【高橋 優】僕の中では双子が生まれ
たと思ってます!

関東圏の方にはお馴染『東京メトロ』のCMソング。2010年の元旦、ラジオ番組の即興企画で生まれた「福笑い」。高橋 優の温めた、1年越しの笑顔が満を持してリリースされる。
取材:石岡未央

さて「福笑い」って、もとはラジオ企画の即興でできた曲ですが、サビの一節“世界の共通言語は英語じゃなくて笑顔”というリスナーの言葉を聴いた、あの瞬間の感覚って?

衝撃というか、”あ~、今、この言葉が舞い込んできましたか”って。思ってて言えないでいたことを代弁してもらった感じですね。突飛というか、言い切っちゃってるじゃないですか。それを言える人がいて、その言葉に出会わせてもらったというのは、“今、歌ってみなよ”ってチャンスをもらった気がしたんですよね。それに関して言いたいことだったら、いっぱいあります!みたいな。

思ってたテーマを振ってくれて、どーも的な?

本当にそうです。ただ残り1時間にも満たない生放送の中で、“さぁ、できるかなぁ~”みたいな感じで言われて(笑)、下手なもん作れないっていうプレッシャーは、やたらデカかったですけどね。でも、あの空気感の場じゃなければ生まれなかった曲。鬼気迫った状態だからこそ、いろんなことが研ぎすまされた気はしますよね。結果的に、ものすごい言いたいことが言える歌になった。

ある意味、描いていたものの最終形だったりするのかな?

“第一期 高橋 優”みたいなことで言えば、ネクストステップにつないでいく段階の括りとして、ひとつの着地点となるのかもしれない。でも、この曲は、かなりネクストへのチャレンジなんですよね。

逆に、最初になるってことだ。今まで作ろうとしなかったってこと?

そうです、勇気がなかった。多分、胸を張って歌えない。なんか口先だけで”笑顔は大事でーす ”って言ってる奴になりたくなかったんですよね。言ってる陰では誰かが死んでるみたいな…。ただ、笑顔に対する価値観は、中学生くらいからず~っと今も変わらずにあるんです。笑顔でいられること、心から微笑んでいられる瞬間ほど素敵なものはないって。で、それをいかに歌ってみようかってことに、ずっと悩んでた。“ただ歌うんじゃダメだ! 何かしら経験を積んで、自分っていうシンガーに説得力をもっとプラスしてから歌わないと”って。正直、“世界の共通言語は争いだ”で通じると思うんですよ。それが作ってる時に常にあって、1コーラスと2コーラスで全然違うこと書いてみようかなんて思ったりもしてた。でも、それだと今まで通りというか、自分が変わらない気がして…。なので、ここは堪えて“共通言語が憎しみ、疑い、争いだって言うのは分かってるから…。だからこそ、あなたが今、ほんとに笑ってるかどうかが大事であって、そういうあなたの笑顔を僕は見たいと思ってるんだよ”って言い切る歌にしようって。それが、僕にとってのチャレンジなんです。今までは、やったことがなかった。

相変わらず深いですねぇ。見方が変化したりしてるの?

心が開けた感じはありますね。この歌ができたおかげで、自分自身、笑顔ってものに素直にアプローチできるようになった気がする。

テーマを与えてくれたっていう前提があるから、素直になれた?

それは、間違いなくあると思いますね。

ある意味、人の曲を書いたような感じがあったの?

即興をやる時に心掛けているのが、絶対に個人的な問題に持ち込んで、“誰かの気持ちになっているような自分のこと”を歌うんです。だから、きっかけをもらったのはありがたいけども、作ったものはまったくもって個人的な思いですね。

なるほどねぇ。ピアノヴァージョンも収録されてますが。

最初、どういう表情がこの曲にいいのか分かんなかったんです。で、そのままプリプロが終わってレコーディング当日になっちゃって(笑)。どうする?ってなった時に、誰かが弾き始めたフレーズがあったから、いいねぇって乗っかって、せーので録ったのがバンドヴァージョンのテイク。ただ、いろいろアレンジして、どれがいいのか判断できなくて…で、もうちょっとやってみようかってなったのがピアノヴァージョンだった。で、“これだ~、これいいじゃん”ってなって。だから、僕の中では双子が生まれたと思ってます。どっちが上でも下でもなく、自分の中で一番の完成形がふたつそろったということですね。

もう一曲。タイトル長っ! これ、ありがとう…っていうこと?

まだ、そこまでは言ってないですね。周りの人に対する日常のありがとうは大前提なので。今は本当に何かを成し遂げようとしている途中でしかないんですよ、全てにおいて。だから、ありがとうって今言っちゃったら、もう満足…“はい、ゴール!”みたいじゃないですか(笑)。まだ何にもゴールしてないし、怪物はそこにいるし。それに打ち勝った実感があれば、言えると思うんですけど。今はまだ、みんな一心不乱に頑張っている最中っていう認識で書いてますね。

作るにあたってはどういう意識だったの?

なんか、ぎゃーぎゃー言ってる子供がひとりいて、夢に向かってるのか、何と戦ってるのかは分からないけど、そういう無邪気というか、無鉄砲な奴がひとりいればいいっていう曲になればって。だから、歌もあんまり音程を気にしないで歌ったんです。わめき散らすような奴っていうか、“どうして僕だけこんなに辛いんだぁ~って、いつも思ってた”ってほんとに思ってる奴が言ってる感じに(笑)

メロディーに乗っかり切らないような感じ、分かります。

さらっと聴き流されてしまわないように、なんかグッチャグチャに音と音がぶつかってるような荒削りなものをここで改めて作ることの意味というか、そういうふうにしたかった。だから、レコーディングメンバーのみんなにお願いしたのは、“ヘタクソに弾いてください、ハチャメチャな方がいい”って(笑)。結果、勢いでいっちゃったものや、その場で浮かんだフレーズやハプニング的なものも盛り込んでたりしてます。それが、自分の意図してたことだった気がしたので。

今回のシングル、妙にエッジの立った単語とか表現が見当たらなくて。もう、病んでる奴とか言われないね(笑)。

いや~、今回のシングルの僕は素直ですよ。というか、言われなくっていいんですよ!(笑)
福笑い/ 現実という名の怪物と戦う者達
    • 福笑い/ 現実という名の怪物と戦う者達
    • 通常盤
    • WPCL-10895
    • 1000円
高橋優 プロフィール

タカハシユウ:1983年12月26日生まれ。札幌の大学への進学と同時に路上で弾き語りを始め、08年に活動の拠点を東京に移し、10年7月21日、シングル「素晴らしき日常」でワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー。13年11月には日本武道館での単独公演を成功させた。デビュー5周年迎える15年7月にはベストアルバムをリリースし、同月25日には秋田県の秋田市エリアなかいちにてフリーイベントを開催。高橋 優 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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