取材:高木智史

リチャードへの挑戦状みたいな感じ

今作はShunpさんが先導をきって取り組まれたんですよね?

僕がやらしてもらいました。『COVER OF IT ALL』という邦楽のカバーアルバムを出して、その続編じゃないけど、なんかやりたいなとみんなと話してたんですよね。前にビートルズのカバーアルバムも出してるんですけど、そういう感じでみんなが知ってるものをやりたくてって探してみたら、カーペンターズかなと。日本人だったらほとんどの人が知ってるじゃないですか。

みんなが知ってるからだけじゃなくて、NICOTINEとして、Shunpさんとしてもカーペンターズの曲に惹かれていた部分もあったのですか?

惹かれていたというか、興味の持てる音楽ですよね。ずっと人の心に残っているカーペンターズの音楽にはそれだけで魔法があるというか。そんな曲を自分たちがどう昇華するかということにすごく意義があるなと。楽曲単体で言うと曲の美しさ…やっぱり曲がよくできてるんですよ。クラシックの要素、ポップスの要素、いろいろあって。だから、自然に耳に入ってくる曲だけど…カーペンターズをカバーするのは難しいんですよ。今回初めて楽譜を見たんですけど、“バカ野郎!”って思いましたね(笑)。あと、特にパンクバンドとして立体的に表現したいというのがあって、それを表現するにはカーペンターズがぴったりかなと思ったんですよ。

確かに。でも、難しいとはいえ、いろいろ音楽を打ち出してきた今のNICOTINEだからできるという自信もあったのでは?

ありましたね。Uも入ったし。Uのドラム自体が凝り固まってなく、すごく自由なんですよね。それこそジャズもメタルも2ビートも叩けるし。このアルバムではドラムが結構前面に出てますけど、それはヤツの頑張りですね(笑)

個人的にはHowieさんの低音のヴォーカル、コーラスがNICOTINEとしては新しくて惹かれてました。

高い声のイメージがありますからね。Howieさんはカレンのことをすごく研究していて、女性だけども低音で響かせる美しさというか…そこは意識していたと思うんです。コーラスは大変でしたね。全部身内でしたんですけど。『SING』では女性コーラスもあるんですけど、それも身内で。ファンの方は分かるかな(笑)

そういう原曲の良さを感じさせながらも、遊ぶところはすごく遊んでますよね。

リチャードへの挑戦状みたいな感じでやってましたからね。リチャードがそういうふうにアレンジしてるんやったら、俺はこうやるよ、NICOTINEだったらこういう音にするよっていう。『WE’VE ONLY JUST BEGUN』は最初、4つ打ちのダンスミュージックにしようと狙ってたんですけど、ジャズみたくなってますが。で、その音源をリチャード…いや、リチャードさんに(笑)送ってみたんですよ。そしたらお返事をいただきまして。“毎日音源を楽しく聴かせてもらってるよ。ありがとう”というものだったんで…“なんだよ。これ!?”みたいな酷評でももらえれば、それはそれでネタにしやすかったんですけどね(笑)

このカバーを経て、NICOTINEとしてまた一段階上がったという意識はやっぱりありますか?

うん、ありますね。結局やってることはパンクなんですけど、一般のパンクシーンにあるパンクの幅ってどんどん狭くなってるじゃないですか。ポップスみたくなってると思うし。今、パンクをやってるバンドマンに言葉で言うと、棘があることをこの音源で伝えられたら良いなと思ってます。
NICOTINE プロフィール

キャラこそ違うものの、ガーリック・ボーイズにも通じる円熟パワーを醸し出しているバンドだ。和製NOFXと騒がれていたのも、とうの昔、今やNicotineの名がブランドと化したメロコア界で、彼らをそんな安直なキャッチフレーズで呼ぶ者はいないだろう。緩急を活かしたハードエッジな音作り、アグレッシヴに展開するステージ・パフォーマンス、ストリート感がにじみ出たジャケット・ワーク——そのすべてが「メロコア」永遠のスタイルであり、それをいち早くシーンに呈示したグループのひとつが彼らだ。さらに、キメ&タメの効いたメロディ・ラインと、ボーイズ&ガールズを煽るHawieのワイルドなヴォーカルを武器に、Nicotineはオリジナルのカラーを確立した。それは、96年のデビュー・アルバム『Royal Mellow Day』から現在に至るまで貫き通されており、多くのリスナーを魅了し絶大な支持を得たのだ。
また、主宰する<Sky Records>には、スタック・インサイドやDONUT MANなど注目株のバンドが名を連ねており、レーベルの質の高さを窺がわせている。NICOTINE Website
NICOTINE レコード会社サイト

OKMusic編集部

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