取材:田中 大

勝手にしやがれ・武藤昭平のソロが始動

ギターサウンドで歌っている武藤さんが、すごく新鮮です。

ソロをやるにあたっては、勝手にしやがれでは聴けないサウンドで、ただのヴォーカリストとして自分を試してみたいっていうのがあったんです。それで思い付いたのが、ギターロックバンドだったんですよ。勝手にしやがれは7人もいるので、小回りが利かない。ファンの子が“あたしの町にも来てほしい”みたいにリクエストしてくれても、なかなか応えられない時があるんですね。“だったら、俺ひとりだと行けるんじゃないか?”ってところで、ソロをやるアイディアは始まったんですけど。そんな時に飲んでたら、ウエノくんが賛同してくれたんですね。“じゃあ、お前と一緒にやるよ!”と。その延長線上にソロ活動があるんです。いつの間にか気付いたら今回の面子になってました。気心は知れているので、いろんなことが早かったです。

このメンバーは本当にすごいですよ。

よく考えれば、ミッシェルのリズム隊なわけじゃないですか。そして、アイゴンまでもが参加してくれている。でも、そういうことを意識せずに、普通に友達でいられる間柄なのが良いですよ。例えば、ウエノくんもキュウちゃんも“ミッシェルのリズム隊”っていう意識はないと思いますよ。だから、飲み友達から始まった、必然のバンドのような感じがするなあ。

ドラムを叩かずに、ヴォーカルに専念しているっていうのは、ソロでのひとつのポイントですね。

やっぱりソロは“シンガーとしてしっかりやってみる”っていうものにしたかったですから。ドラムって世界観をかなり決めちゃうんですよ。どんな楽器編成だろうが、その人がドラムを叩けば、その人の楽曲になる。楽曲ってドラムの音色で決まってしまうところがあるんです。だから、俺が作詞作曲をして、ドラムまで叩いてしまったら、勝手にしやがれとあまり変わらないものになる気がするんです。しかも、俺がプロデューサーとして責任を持って、いろんなことを言ったら、やっぱり俺の世界観が出てしまう。だから、今回はプロデュースをアイゴンに任せて、フレーズとかもみんなに任せました。なので、レコーディングが暇でした。“早く歌いてえ!”って感じで待っていて(笑)

(笑)。「至福の空~NO MUSIC , NO LIFE.~」はサウンドに清々しいヌケの良さがあるところが、勝手にしやがれとの大きな違いだと思うのですが。

勝手にしやがれのホーンセクションの良さを出そうとすると、夜とか秋冬みたいなものになっていく。たまには夏のイメージの曲も書くけど。だから、勝手にしやがれでは行かないところを集約してみた感じです。歌詞も、俺じゃ絶対に書かない歌詞を書いてみようと思いまして。それでYahoo!ミュージックの“歌詞のアクセスランキングTOP10”みたいなとこを見たんです。最近流行ってる歌詞を見ながら、よく使われるタイプの言葉を羅列してみて、それを組み直しながら書いたんですよ。“その言葉を使って、俺の思想みたいなことを表現できるかな?”みたいなこともチャレンジでした。だから“空”とか“道”が歌詞に入っているんです。

いつも黒っぽい服を着ている人が、あえて白い服を着てみるような、そういうチャレンジの創作だったんですね。

いつもスーツを着ているのに、短パン履いてみよう!くらいの振り切れ方(笑)。勝手にしやがれのイメージで俺を見る人も多いだろうけど、そうじゃないところから入ってきてもらうのも良いだろうし。例えば、俺ってマイルス・デイビスが好きなんだろうなっていうようなレッテルで見られているかもしれないけど、それだけじゃない。だって、普通にラモーンズとかハノイ・ロックスも好きだから。俺のソロを聴くことで、今まで勝手にしやがれを聴かなかった人が聴くようになったら良いですね。俺はやっぱり勝手にしやがれを広げたいんですよ。

このCDはタワーレコードの“NO MUSIC, NO LIFE.”をテーマにアーティストが曲を書き下ろす企画の第1弾でもあるのですが。

実はもともとあった楽曲なんですけど、“NO MUSIC, NO LIFE.”と通じるものがあったんです。“至福の空”ってもの自体が空気みたいですけど、音楽っていうものも空気。空を見たり空気を感じるように、みんなと共有できるのが音楽。そういう点がこの曲と“NO MUSIC, NO LIFE.”のテーマにつながるなと。こういうふうに何かがカッチリとハマる縁って、巡ってくることがあるんですよね。俺もミュージシャンだから、音楽がないと自分の人生は分からない。音楽を辞めたら自分を保障できないですから。そういう俺が書いた曲だから、ピタッとハマったんだと思います。音楽を聴いて人にやさしくできたり、ハッピーになれることって実際にあるし。芸術に触れるのって、“いかに人間らしくなれるか?”ってことだと思うんです。そのためにも俺はいい曲を書いて、ちょっとでもみんなに感動を届けて、ちょっとでも人にやさしくできるようなものが作れたらいいなあと思ってます。

ところで、今後のソロ活動もこのメンバーなんですか?

それはないですね。みんな忙しいですから(笑)。勝手にしやがれのメンバーよりもスケジュールを合わせるのが大変。小回りが利く活動を求めたはずが、結局はそうならなかった(笑)。俺とウエノくんがやってる武藤昭平withウエノコウジの方がまだスケジュールが合うけど、それもなかなか大変ですからね。だから、基本は俺の弾き語りでフットワークを軽くして、あとはその時々でいろんなメンバーやスタイルでできたらいいなと思ってます。曲はどんどん作っていきたいんですけど、どういう形でやるのかは、まだ見えていないんですよ。今回はロックでしたけど、それ以外の俺の要素も出したいし。ジャズを歌ったり、ラテンをやっても面白いだろうし。できるならばいろんなことを試したいです。
武藤昭平 プロフィール

97年に日本が誇るジャズ・パンク・バンド、勝手にしやがれを結成。ギターレスであり、尚且つドラマーがヴォーカルを兼ねるという独特のスタイルが特徴の7人組だ。その中でリーダーであり、ドラムとヴォーカルを担当しているのが武藤昭平。

09年にはバンド活動だけでなく、ウエノコウジ(ex.thee michelle gun elephant)との弾き語りライヴを行うなど、ソロ活動も精力的に行い、10年2月に初のソロ1stアルバム『トゥーペア』をリリース。本作は、ライヴでの相棒としてお馴染みのウエノ以外にも、クハラカズユキ(The Birthday)、會田茂一、柏倉隆史(toe)、鈴木正人、大森はじめ(東京スカパラダイスオーケストラ)ら名うてのミュージシャンをはじめ、山崎まさよし、FPM、吾妻光良といった意外なメンツまでもが参加。多彩なコラボレーションによって彼の歌い手としての魅力が一層引き出された作品が誕生した。勝手にしやがれ オフィシャルサイト
公式サイト(アーティスト)

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着