【INORAN】シンプルであり、
ちょっと偏ったものを作りたかった

これまでのソロ作品のイメージを覆すような、初期衝動が詰まったニューアルバム『Teardrop』。そんな作品が生まれた要因には、やはりLUNA SEAの“REBOOT”が大きく影響していたようだ。
取材:石田博嗣

前作『Watercolor』はライヴ音源をベースにサウンドを再構築した実験的な作品だったのですが、今作はストレートなバンドサウンドですね。

そうですね。去年の暮れに“REBOOT”ということでLUNA SEAでワールドツアーと東京ドームと神戸でのカウントダウンをやって、スタッフやファンの人たちにいろんなもの…気持ちをもらったんですよね。それを自分が次に作るものに躊躇しないで詰めたいと思って、今年の初めから制作に入ったんです。だから、LUNA SEAのカバーアルバム(『LUNA SEA』)と同時期に作ってましたね。

今年の初めからっすか! それは楽曲も?

はい(笑)。その方がストレートな感情が込められるかなと思って。サウンド的な方向性はそんなに考えてなかったけど、シンプルであり、ちょっと偏ったものを作りたかったんですよね。LUNA SEAってオールマイティーであり、万能で…それでも偏ってるんですけどね。だから、自分のソロでもそういうものをバランス良く作る自信はあるんですけど、今回はそうじゃないもの作りたいなって。

ストレートなバンドサウンドなんだけど、刺々しかったりしますものね。

そうそう。棘があってもいいし、ものすごく激くてもいいし、メロウでも良かった。だから、たまたま感覚的に刺々しくなったという感じですね。

それはLUNA SEAをやったことで触発されたとかで?

もちろん、それはありますね。バンドの楽しさを再確認したし、そういうものをもらえたのってすごく幸せなことだから、そこは素直に出したかったというか。ほんと鏡としてね、LUNA SEAからすごくいろんなものをもらったから、それを自分はどう写すべきかっていうことを短い時間の中で考えたし…時間があればあるほど、いろいろ考えて整ったものが作れるし、いいものができると思うんですよ。でも、短い時間の中でやった時の強さっていうものもあるから、今回はそこに賭けたというかね。周りのスタッフは大変だったと思うけど(笑)

本作を制作する中で、最初にどんなものが出てきました? 自分のルーツ? それとも現在の自分が刺激的に感じているもの?

両方ですね。FAKE?(2002年にOBLIVION DUSTのKEN LLOYDと結成したユニット。05年に脱退し、現在はKEN のソロプロジェクトとなっている)をやっていたので激しいものは初めてではないし。でも、この煮込み過ぎない感じは、ソロでは初めてかもしれないですね。

LUNA SEAやFAKE?でやっていたことが出ているということで、まさに原点回帰という感じですね。

サウンド的にはそうですね。ファンのみんながいて僕がいる…シンプルなことなんですけど、その間に音楽があるっていうことを“REBOOT”をやって感じたというか。その気持ちを入れたかった。

では、今回のアルバム用に楽曲を作る時に、どんなことを意識していました?

できるだけシンプルに…音数を引いていくってこと。“こういう音を入れたらカッコ良いだろうな”っていうのは今でも浮かぶんですけど、そういうのはやらない。最小限の音だけでやるっていうことですね。

インスト曲は別として、どの曲も激しいですよね。それは意識的なものなのですか? バラード系の曲は今回必要としなかったというか。

僕の中でアルバムというのは最終的に自分を写し出す鏡なんですけど、今回のアルバムっていうのは登場人物がいるんですよ。だから、脚本を書いていったような感じなんです。どこかに住んでいるAさんって人がいて、こういう時に涙を流して…っていう感じで、その人のストーリーや情景を考えながら1曲1曲作っていきましたね。

歌詞は全編英語なのですが、最初から英語でやろうと?

やっぱりね、浮かんだメロディーが英語の方が合うんですよ。日本語が合うメロディーと英語が合うメロディーって違うんで。で、逆説的に言うと、いつも僕が書く歌詞って抽象的っていうか、そんなにストレートじゃないと思うんですね。でも、英語だと最終的にストレートになるんで、その辺の強さもあったというか。

メッセージ的ですものね。きっと、日本語だとここまで書けないんでしょうね。

書けないと思いますね。だから、一歩前に踏み込む時の強さが違う。

あと、ギターの音色も歪み系で攻撃的ですよね。

去年、Fenderさんとギターを作ったんですけど、すごく素晴らしいんですよ。いい出会いをしたんで、そのギターを鳴らしたいと思ったし…だから、このアルバムではそのギター一本しか使ってないんです。そのギターを手にしたから生まれる曲もあるし…そこには理屈なんてないんで、そのギターを持ってこういう曲ができたっていうことだけですね。

そんなサウンドを担うバンドメンバーはどなたが?

ドラムは以前にツアーで叩いてくれていたタナカジュンくんで、ベースはu:zoくんっていう初めての人だったんですけど、すごく良かったですね。グルーブが気持ち良かった。僕がデモテープを作って、それをレコーディングしながらアレンジを変えていったんですけど、そこも初期衝動だったっていうか。“これ、カッコ良くない?”って感じで…もうそれだけでしたね。システマティックにやるんじゃなくて、音を出す“音人”同士の会話でした。

この初期衝動の詰まったアルバムなのですが、どんな作品が作れた手応えがありますか?

みんなの笑顔が今まで以上に見えるし、ライヴで一緒に歌ったり、叫んだりできるアルバムになったかな。作っている時もスタッフが“うわ、すげぇカッコ良い!”って言ってくれたり…そこに楽しさがあったから、このアルバムを作って良かったなって。好きな人はすごい好きな音だろうし、現場も楽しかったし、ライヴでもっとそういうものを味わえる。そんな曲たちが生まれたと思いますね。

本作を引っ提げたツアーも控えているのですが、会場もライヴハウスだし、このテンションでライヴが行なわれるわけですね(笑)。

それがやりたいがため…だったかもしれないしね(笑)。すごく楽しみにしていますよ。みんなと楽しみたいし、笑顔になりたい。ガンガンに歌ってほしいですね。ファイナルの日本青年館もLUNA SEAのインディーズの時以来だし、思い入れもあるし、そこで今回のライヴができるっていうのは何の因果か…ミラクルが起こるんじゃないですかね(笑)
INORAN プロフィール

イノラン:国内にとどまらず、世界に活動の場を拡げるLUNA SEAのギタリスト。1997年よりソロ活動を開始、現在迄にフルアルバム10枚以上をリリースする等精力的な活動を行なっている。LUNA SEA、ソロの他にもTourbillon、Muddy Apes等多岐に渡るプロジェクトで音楽活動を鋭意展開中。ソロ活動20周年を迎えた17年8月にセルフカバーベストアルバム『INTENSE/MELLOW』を、LUNA SEAが活動30周年を迎えた19年8月にはオリジナルフルアルバム『2019』を発表。そして、20年9月に『Libertine Dreams』、21年2月に『Between The World And Me』、同年10月に『ANY DAY NOW』と三部作となるアルバムをリリース。INORAN オフィシャルHP

OKMusic編集部

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