20周年を振り返って、スカパラというバンドが常に前向きに進んできた、その原動力とは何かをお聞かせください。

谷中
ひとりでも多くの人に聴いて知ってもらいたいと思う気持ちと、楽しいことを探す才能ですね。
茂木
お互いが楽しむことを競い合うライバルのようなもので、守りに入らない姿勢を貫いてきました。
加藤
メンバー各自が持つ、他のメンバーやスタッフ、ファンに対するリスペクトと、音楽をどこまでも探求し続ける真摯な姿勢だと思います。

茂木さんはスカパラに参加して10年経ちますが(正式メンバーとなってからは8年)、フィッシュマンズやスカパラを通して、ドラミングで最も大切にしてきたものは何ですか?

茂木
シンプルで力強い演奏アイディア。全体を見渡せるように、プレイヤー、リスナー、両方の耳を持つ。情熱と笑顔。

「KinouKyouAshita」ではヴォーカルもドラムも、クレッシェンドの仕方が詞の内容とぴったりシンクロしていますね。この曲のためのドラミングをかなり考えられたのではないですか?

茂木
リハーサルでリズム、アレンジをじっくり練りましたね。昨日・今日・明日という生活の中における心の揺れを演奏で表現できればと思いました。歌に関しても。冷静な平熱感~最大に高揚した気持ち(ダイナミクス)をできるだけ表現できればという思いでチャレンジしました。

今年もヨーロッパ・ツアーをされていましたが、そもそもヨーロッパでツアーをしようというアイディアは、バンドのどういう状況から出てきたものだったのですか?

谷中
デビューして3年くらいでフランスに行った時、フェスなどで好評を博していたので、また行こうと思ったんですよ。
茂木
自分たちの演奏・楽曲・ライブパフォーマンスは国境を越えていると思うし。
加藤
ヨーロッパツアーを再開した2000年は、アルバム『FULL-TENSION BEATERS』をリリースして、ライヴハウス中心のツアーを行なったり、ライヴバンドの原点に立ち返ろうという思いがあったと思いますね。

そのヨーロッパ・ツアーで得たものとは?

谷中
自分と自分たちのペース。態度と音楽の持つ可能性を信じることができました。
茂木
自信だったり、ハングリー精神だったり。人生や音楽に対する心が原点に戻りましたね。
加藤
日本とは違う過酷なツアーで、メンバーの信頼関係はそれまで以上に強くなったし、世界中のオーディエンスからもらったパワーで、バンドサウンドはより骨太になったと思います。

今年のヨーロッパ・ツアーのラスト、アムステルダムでは、観客も相当盛り上がっていましたが(YouTubeより)、今回、最も印象に残っているライヴは?

茂木
フランスはパリでのライブですね。会場全体の一体感が何とも美しかった。ライヴ後に、パリの街に雹(ひょう)が降ったのも印象的でした。
加藤
スイスのベルンの山頂で行なわれた『GURTEN FESTIVAL』。あいにくの雨でとにかく寒かった! にも関わらず、スカパラに大勢のお客さんが集まってくれたことと、OASIS登場時の会場全体の熱狂ぶりは、改めてワールドヒットのすごさを痛感させられました。

ヨーロッパ・ツアーに続いて、今年は初の主催イベント『Tokyo Ska Jamboree』がありましたね。

谷中
国内の新進スカバンドとアメリカのベテランスカバンドが一堂に会して暴れたり、和んだりの平和なフェスティバルでしたね。お客さんもスカマナーにあふれていました。
茂木
“主催”するという責任感は大きいものがありましたね。スカという音楽が人々にもたらす“幸せな気持ち”や“熱狂”だったりを、さらに多くの人たちに届けたい思いになりました。
加藤
出演者の方々、来てくれたみんなの愛情が直に伝わってきて、メンバー全員感動しました。出演者全員でのアンコールセッションは、自分の中でもここ何年かで特に印象に残る良いシーンでしたね。

日本でのスカの盛り上がりは、20年前、10年前、数年前と比べて、どうなっていると感じますか?

谷中
ほとんど変わらないとは思いますが、潜在的にスカを知っている人は大分増えたと思っています。ロックフェスが盛んになるにつれて、スカも必要とされてきたように思います。
茂木
演奏者がスカという音楽を大切にして取り組む限り、いつまでも人々の心を盛り上げ続けるはずです。
加藤
この20年で、スカというジャンルは、着実に日本に浸透してきてると思いますね。今後もいろんなバンドと一緒に、シーンを盛り上げていけたらいいなと思います。

精力的に活動をしているスカパラですが、ここ数年はアルバムリリースが続き、意外にもシングルをリリースするのは3年ぶりなんですよね。シングルのタイトルにもなっている「KinouKyouAshita」に込めた想いをお聞かせください。

谷中
“肩を抱いて逃げない自由 幸せをつくり出す”という一節がありますが、逃げるのが自由ではなく、逃げないで誰かと一緒に創る自由が本物だと思います。全てを背負って走る感覚で前を見るというイメージの歌です。
茂木
スカパラの昨日たち(20年間)に対する想いを、今日のスカパラで演奏し、明日(未来)へつなげる。たくさんの熱い気持ちが渦巻く様子を音で感じてもらえたら、とてもうれしいです。
加藤
今までと違う、新たなる“スカパラ歌モノ”が打ち出せたように思います。ライヴで演奏するのが今から楽しみです。

2曲目「Give Me Back My Ball」の詞に込めた思いは?

谷中
音楽とボールは平和をもたらすと信じてます。楽しいボールを独り占めしないで、それを使って仲良くするべきで、音楽も同じです。それができないならボールを返せ(笑)。

3曲目の「愛の讃歌」ですが、どんな経緯があって、この曲をカバーしようと思ったのですか?

加藤
メロディーのムードが、今のスカパラのムードに合っているように思ったので。

では、最後に今後の活動展開と意気込みをお願いします。

谷中
この時代にスカが人に勇気をもたらすことができるように精進して頑張ります。
茂木
曲作り、アレンジ、パフォーマンス、それぞれにおいて新しい発明をし続けたい。そして、みんながドキドキしたり、笑顔になったりしたらいいなと思います。
加藤
これからも日本の音楽シーンに、一石を投じられるような存在として活動していけるように頑張りたいです。
東京スカパラダイスオーケストラ プロフィール

トウキョウスカパラダイスオーケストラ:ジャマイカ生まれのスカという音楽をベースに、あらゆるジャンルの音楽を独自の解釈で飲み込み、自ら奏でるサウンドは"トーキョースカ"と称してオリジナルのスタイルを築き上げた日本が世界に誇る9人組スカバンド。1989年、アルバム『東京スカパラダイスオーケストラ』でデビュー。インストゥルメンタルバンドとしての確固たる地位を築くなか、 01年からはメンバーによる作曲、谷中敦(Baritone sax)による作詞でゲストヴォーカルを迎え入れる”歌モノ”に挑戦。さまざまなアーティストをゲストに迎え、センセーショナルなコラボレーションが常に話題となっている。デビュー以来、国内に留まることなく世界31カ国での公演を果たし、世界最大級の音楽フェスにも多数出演。19年にはメキシコ最大の音楽アワード『ラス・ルナス・デル・アウディトリオ』で、オルタナティブ部門のベストパフォーマンス賞を受賞。デビュー30周年イヤーを駆け抜け、21年3月にアルバム『SKA=ALMIGHTY』をリリースする。東京スカパラダイスオーケストラ オフィシャルHP

OKMusic編集部

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