L→R TOC(MC)、DJ KATSU(DJ)

L→R TOC(MC)、DJ KATSU(DJ)

【Hilcrhyme】変化を自分たちでも予
感している、未来を見据えたベスト

シングル「純也と真菜実」でのメジャーデビューからノンストップで走り抜いてきたHilcrhymeが、珠玉の楽曲たちを集めたベストアルバムをリリースする。“あくまで序章にすぎない”という、濃密な3年間の歩みをじっくり語ってもらった。
取材:ジャガー

次へ向かうための気持ちが高まっている
今この瞬間

これまでの軌跡を凝縮したベストアルバムをリリースされますが、そもそもどういう経緯で発表しようと思ったのですか?

TOC
メジャーデビューして3年…その間に3枚のフルアルバムを出して、3回ツアーをやって、本当にたくさんの貴重な経験ができて、アーティストとして、ひとりの人間としても鍛えられました。ずっと葛藤があって…うん、本当に(笑)。自分たちの思いを誰かに届けるっていうのは、ほんの些細な違いでも受け取り方が変わってくるじゃないですか。だから、すごく神経を使って、日々もがいてましたね。何が正しいのか、答えがあるわけじゃないし。でも、そうやって悩むってことは、より音楽に取り組む姿勢が貪欲になっている証拠でもあって、さらに上を目指したいって気持ちが俺もKATSUも強くなっていった。その前にちゃんと節目を設けて、そこから上を目指したかったんで、次へ向かうための気持ちが高まっている今この瞬間にベストアルバムを出そうと。

最良のタイミングだと思えたのが今だったと?

TOC
最高のタイミングだと思いましたし、ベストアルバムが次へのステップアップになると思っています。

今回のベストアルバムは、シングル曲を中心とした『Best of Hilcrhyme ~GOLD~』とカップリング曲が中心の『Best of Hilcrhyme ~SILVER~』、そしてその2枚に加え、ライヴ写真集と「春夏秋冬~フルオーケストラver.~」のMUSIC VIDEO収録のDVDが付く限定BOX『Best of Hilcrhyme ~BEST RAP~』と充実の内容ですよね。こういったかたちで聴かせていただくと、“シングルだからいい”“カップリングだからシングル曲に比べて劣ってしまう”…みたいなことがまったくなくて。逆に、ライヴで盛り上がるナンバーが『Best of Hilcrhyme ~SILVER~』には多く見受けられたりしますよね。

TOC
だいぶ前からカップリングアルバムの構想は練っていたんです。で、こういうタイミングでベストアルバムとして、シングル曲たちと一緒に出せるのは幸せですね。ただ、欲を言うならもうちょっとボリューミーにしたかったなっていうのはあります。メジャーという場所でも、自分たちが変わらずやってきていた“遊び”にちゃんと日の目を浴びせたかったというか。カップリングはどこまでいってもカップリングなんで聴かない人は聴かないだろうから、こんなことをやっているんだっていうのをひとつの作品として世に出したかったんです。

それだけ強い意志を持って制作された作品をどう組み立てていこうと思いました?

TOC
『Best of Hilcrhyme ~GOLD~』は、ファンの投票で人気の高かった曲も収録されているんですけど、基本的には順を追って聴いてもらいたいから、リリースした順番に収録しました。こうやって振り返ってみると、いろいろあったなぁって当時の記憶が蘇ります。成長過程を記録した写真のアルバムを見ているような感覚なんですよね。『Best of Hilcrhyme ~BEST RAP~』のライヴ写真集もやってきたライヴが時系列順で並んでいるから、それを見ながら聴いてもらえるとHilcrhymeの歩みが分かってもらいやすいんじゃないかなって思います。『Best of Hilcrhyme ~SILVER~』に関しては、KATSUが曲順を決めました。
KATSU
カップリングアルバムを作りたいっていうのは結構前からふたりで計画していたことなんで、シングルを作っている段階からアルバムを意識しているものもありました。で、俺は自分だったらこういう感じでアルバムを楽しみたいなっていうリスナーとしての目線を大切にして並べて…初めて聴く人は大抵頭から通して聴くじゃないですか。そうした時にすっと入っていける流れにしたいなと。

先ほどTOCさんがおっしゃったように、“遊び”の要素が強い楽曲=キャラが濃いわけじゃないですよね。

KATSU
そうなんですよ。だから、曲順を変えて通して聴くと、また別の雰囲気になると思うんで、そこは大事に考えていきましたね。全体のバランスさえこちらが上手く取れれば、曲自体は似たカラーがひとつもないから、いろんな味が出て面白い。いいアルバムになったと思います。

リスナーの中には、“ライヴで聴いていたあの曲は、もともとこうだったんだ!”みたいなちょっとした発見もあったりしそうですよね。あと、ボーナストラックとして「SKYDRIVE at “MESSAGE TOUR 2011”」や「Extraction ―Instrumental― at “RISING TOUR 2012”」が入っているのも、ファンとしてはライヴの臨場感を体感することができるので嬉しいと思います。

KATSU
そうですね。ライヴ用のエディットがあるから、原曲の状態を知らない人もいると思うんで、そういった意味でもすごくいい機会なんじゃないかな。
TOC
ライヴをするために曲を作ってると言ってもいいぐらいなんで、ちゃんとライヴの景色というのは見えるものにしておきたかったですね。

ちゃんと意志の通った作品に仕上げられ
たからよかった

振り返ってみると、その時々で伝えたいメッセージをちゃんと一曲一曲に詰め込んでいますよね。

TOC
それは思います。「臆病な狼」とか、よくこれをシングルで出せたなって(笑)。メジャーというフィールドは、売れることが絶対的に正しいんですよ。それはこの3年間ですげぇ分かって。売れてなくても素晴らしい音楽はたくさんあるけど、俺たちはこのフィールドで戦うことに意味があるって考えているんで、ここに居続けるんだったら売れなきゃいけない。夢をちゃんと現実に変えていくために自分は今何をすべきなのか…「臆病な狼」で再認識できた気がします。

恋を歌うにしろ、大きな人間愛を歌うにしろ、人生観を歌うにしろ、最後には立ち向かっていく姿が描かれた曲たちばかりですよね。確かに「臆病な狼」は人間味あふれる泥臭いナンバーで、逆境にめげずに頂点を目指していくというのはさまざまな人の生活にリンクする部分もあり、聴いているだけで奮い立たされます。

TOC
あと、自分にとって一番の収穫だったのは「パーソナルCOLOR」。「no one」や「臆病な狼」よりもHilcrhymeの今後をちゃんと示唆できている曲だなって手応えがあって、ちゃんと自分たちらしさを表現できている。次につながるという意味で、最新のシングルが「パーソナルCOLOR」っていうのは非常に大きいです。

『Best of Hilcrhyme ~SILVER~』のボーナストラックとして収録されている「内容の無い手紙」も、ストレートに綴られた思いがどんどん染み渡っていくような感覚があって、グッときました。

TOC
いいですよね、俺もそう思います(笑)。滅多に誉めないエンジニアが、“この曲いいこと言ってるね”って誉めてくれたりとか。もともと人に提供する楽曲として書いたので、俺が歌うんじゃないから変にひねくれる必要はないなと思って、ストレートに書いたんです。それがよかったんでしょうね。そんなに肩の力を入れずに書けました。

節目として、素晴らしい作品が完成しましたね。

TOC
このアルバムはまだHilcrhymeを知らない人にも向けたもの。もちろん、今までのファンが聴いても退屈させない作品になっているんだけど、気になるアーティストを知るんだったらまずはベストに手が伸びると思うんですよ。だから、たくさんの人に聴いてほしいですね。ベストアルバムなので…よろしくお願いします。

急に営業マンみたいになっちゃいましたが(笑)。でも、今作を聴いてどういう反応が返ってくるか本当に楽しみですね。

TOC
ベストにもいろんな種類があって、ただシングルをまとめたわけじゃなくて、もっと上を目指すための節目として、ちゃんと意志の通った作品に仕上げられたからよかったなって思います。

さて、“さらに上を目指したい”という思いのもとベストアルバムが完成したわけですが、すでにおふたりとしては今後の展望が見えていると?

TOC
今すごくいい状態なんですよね、俺たち。新しい楽曲も制作しているので、本当は早く楽曲を聴かせたいし、ライヴでいろいろ披露していきたいんですけど…自分たちでもびっくりするぐらいいい感じなので、せっかくだから何事も時間をかけて丁寧に作り上げたいんですよ。だから、このベスト後にも期待していてほしいです。

変貌振りが待ち遠しいですね。しかし、よくよく考えてみるとデビュー3年にしては足早に駆け抜けてきたのではないですか? リリースも多かったですし。

TOC
…多かったですね。
全員
(笑)。
TOC
そういった面も含めて、怒濤のような3年間を振り返ったベストです。音楽をする環境が変わって、自分たちの甘さを突き付けられることもあって…いろいろ勉強になったんで、気を付けていきたいですね。今はすごくすっきりしてるんですけど、悩む時期もありましたから。
KATSU
リリースもだけど、ライヴも各地回らせてもらって、なんとかやってこれたなっていう。今年は余裕を持ってやっていこうって思うんですけど、このベストのタイミングで過去の自分を見返すと、まだまだだったなって反省点は多いです(笑)。壁にぶつかることも多かったからTOCとも今後のスタイルについて話し合って。おかげで、さっきTOCが言ったみたいにすごくいい曲が出来上がりそうです。これからモデルチェンジをして、新しいHilcrhymeになるぐらいの変化を自分たちでも予感しているので、未来を見据えたベストですね。
TOC
今年はなんかあると思うんですよ。こう具体的にどうなるっていうのがあるわけじゃないんですけど、追い風みたいなものを勝手に感じてて。俺たちがやってきたことをちゃんと理解してもらえる一年だと思うんです。絶対追い風が吹いてると思うから、このチャンスを逃したくないですね。今、求められているものを出す…それがきっと分かってもらえると思います。まずはベストを聴いて、楽しみに待っていてください。
Best of Hilcrhyme ~SILVER~
    • Best of Hilcrhyme ~SILVER~
    • UPCH-1871
    • 2890円
    • Best of Hilcrhyme ~GOLD~
    • UPCH-1870
    • 3059円
    • Best of Hilcrhyme ~BEST RAP~
    • UPCH-9740
    • UPCH-9740
    • 5980円
Hilcrhyme プロフィール

ヒルクライム:ラップユニットとして2006年に始動。09年7月15日にシングル「純也と真菜実」でメジャーデビュー。2ndシングル「春夏秋冬」が大ヒットし、日本レコード大賞、有線大賞など各新人賞を受賞。ヒップホップというフォーマットがありながらも、その枠に収まらない音楽性で幅広い支持を集めてきた。また、叩き上げのスキルあるステージングにより動員を増やし続け、14年には初の武道館公演を完売。「大丈夫」「ルーズリーフ」「涙の種、幸せの花」「事実愛 feat. 仲宗根泉 (HY)」などヒットを飛ばし続け、24年7月15日にメジャーデビュー15周年を迎える。ライミングやストーリーテリングなど、ラッパーとしての豊かな表現力をベースに、ラップというヴォーカル形式だからこそ可能な表現を追求。ラップならではの語感の心地良さをポップミュージックのコンテクストの中で巧みに生かす手腕がHilcrhymeの真骨頂である。耳馴染みのいいメロディーと聴き取りやすい歌詞の中に高度な仕掛けを巧みに忍ばせながら、多くの人が共感できるメッセージを等身大の言葉で聴かせる。その音楽性は、2018年にラッパーのTOCのソロプロジェクトとなってからも、決して変わることなく人々を魅了している。Hilcrhyme オフィシャルHP

OKMusic編集部

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