新曲をライヴレコーディングし、それに手を加えて収録する。そんな特殊なスタイルで制作されたニューアルバム『Watercolor』とは?
取材:石田博嗣

先日行なわれた『Connectivity'10 “Sessions with Candle JUNE”』の感想からうかがいたいのですが。

最高の空間でした。Candle JUNEさんに飾られたステージ、素晴らしいバンドの演奏、そしてお客さんの雰囲気と、ホントに気持ち良かったです。Candle JUNEさんにはステージ自体を演出していくという、今までにない表現方法で参加していただいたんですけど、あのステージは普段とは違う何かとても神聖な場所に感じたし…人の想いを感じるんですよ、肌に。大変貴重な体験をさせてもらいました。

ニューアルバム『Watercolor』はスタジオ録音だけで制作されているのではなく、その『Connectivity'10~』でライヴレコーディングした新曲が収録されているわけですが、なぜそういうことをしようと?

最初はミニアルバムの予定で、全部スタジオ録音という話だったんですよ。でも、このライヴをすることが決まった時に何曲か曲ができたので、“この曲にライヴの雰囲気を入れたら、また面白いんじゃないか”ってことで、ライヴテイクを基に再構築した新曲を収録することにしたんです。やっぱり、スタジオ録音とライヴでは演奏する側の気持ちは決定的に違うんですよ。スタジオ録音はより正確な演奏でのグルーブを求めるのに対して、ライヴでは細かいズレよりも、会場と一体となったより大きなグルーブが楽曲の良さを引き出す感じなんです。それが今回はこの曲には合っているかなと思いましたね。

最初からテーマ性のあるものを作ろうとしたということですか? アルバムタイトルもライヴの前に決まっていたということは、それだけ完成図が見えていたというか。

テーマ性というよりは、最近エコロジーとか自然保護とかに少し興味を持っていて、水というものに関しても興味を持ったところからスタートしてるんですよ。水って人間にとって欠かせないものじゃないですか。それと同じように僕にとって音楽も欠かせないものなんです。水の色が天気や時間、場所、見る人によって刻々と変わるように、音楽も変わっていく。透明な水に色を付けていくように、透明な音楽にいろいろな人が色付けしていく。そんな作品にしたくて、このタイトルを付けたんですね。だからこそ、ライヴテイクを使った楽曲も収録したんですよ。

そのライヴテイクも、そのまま収録するのではなく、コーラスを被せたりと手が加えられてますからね。

より完成されたものにしたかったんですよ。実はライヴの直後にスタッフに言ったんで、“えっ!?”っていうリアクションをされましたけど(笑)。通常はレコーディングで何度も何度も聴き、いろんな楽器を重ねて完成形になっていくわけですが、今回は一発録りみたいなわけですから、後から“もっとこの音を足したい”とか、そういう欲求が生まれてくるんですよ。もちろん、シンプルなままでいい場合もありますけど。ただ、基はライヴのテイクなので、その場の雰囲気は確実に入っているわけです。なので、聴き比べてもらえれば分かると思いますよ。

今までの作品とは、少し違ったアルバムになりましね。

インディーズの頃はライヴで最初に楽曲を披露し、その楽曲がお客さんとともに成長し、作品となっていたから、いわば音楽活動の原点に戻れた感じですね。バンドメンバーを含め、お客さんにも直接的に制作にかかわってもらっているので、その意味でも今までとは大きく違いますね。いろんな人の想いが入っているアルバムが出来上がったと思います。
INORAN プロフィール

イノラン:国内にとどまらず、世界に活動の場を拡げるLUNA SEAのギタリスト。1997年よりソロ活動を開始、現在迄にフルアルバム10枚以上をリリースする等精力的な活動を行なっている。LUNA SEA、ソロの他にもTourbillon、Muddy Apes等多岐に渡るプロジェクトで音楽活動を鋭意展開中。ソロ活動20周年を迎えた17年8月にセルフカバーベストアルバム『INTENSE/MELLOW』を、LUNA SEAが活動30周年を迎えた19年8月にはオリジナルフルアルバム『2019』を発表。そして、20年9月に『Libertine Dreams』、21年2月に『Between The World And Me』、同年10月に『ANY DAY NOW』と三部作となるアルバムをリリース。INORAN オフィシャルHP

OKMusic編集部

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