【絢香】セルフプロデュースによる最
高傑作
2年間の活動休止期間を経て、ついに音楽シーンに戻ってきた絢香。力強い再スタートを告げる新作『The beginning』には、彼女の歌の魅力だけでなく、アーティストとしてのさまざまなチャレンジが詰まっている。
取材:小貫信昭
この2年間、どのように過ごしていたのですか?
曲作りのための機材とか、分からないところは人に訊きながら使えるようにしたり、あと体調に関しては食事のことも含め、改めて自分の体を知ることから始めました。1年のうちで“この季節は体もこんな感じなのか”といったことですね。でも、ご飯を作っていて“このメロディーは残しておきたい”っていうものが浮かんだら、そのままピアノの前に座って、とか…
生活することと音楽することがすごく近い感覚ですよね。
そうでした。そして、“いついつまでに”とか追い立てられることなく、ゆっくりした時間の中で曲を作れたのが良かったです。これほど自然に音楽と向き合えたのは今回が初めてだったんじゃないかと思います。アルバムの中に『笑顔のキャンバス』という曲があるんですけど、これはそんな日常の中にふと感じた幸せのことを歌っているんです。
ホント、この曲を聴くと絢香さんの日常が見えるようです。
もちろん私にはパートナーがいて、ふたりで居る時間の大切さもすごく感じました。支えてくれた人がいたからこそ再びスタートが切れた。もしひとりきりだったら不可能なことでした。
曲作りのための機材という話も出ましたけど、今回のアルバムはほぼ作詞作曲をひとりでこなしているんですよね(一部、作曲のみ共作アリ)。
デモテープは主にピアノで作っていたんです。そのあと、アレンジャーさんと相談しながら完成させていったんですが、曲を作っていた段階で浮かんだコーラスのアレンジを、そのまま採用した曲もありました。そうやって、ひとつひとつの曲が出来上がるまでの過程そのものに、大きな喜びを感じたんですけどね。
レコーディングスタジオに入ってからは?
ミュージシャンの人たちにスタジオに来ていただいた時は、できるだけ私も一緒にスタジオに入って、仮歌を歌ってました。でも、曲のどこかでちょっとフェイクすると、すぐさまみなさん反応してくれて、どんどん曲が発展していったりするのがとっても楽しくて(笑)。前はどちらかというとレコーディングより断然ライヴのほうが好きだったけど、今はどちらも同じくらい楽しいです。
アルバムタイトルの“The beginning”に関してコメントをいただけますか?
この曲で伝えたかったのは“ありのままの自分でいることの大切さ”ですね。人はまっさらな気持ちで生まれてくるけど、いつしかさまざまな色に染まってしまう…。私自身、ありのままの自分でいるつもりだったのが、なかなかそうもいかないことも多かった。だから、“The beginning”という言葉の意味は自分の“原点”に立ち返る、ということでもあるんです。もちろん“ここから再び始まる”という意味に受け取っていただいても構わないんですが、むしろその想いは1曲目の『はじまりのとき』のほうが強いのかもしれない。“誰にでも、何度でも、始まりの時があっていいんだ。自分も新たなスタートを切るんだ…”。そう思い描きながら書いた曲なので。曲ができた時から,アルバムの1曲目はこれにしたいと思ってました。
「はじまりのとき」の中に既に歌われていることかもしれないのですが、再び活動を始めるにあたって、気持ちの部分で一番大切にしていたのはどんなことだったのでしょうか?
何を始めるにもちゃんとしっかり“自分を持ってないと駄目なんだ”ということですね。それがないと、決して前には進めない。この2年間、不安がなかったと言ったら嘘になりますし、焦りも少しあったと思うんですよ。でも、そういう時こそ自分にそう言い聞かせていたというか…
絢香さんと言えば「みんな空の下」を始め、例えば「三日月」にしても空と関係ある歌が多いですよね。今回も「アカイソラ」とか「空よお願い」とか、空にまつわる歌がありますね。
そうですね。空を見上げるのは大好きで、休んでいる間もツイッターに自分で撮った空の写真を公開したりしてました。
アルバムが出たら、ファンはライヴを期待すると思うのですが。
それは私自身も待ち望んでいることです。実はお休みに入ってまっさらな状態になった時、ふとステージに立つ自分の姿が頭を過ったんですよ。あと寝ている時、コンサートをやっている夢を見たり…。“またそこに向かって行かなきゃ!”って、強く思いましたね。その頃に書いたのが『THIS IS THE TIME』という曲だったんですよ。でも、まだまだ新たなスタートといっても、何も見えない時期で、だからこそ今から思えば、歌詞にすごく強い言葉を書いてる。そうして自分を奮い立たせる、ではないですけど。
では、作った時期によって精神的に違うわけですね。
そうですね。その後、復帰に向けての具体的なことも少しずつ見えてきたんですけど、その頃の作品が、例えば『キミへ』です。この曲はまさにファンの方たちに向けて書きました。みんなずっと待っていてくれたし、待っていてくれる人がいたからこそ私も頑張れたし。そう、その気持ちを込めて…
最後にファンのみなさんにメッセージをいただけますか。
素直な感謝の気持ちでいっぱいです。早くコンサートでお会いして、直接みなさんに“ただいま!”って言いたいですね。
アーティスト