【nano.RIPE】新曲はバンド史上もっ
ともポップなナンバー!
新曲「リアルワールド」は、超ポップながらシリアスなメッセージも込められたナンバー。他に人気曲のアコースティックバージョンも収録され、今後のライヴ活動も左右するであろう、重要なシングルになった。
取材:榑林史章
「リアルワールド」は、いつになくポップなナンバーですね。でも、歌詞はいつものように深読みさせる部分もある。
きみコ
アニメ『人類は衰退しました』のオープニングの話があって作ったのですが、無理してポップにしたのではなくて、ぼくらの中にもともとあるポップさに、もっとも近づけた感じです。
冒頭の《パッパッパラッパッ》というところはすごくキャッチーで、今までのnano.RIPEのイメージからすると意外でした。
きみコ
曲はジュンが作ったのですが、最初はあたしも“どうなんだろう~”と思ったけど(笑)、やってみたらすごく楽しくて!
ササキ
そんなにチャレンジしたつもりはなかったんだけど…。
アベ
でも、僕も最初に聴いた時、“やっちまったな!”って。
良いほうの“やっちまったな!”ですか?
アベ
どっちに転ぶかな?と(笑)。でも、演奏する面でも単純に楽しい曲なんです。歌のところではノリの良いエイトビートだけど、イントロもそうだし、間奏で変拍子になるところもあって。
アニメでは曲に合わせて主人公や妖精さんが踊っている絵が流れますが、ライヴではお客さんと一緒にあの踊りを?
きみコ
その時はギターを置いて、あたしも一緒に踊ろうかな(笑)。試しに踊ってみたけど、速くて結構難しかったです。
アニメはファンタジー要素もありつつ、物質文明が崩壊した世界が舞台。当たり前と思っていることが、いつなくなるか分からない世の中で、それは大きなことに限らず日常の些細なことでも言える…世の中に問うているようなものを感じました。
きみコ
まさにそういうことを歌いたいと思って書きました(笑)。原作は表面上ファンタジーだけれど、奥底にはすごくリアルな物語があるので“リアルワールド”とタイトルを付けたんです。
一番こだわったフレーズは?
きみコ
《ご褒美はチョコレート》というフレーズがあって。アニメに出てくる妖精さんが甘いもの好きで、あたし自身もチョコレートが大好きだということで、珍しくストレートに書いてみました!
アベ
デリケート、チョコレート、ストレート、バリケード…とシンプルに韻を踏んでいる感じも今までなかったよね。
きみコ
意味より、リズムで楽しい言葉を選びたいと思って。
ササキ
今回の歌詞は、きみコの陽の部分が出たなって思います。今までも陽の曲はあったけど、どこかに陰が隠れていたから。
きみコ
ちなみにですけど、最近引っ越しをして、陽当たりもばっちりの明るい部屋になったので、その効果も表れているかもしれない! ただ、相変わらず引きこもっていますけど(苦笑)。
カップリングの「アドバルーン」は、すごくノスタルジックな曲で、子供の頃にデパートやスーパーの屋上に揚がっていたのを思い出しました。
きみコ
まさにそれ。あたしは小さい頃、アドバルーンを見るのが好きで、その時に思っていたことを今の自分が思い返して書いた曲です。“今”と言っても、08年のインディーズのミニアルバム『空飛ぶクツ』に入っていた曲で、それを新録したのですが。
アベ
僕が加入する前の曲なので、すごく新鮮に演奏することができました。原曲を好きだと言ってくださっている方も多いので、そのイメージを大事にしながら僕らしく演奏した感じです。
きみコ
当時とはメンバーが変わっているので、できることなら昔の曲は全部録り直したいくらいなんです。実際にライヴでよくやっている曲は、1stアルバムに新録で入れたりしているし。この先もタイミングがあれば、やっていきたいと思っています。
「リアルワールド」にも「アドバルーン」にも、“丘の上”と出てきますが、目標とか目指すところの象徴ですか?
きみコ
ほんとだ! 言われて気付きました(笑)。でも、比喩的なことではなくて…あたしは夕暮れが好きで、沈む夕陽がよく見える場所と言ったらやっぱり丘の上。いつもそういう場所を見つけたいと思っているので、自然と歌詞によく出てくるのだと思います。
カップリングのもう1曲「モラトリアム」は、nano.RIPEらしいマイナー調のロックナンバーですね。
きみコ
これは前シングルの「絵空事」を出す時にも候補に挙がっていたのですが、歌詞とアレンジがまったく違う原曲となったものがあって、それは「アドバルーン」と同じくらいの時にできて。何度も書き直しを経て、今回ようやくリリースに至ったという。
《アイデンティティなんて呼べるほどには大したもんは持っていない》というフレーズが、心にグッときました。
きみコ
世に自分のアイデンティティを掲げて歌う曲は多いと思いますが、あたしは“これが自分だ”というものはあっても、それは“アイデンティティです!”と言えるほど強くもなくて。そこはずっと揺れ動いてて、昔に“これが答えだ”と思って歌ったことで、今はまったく違うふうに思っていることもある。そんなに自信を持って言えないことでも、歌にしちゃっても良いかなって。
「モラトリアム」とは、辞書を引くと猶予期間のことで、大人になる前の時期、青春や学生時代の象徴として使われることも多いのですが、そうやって揺れ動くのはモラトリアムの特権とも言えますね。
きみコ
あたしはきっと、大人にも子供にもなれず、すっと死ぬまでモラトリアムのままなんだと思います(笑)。
そして、初回盤限定には「面影ワープ」を、通常盤には「パトリシア」を、それぞれアコースティックバージョンで収録されていますが。
きみコ
1月からニコ生の『nama.RIPE』という番組で、毎回数曲アコースティックを披露していて、評判の良かったものを音源にしました。今まではインストアとかアコースティックイベントのお話をいただいても断っていましたが、これを機会にどんどんやっていこうと思っています。ごまかしが効かない分緊張するけど、ワンマンではアコースティックのコーナーを作ったりとか、活動の幅が広がるので、自分たちでも今後がすごく楽しみです!
ナノライプ:前身バンドを経て2004年にnano.RIPEとなり、地元である千葉・東京を中心に本格的な活動を開始。08年、インディーズレーベルよりミニアルバム『空飛ぶクツ』を発売。草野マサムネ(スピッツ)など多くのアーティストから推薦コメントが寄せられ、話題となる。10年、Lantisよりメジャーデビュー。その後、メンバーチェンジを経て、現在はきみコとササキジュンのふたりで活動を続けている。nano.RIPE オフィシャルHP