【高橋 優】これも僕です(笑)。大
きな声で言いたい!

昨年、インディーズリリースされた「こどものうた」。衝撃的に音楽界を賑わし話題となった、誰にも似てない男。“今日思ったことを今日歌う”リアルタイム・シンガーソングライター高橋 優、メジャーデビュー!
取材:石岡未央

メジャーデビューということで、率直な今の心境は?

感覚的には何も変わらないですね。というか、意識的に変わらないようにしてます。メジャーデビューって言葉に洗脳されてしまうと、すごい怖い気がしていて…。今こそ“さぁ洗濯しよう”(笑)とか日常的なことを大事にしてます。

それは作品作りに響くからってことなのかな?

そうです、もろに響く。作品作りもライヴの表現方法も。日常の全部が切り離して考えられない人間なので、浮き足立つと全部がふわふわしてしまう。自分の中に、ひとり醒めた自分がずっといて、その冷静な自分がどんどんデカくなってきてる。

なるほどね。メジャーの看板って、説得力のある存在証明になるわけだけど、プレッシャーとか感じてるの?

それはないですね。でも、他のメジャーの方たちと同じ土俵ってことだから、誰かと比べられても、もう言い訳ができない。今迄も嫉妬深かったけど、もっと陰険になるんじゃないかな。“くっそぉ~!”みたいな(笑)

ははっ、意識せざるを得ないってことだ。さて、一生背負ってくデビュー曲に「素晴らしき日常」を選んだ理由って?

今思ってることを一番言えてて、手応え的にもピタっとフィットした感じがあったからですね。“世界は素晴らしい”って、皮肉に響いてもいいから言いたいと思ってて。でも、ストレートに言いきれなくて、一方では“まったくどこをどう切り取ったって、この世界なんて素晴らしくねぇじゃん!”って思ってる自分も居て。それをミックスして、ポジティブにもネガティブにも捉えられる曲ができないもんかなぁって悩んだ時期もあったんだけど、それがポロっと出てきた。

“言葉”というもの自体にジレンマ感じてる気がするんだけど。

ありますね。パワフルな人だったら、こんなに言葉数いらないし、事例もなくていいと思うし、“素晴らしい”っていうたったひと言だけで説得できる曲があるかもしれない。バッハとかピアノだけで表現してたり、でも自分にはこれだけ必要だったかって…

実際は、これでも言い足りなかったりするんでしょ?

そうですね。こういう着地もあんのかなって思ってみただけで。まだ探しながら、ぶわ~って飛んでる状態だと思いますね。“絶対”とは言えず“きっと”と付けるところに、自分も“世界はどうなんだろうか?”って疑問を抱きながら生きてるって感じですね。

答え探しみたいな?

そこに答えがあるかより、そこを考えていかなきゃいけないような気がしているってことですね。

“作品”ってかたちになるとひとり歩きしていくじゃない? 解釈は自由だから、書いた意志と違う受取りかたをされることには抵抗ないの?

多分、大丈夫です。実は『こどものうた』の時にかなり悩んだことで、パンツの曲とか、家庭内暴力の歌でしょとか、社会切ってるよねぇとか言われて“そうじゃねーよ、社会なんか切ってねーし”って(笑)。今でこそ笑って言えますけど、当時、スゴい悩んだんですよね。でも、そうなんですよ。自分が作りたい曲はある、だけどみんなが聴きたい曲もある。そこにズレは生じてて、みんなが好んでる歌詞はあるんだなって思って…それは分かんない。それを狙って作る技量はまだないなって…。で、歌った時点で自分の曲じゃなくなるってことはすごく学んだので、この曲も覚悟はしてますね(苦笑)

レコーディングでのサウンドプロデューサーの浅田信一さんとのスタンスは変わった?

変わらないですね。この曲は弾語りだと重いというか、ジャキジャキ突き刺さるようにしか聴こえなかったので、ポップというか、バンドサウンドで、うまく収まるものにしたい、できるだけ多くの人に受け取ってもらえるようにしたいってお願いして。

リズムパターンがドラムというより太鼓に思えて、歌と相まって“生きる”とか“人間”っていう深い原始的なものを感じたんだけど。官能、叙情、民族的というか…。

それは初めて言われましたね。でも、ドラムの音は、毎回かなりこだわってて、特にこの曲は一番言ってるかもしれない。“普通は、こういうのやらないんだよ”って浅田さんに言われながら、でも自分の中で鳴ってるほうで“これでお願いします”って。

妙に掻き立てるパターンだよね?

僕自身、掻き立ちたいのかもしれないですね(笑)

カップリング「8月6日」は、時系列で追うラブソング。すごく素直でいいよね。同じ人だと思えないけど(笑)。

自分の中ではシンプルすぎて、曲にするまでちょっと怖かったんですよね。そのまんますぎて…。何を歌ってくれちゃってんの?、みたい感じになるかと思ったんだけど。下手にメロディーに抑揚を付けないでAメロ、Bメロだけにしたことで、毎日が特別になるというか、記念日はその日だけじゃなくてもいいようになっていく気がして、こういうかたちになりました。

そうなんだ。ところでなんで、そんなにうれしそうなの?

こういう素直な会話をしたい!(笑) 病んでる奴みたいに言われることが多いんで。

(爆笑)しょうがないよね、メインになる曲が、そういうのばっかりなんだもん。これは素直でかわいい感じするよね。

これも僕です(笑)。大きな声で言いたい! もっと言ってください。

今までの曲であんまりないよね、この素直すぎる感じ。

ないパターンですね。素直になるべきなんでしょうね(笑)

いやいや素直だからこうなるんでしょ(笑)。純粋な恋愛もしつつ、世間に対する憤りもありつつ、極端な2曲の共存が少年っぽいというか魅力だよね。ところで、“愛”という言葉がよく出てくるけど、高橋 優の考える“愛”の捉えかたって?

親子や家族的なのがしっくりくる。何かしてもらってる気はしないけど、いろいろとしてくれてる。漠然とでもいいから、その人の何かが良くなってほしいと願うことが愛だと思うし、それを思い合うことが愛し合うことになると思う。そんなに難しいことではなくて、3秒後でもできるはずって。

では、最後に。今思う、素晴らしき日常とは?

全国でライヴができている今。新しい出会いを求めて、良いも悪いもひっくるめて曲を届けに自分たちで動けていることですかね。
素晴らしき日常
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高橋優 プロフィール

タカハシユウ:1983年12月26日生まれ。札幌の大学への進学と同時に路上で弾き語りを始め、08年に活動の拠点を東京に移し、10年7月21日、シングル「素晴らしき日常」でワーナーミュージック・ジャパンよりメジャーデビュー。13年11月には日本武道館での単独公演を成功させた。デビュー5周年迎える15年7月にはベストアルバムをリリースし、同月25日には秋田県の秋田市エリアなかいちにてフリーイベントを開催。高橋 優 オフィシャルHP

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