう思うんです”とか、自分の考えを歌で主張する気持ちは全然なくて。どちらかと言うと、何か物語があって伝えるという語り部として歌うほうが向いているのかなって思うんです。ですから、今回のようにアニメのテーマ曲だったり、何かテーマがあるほうがイメージを広げやすいんです。

音も独特な空気感がありますが、これも原作を読んだイメージから作られたのですか?

アレンジもやってくれてる保刈(久明)くんと“どんな感じかな?”って曲を作っている時に、保刈くんが特に曲を作るという目的ではなくサンプリングで不思議な音を作っていたのを聴いて、“あ、これがいいんじゃない?”って思って、それをトラックとして使うことにしたんです。遊び半分というわけじゃないんですけど、サンプリングをつなげて、どこが小節というわけではない曲なんですけど、その雰囲気がアニメの世界観にも合ってるなって。その不思議なサンプリングのかたちを崩さないようにメロディーを乗せていったので、拍子がちゃんとした4拍子になっていなくて、譜面に書けない曲になりました。もし、カラオケとかで歌おうとすると非常に歌いにくい曲だと思います(笑)。

ちなみに、普段はどんなふうに曲を作っているのですか?曲によって作り方はさまざまだとは思いますが。

私の場合、“作んなきゃ”と思ってピアノの前に座っても、いい曲が作れたためしがなくて(笑)。ですから、出てくるまで待つしかないんです。自我がない時が作れる時だったりします。例えば、すごく悲しい時って悲しさだけでいっぱいいっぱいになっちゃって、自我がなくなったりしますよね。そういう時にフッとできたりします。

3月から5月にかけて弾き語りツアー『Little Piano vol.4』が開催されますが、今回はどんなライヴになりそうですか?

ライヴを極めるのは遠い道のりだなっていつも思います。さっき、自我がない時に曲ができると言いましたが、ライヴに関しても自我を捨てて、音楽そのものになりたいと思っているんですね。観に来てくれた人たちと一体になって、その場が音楽そのものになるというライヴをすることが私の目標なんです。

ファンの人たちと一緒に作っていく感じなんですね。

はい。でも、ライヴは何回やっても緊張しますね。最初は“あ、みんな私を観てる”ってすごく緊張してたんですけど、みんなは私を通して何か他のものを観に来てるということに途中で気付いて、それからは気持ちがずいぶん楽になりました。でも、まだまだですから、日々精進だなって思っています。
Unknown Vision
    • Unknown Vision
    • VTCL-35146
    • 2013.01.30
    • 1050円
新居昭乃 プロフィール

8月21日生まれ、東京都出身。“幻想系の始祖”とも呼ばれる独自の音楽性で、海外での評価も高い。2006年パリ、ベルリンのソロツアーを皮切りに、サンチアゴ、香港、台湾、モナコなど海外でのライヴ、イベント参加を精力的に行なっている。また、CHARA、安藤裕子、種ともこ、PSY'S、LUNA SEAなど多数のアーティストのライヴやレコーディングでコーラス参加、手嶌葵、悠木碧等、他アーティストへの楽曲提供も多数。海外での評価も高く、ベルリン、パリ、香港、台湾でのソロライヴを成功させ、モナコで行われたイベントにも参加する等、 活躍の場を広げている。ファンメールは上記の地域以外にアメリカ、タイ、ポーランド、ブラジル等からも届く。新居昭乃 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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