L→R スズキヒサシ(Ba)、岡田慎二郎(Gu)、松木智恵子(Vo&Gu)、鈴木雅人(Dr)

L→R スズキヒサシ(Ba)、岡田慎二郎(Gu)、松木智恵子(Vo&Gu)、鈴木雅人(Dr)

【ピロカルピン】私の死生観につなが
る『宇宙のみなしご』の世界。

プロデューサーに小林武史を迎え、数々の有名ミュージシャンとともにレコーディングされた1stアルバム『ONE』。今年20歳になった大知正紘が、現在の気持ちを全てさらけ出して作り上げた渾身の一作だ。
取材:榑林史章

『宇宙のみなしご』は、時間がテーマだそうですね。

松木
例えば何年とか何歳とかっていうふうに時間を区切って意識しているのは、動物の中でも人間だけだと思って…そういう自分の中の“時間”に対する興味や想いが込められた曲がいくつかあったので、“時間”をテーマに統一して作ってみようと思いました。
岡田
時間というのは、人生を計るひとつのものさしですよね。今回の松木さんの歌詞は、一見幻想的で象徴的なことを歌っていますが、よく読むと人生そのもの的な、人間味のあるものが多いと思います。
松木
私の死生観に近いのかもしれないですね。アルバムの曲順も、人が生まれてから死んでいくまでの流れを意識しています。

アレンジの面では、どういうことを意識しましたか?

岡田
前作は“幻聴”とか“幻想”というものをサウンドコンセプトに置いて、デモでアレンジをしっかり作り、それにのっとってここはこう弾いてほしいとかメンバーに指示を出していました。今回は、楽曲のコンセプトに基づいてデモはラフに作って、バンド感を重視しながらアレンジを詰めた感じですね。これまで僕らのサウンドはUK寄りと言われてきたけど、バンド主体でアレンジすることで、今回はUSっぽい部分も出せたと思います。

1曲目「時間計」は時計の針のカチカチという音が入っていて、まさにアルバムのプロローグといった感じですね。

松木
そうですね。アルバムのオープニングにふさわしいものをと思って作ったので。
岡田
この曲のサウンドは、夜の森のようなイメージですね。シンセっぽい音がたくさん入っていますが、実は全部ギターで出しています。他の曲もそうですけど、ギターバンドというこだわりがあるので、極力鍵盤楽器は使わないようにしています。たまに隠し味的にちょっと入れたりもしますが、1曲目に関してはギターと歌のみですね。

「最終走者」は今から何かを始めても遅くないとか、聴いた人を勇気付けてくれますね。

岡田
僕ら自身も、このバンドを始めるのが結構遅くて。でも、やり続けたことで今こうしてやってますし、スタートするのが遅いからと躊躇していたら、いつまで経っても前に進めない。そういう想いも出ているんじゃないかなって思います。
松木
最初のギターリフは、最初の段階からありました。途中で変拍子になっているのは、意図的に入れたら面白いねって、何パターンも試してしっくりくるものを探していきました。
岡田
人生の中で、上手くいっている時もあれば、足がもつれてしまう時もある。そういう感じも表現できたと思います。

「メソポタミア」は時間というテーマで言うと、時代を超えてしまっている。なぜ“メソポタミア”と?

松木
太陽暦と太陰暦を最初に取り入れたのがメソポタミア文明だったので、そこからイメージして書きました。遊び心を取り入れた歌詞とサウンドで、今までにない感じに仕上がっていると思います。
岡田
松木さんからジャングルというイメージを聞いていて。メソポタミア文明は、実際にはジャングルの中にあったわけじゃないけど、インディー・ジョーンズのような、ジャングルをかき分けて行くと古代遺跡が…みたいなイメージのサウンドですね。
松木
最初にイメージしていたのは、洋楽のThe KBCとかサンシャイン・アンダーグラウンドとかのディスコパンクだったけど。
岡田
結局、いろいろ混じって全然違うものになりました(笑)。

最後の「ベンジャミン」は?

松木
タイトルは、映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のベンジャミンで、植物のベンジャミンのことでも、ベンジャミン・フランクリンのことでもありません(笑)。ベンジャミンは老人で生まれ、普通の人とは逆行する人生を送り、赤ん坊になって死んでいくお話。私たちは、周りがどんどんバンドや音楽を辞めていく中で、真剣にバンドを始めたので。逆行という部分ですごく共通していると思って。
岡田
こういうストレートなタイトルは初めてですね。今までは松木さんの歌詞やタイトルって、何から影響を受けてどう感じたかとか、そういう部分が分かりにくかったかもしれない。でも、これはどういう映画を観てどういうふうに感じたと、リスナーにも分かってもらえる。そういう点で、僕たちにとって新しいタイプの曲です。
松木
実は同時期に忠犬ハチ公のハリウッド版『HACHI約束の犬』を観て、それも何となく頭にありながら書いているんです。
岡田
それで歌詞に犬が?
松木
儚い命について言いたかったんです。イメージは夕暮れで、サウンドはシューゲイザーを意識しています。

タイトル“宇宙のみなしご”は、劇場版アニメ『カラフル』の原作者としても有名な、小説家の森 絵都さんの同名小説から付けたそうですね。

松木
森 絵都さんの小説はもともと好きで。小説『宇宙のみなしご』の中ですごく印象的なセリフがあって。“ぼくたちはみんな宇宙のみなしごだから、ばらばらに生まれてばらばらに死んでいくみなしごだから。自分の力でキラキラ輝いてないと、宇宙の暗闇に飲み込まれて消えちゃうんだよ”って。ここにすごく感銘を受けて。この言葉が、今回表現したかった私の死生観とつながったと思っています。読んだことのある方なら、より分かっていただけると思います。

そんなアルバムを携えて4月に東名阪でワンマンツアー。

松木
大阪と名古屋でワンマンをやるのは初めてなんです。これまで大阪や名古屋でやる時は、30分くらいしかできなかったから、今度はたっぷり楽しんでもらえると思います。
岡田
今回はワンマンということで、新旧の代表的な楽曲を織り交ぜて演奏するつもりです。楽しみにしていてください!
『宇宙のみなしご』
    • 『宇宙のみなしご』
    • PRKL-1010
    • 2013.03.16
    • 2100円
ピロカルピン プロフィール

ピロカルピン:2012年5月にアルバム『蜃気楼』でメジャーデビューを果たす。日常を浄化する美しく力強い言葉と、普遍的な曲の中にキラリと光る音の輝きが、リスナーの耳を捉えて放さない。昨年は渋谷CLUB QUATTRO、赤坂BLITZでのワンマンライヴを成功させ、今年も全国ツアーが決定している。 オフィシャルHP
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