L→R 高橋久美子(Dr&Cho)、橋本絵莉子(Gu&Vo)、福岡晃子(Ba&Cho)

L→R 高橋久美子(Dr&Cho)、橋本絵莉子(Gu&Vo)、福岡晃子(Ba&Cho)

【チャットモンチー】“表情”満載な
初のカップリング集が完成!

積み上げてきた4年間と、だからこそ今できること。チャットモンチー初のカップリング集『表情 <Coupling Collection>』が届いた。これまでの全カップリング曲とアコースティックのセルフカバー5曲を収録した大充実の2枚組だ。
取材:本間夕子

「湯気」こそがキーパーソン
最初のきっかけになった曲です

4年分のカップリングを前にして、今改めて思うこともあるでしょうし、せっかくなのでこれまでを振り返りつつ1曲ずつ順番に訊いていきましょうか。まずは「手の中の残り日」から。

橋本
今見ると尖ってるんだか、突き放してるんだか、落ち着いてるんだか分からない曲ですよね(笑)。なんだか背伸びして、余裕見せてるみたいにも感じて。たぶん、自分でも最大の大人っぽいところを出したがってるというか。だから、結構前の曲なのに、全然、今でも習得しようとしたくなる曲なんですよ。
福岡
背伸びしとるっていうのは分かる、なんとなく。それも含めて男っぽいというか、“現状に甘んじない!”みたいな心意気が感じられるというか。思い出とともに、ですけど(笑)。デビュー前、この曲でバンドコンテストみたいなものに出たこともあるんですよ。これで出たんやなって今思うと…潔すぎる(笑)。

「湯気」は最初に聴いた時にタイトルからしてビックリしましたけどね。ロックの概念をぶち壊されたというか(笑)。

高橋
ねえ(笑)。ハイスピードでめっちゃカッコ良い曲なんやけど、私にとっては雨漏りしてボロい塾っていうイメージで。全国、どこ探してもこんな塾ないですよ、もう。
福岡
雨漏りするし、お菓子食べるし、塾ちゃうやんけって(笑)。

久美子さんの思い出を基に書かれた歌詞ですもんね。それがこんなにロックな曲になるってことがすごくて。しかも1stシングルのカップリングだったでしょう? このバンド、只者じゃないと思いましたよ。ホント全然古びない曲だし。

福岡
ライヴでもよくやってるから、なおさら遠い感じがしない。それにこの曲こそがキーパーソンというか、“チャットモンチーのカップリング”っていう存在にみんなが注目してくれる最初のきっかけになった曲やから。ライヴに来た人がみんな、“あの曲、何?”って反応してくれて。

「小さなキラキラ」は初めてキーボードを入れた曲ですっけ?

福岡
そう。最初は抵抗があったんですけど。

言ってましたよね、ライヴでの再現性はどうなのかって。

福岡
でも、ちゃんとワンツアーできたから。久美子がカウント打ちながらキーボードを弾いて、また即座にスティックに持ち替えるっていう(笑)。それができて他の楽器を入れるのもいいなって。3人でやれること、可能性を広げてくれた曲ですね。カップリングでいろいろ面白いことができるって気付かせてくれたし。

「RPG」はすごく晃子さんらしい歌詞ですね。

橋本
歌詞が面白かったから曲もそういう感じで付けました。いつもはメロディーから作るけど、これは言葉のリズムから作った曲で。言葉を発する感じが面白いと思って。でも、サビの部分で(プロデューサーのいしわたり)淳治さんに“キョロちゃんみたい”って言われて(笑)。ほら、♪クエックエックエ…の。
高橋
あ~!!!!(笑)
橋本
私のリズムってキョロちゃんなんやなって思ったのを、マスタリングで聴きながら思い出したっていう。

久美子さんはどうでした? この曲。

高橋
歌詞の世界が分かりやすかったから…カクカクカクって歩いていくでしょ、RPGって。
福岡
それ、ごっつ初期のRPGやで(笑)。ファミコン時代か!
橋本
今のってアニメみたいになっとるよ。
高橋
そうなん? でも私は、カクカクの顔の人が歩いてくイメージでアレンジも進めていったからやりやすかったし、楽しかった。やっぱり、こういう底抜けに明るくて楽しい曲は気持ちいいよね。ライヴでやっててもめっちゃ楽しいもん。
福岡
ライヴといえば「リアル」は1回だけやったな。2007年の夏フェスか。ちょうど「橙」が出た頃で夏フェスも最終っていうタイミングだったから、よしやったろ!ってやったけど…。
橋本
季節も何もかも寒かったよな(一同爆笑)。もう秋になりかけてたし、初めてやった曲やからお客さんも“う~ん?”みたいになって。“いや、違うんやって!”って言いたかった。
高橋
それ以来、封印されとる(笑)。でも、出だしからめちゃめちゃカッコ良いけどな、これ。
橋本
うん。3拍子っていうのもあんまりないし、チャットでは珍しいことが詰まってる曲やけん。

「片道切符」、これも名曲ですね。

福岡
最新カップリング曲ですね。曲自体は昔からあって、でもすごくいい曲だから、どこかいいタイミングで出したいって待ち続けてたけど、待ち過ぎてもう“出す時=いい時”だ!って言って出したっていう(笑)。でも、こうやってアルバムに入ったことでまたいい役割をしてくれてるな、これは。

「迷迷ひつじ」もずいぶん懐かしい曲でしょう。

高橋
そう、私がチャットに入ってしばらくして“こういう曲があるんやけど…”ってやった曲なんですよ。だから、ホンマ昔の曲っていうイメージ。デビュー目がけてめっちゃ頑張りよったな、とか。これは言葉数が多くて、ふたりの掛け合いの部分とか、凄まじい上に私のコーラスのハモリも入れたから、すごい曲になった。

そこにいいクッションとして「風」が。

福岡
でも、初めてこういうゆるい曲を作ったから、レコーディングの時に“どうする?”みたいになって。
橋本
うん、アコースティックの難しさにすごく似とった。
福岡
これは私がキーボード弾いてて、最後のほうでベースになるんですけど、録る時も分けずにマジでその場で持ち替えたり。
高橋
いろいろ頑張ってたなぁ。曲はさわやかなんやけどね。

「コスモタウン」もかなり昔の曲でしたよね。

高橋
歌詞を書いたのが大学生の時ですからね。私がチャットに入りたての頃。その時観てた番組に影響された部分もありつつ…番組は忘れたけど、確か真面目な番組だったはず。
橋本
でも、これは私、完璧タイトルにやられてるよ(笑)。タイトルに持っていかれて曲作ったもん。すごい“宇宙!”って感じがしたんですよ。だから、明るい感じに自然となったというか。

“冬が来ない”っていうオチは
自分でも想像してなかった(笑)

「バスロマンス」はシングル級の存在感ある曲に育ちましたね。

福岡
この曲でまた広がりましたね。今までなかったことも全然アリにしてくれて。これ1曲で今まで違うと思ってたこともグイッとこっちに引き寄せることができたというか。幸せな歌っていう意味では「ツマサキ」とかも普通に幸せでしょう? でも、「ツマサキ」は真顔でできるけど、これは否が応でもニコニコしちゃう。

で、初セルフプロデュース曲の「three sheep」。

福岡
そうです。でも、これも曲自体はずっと昔からあって。
高橋
うん、「コスモタウン」とかと同じ時期に書いてた歌詞。
橋本
“(チャットモンチーに)ドラム・久美子現る!”って感じやな。この曲は一番思うかも。すごい登場感がある。
高橋
『チャットモンチーになりたい』(自主制作盤。現在は廃盤)の1曲目だったからなおさらそういう感じがするのかな。
福岡
うん、久美子がサポートじゃなくなった“らしさ”がすごく出とる曲。タム、めっちゃ使っとるしな。今なんて“これ、どうやって叩きよったっけ?”とか言うもんな(笑)。
橋本
「Y氏の夕方」は『耳鳴り』(1stアルバム)の匂いがする。
福岡
うん、ある程度曲を作ってきたからこその感じやな。イントロでハッとさせたいとか、3人ならではのインパクトを模索してた頃の。そういう意味では「愛捨てた」はセルフ(プロデュース)で結構納得いく音が作れたっていう印象がある。これで音の面でも、アレンジ面でも、セルフいけるなって思えたし。
橋本
たぶん、これは私にしか分からんと思うけど、「愛捨てた」の曲が始まる前、弾く前のギターの弦の音がめっちゃ好きで。
福岡
超歪んどるけん、ギリまでミュートさせてたヤツやろ?
橋本
そう! ミュートから、さあ弾く!っていう、解放される時に、ハッて弦の音が鳴るんですよ。それがごっつ好き。

「決まらないTURN」は後半のカオスっぷりがすごいです。

高橋
ホンマ、カッコ良い。デビューが決まった頃の、まだ前途洋々ではない感じ、漠然としたイライラ感が一気に爆発してて。

「意気地アリ」はライヴでかなり盛り上がりますよね。

福岡
めっちゃ速いし、あっと言う間に終わるけど、みんなこういう曲もイケるんや~って。このアルバムの中でも盛り上げ要員。

その後に「ドッペルゲンガー」がくるコントラストが面白いなと思って。ホントいろんな方向に振り切れてるなあ、と。

福岡
確かに。これはしっとりしてるけどイントロが変わってるから歌に入るまで“どういう曲なんだ?”って分からないし。
橋本
フワッとしてるけどブレイクが多かったり、忙しいけど聴かせたいところは聴かせたいとか、いろんな要素が入っとる曲やなと私は思ってて。“ドッペルゲンガー”って文字の並び方とかが“チャットモンチー”みたいやな、とも思ったりするし。

そういえば、「春夏秋」に冬がないのはどうしてですか。

橋本
四季がある曲を作ろうと思ったんですけどね。例えば、夏の曲とかひとつの季節だけもいいけど、四季が楽しいからもったいない、1曲で1年歌ってしまうのもいいなと。最初はもう一回春が来て終わるつもりだったけど、作ってくうちに“冬が来ない”っていうオチになったのは自分でも想像できなかったです(笑)。

「Good luck my sister!!」はウェディングソングですね。

福岡
これ、実はチャットモンチーにはあんまりない“チャットモンチーっぽい曲”なんですよね。他の曲では凝ったことし過ぎてあんまり“ぽい曲”ってないけど、これはすごく明確で、でもやったことないから目新しい。そういうのが面白いなって。

そして「推進力」。この先の展開にもつながって、またグイグイ進んで行くんだなと予感させるいいラストだと思いました。

福岡
うん、ホンマに。なんか安心しますね。この曲がくると。

それにしても19曲ってホントすごいボリューム感ですよね。

高橋
いつかはまとめたいなっていう想いはあったし、だったら20曲にいく前に!って(笑)。20曲だとさすがに多いじゃないですか。本編だけで2枚に分けることになってしまいそうやし。

結局、アコースティックバージョンも入って2枚組になってますけど(笑)。どこまで盛りだくさんにするんだっていう。

高橋
曲順もそうですけど、ただカップリングを集めましたっていうものじゃなくて、聴いてくれた人が“お!”って楽しめる何かを入れたかったんですよね。アコースティックは全部同じようにやるとまったりしちゃってもったいないから、曲の良さがより伝わるようにシチュエーションやアレンジを変えたり。でも、ゆる~く雰囲気あるものにはしたかったので、とにかく楽しく。
福岡
2テイクくらいやな、どれも。「ツマサキ」を外で録ったのがちょっと大変だったくらい。途中で救急車のサイレンの音が入ってしまったり。
高橋
あの時は5回くらいやった(笑)。車もゴーゴー通ってて、マスタリングエンジニアの人に“ホントに大丈夫ですか? こんなに音大きくしていいんですか?”とか言われて。
福岡
“みんな、迷惑だと思いますよ”みたいな(笑)。

ハハハ。個人的には「恋愛スピリッツ」のアコースティックが新鮮で特に良かったです。さて、じゃあ2010年の目標などを。

橋本
“2010年”ってすごくキリがいいけど、私は“2010年にとどまらない”っていうのを目標にします。

その心は?

橋本
“2010年はこう”みたいな区切りを作らない。2010年から2011年の切り替わりも分からんぐらい、やっていきたい。
福岡
デカいな(笑)。でも、ホンマこの先はやること全部楽しんでいきたいですね。大変なことは出てくるし、難しいこともあると思うけど、自分たちが選んだことを後悔したくないし。
高橋
5年目だからこそできること、分かってきたこともあると思うから、取捨選択も楽しんで、今しかできんことをやりたいな。
チャットモンチー プロフィール

2000年徳島で結成。2005年メジャーデビュー。2006年リリースのSG.「シャングリラ」がヒット。2007年リリースの2nd AL.『生命力』に続き、09年リリースの 3rd AL.『告白』は、オリコン初登場 2位を記録。2008年には、初の日本武道館公演を開催。メジャーデビューから2年4か月での日本武道館2days公演は、女性ロックバンドとしては史上最短(※当時)で、現在のロックシーンを 代表するバンドへと成長を遂げる。2011年にDr.高橋久美子の脱退により、橋本、福岡の2ピース体制となる。2014年には、サポートメンバーを迎えた体制での活動を発表し、6th AL.『共鳴』を15年にリリース。そしてデビュー10周年の日本武道館公演を行い、2016年には郷里徳島で主催フェスを2daysで初開催。大成功を収めた。最新作は、シングル『Magical Fiction』(2017年4月リリース)。デュオ“橋本絵莉子波多野裕文”(橋本)やユニット“くもゆき”(福岡)での活動、CM歌唱(橋本)や徳島での多目的スペースOLUYOの運営(福岡)など、それぞれ多彩な活動を行っている。2017年11月23日、2018年7月をもって活動を「完結」させる事を発表した。チャットモンチー オフィシャルHP

OKMusic編集部

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