text:石田博嗣

クラブビートとバンドグルーヴが融合し、トリップ度激高のトランスサウンドが生まれていた。流行のヒップホップでも、王道のロックンロールでも、ハイセンスなクラブミュージックでもなく、遠藤遼一の感性が創り出したENDSという名の音空間。饒舌なギター、重たいベース、タイトなドラム、浮遊感あるキーボードは交錯することで巨大な音の渦を発生させ、サウンドに体を預けながら、横ノリの心地良さに陶酔しているオーディエンスたちの意識を侵蝕していく。とはいえ、どんなにサウンドの毒性が増そうが、まず届いてくるのは歌だ。ラガスタイルで言葉を吐いたかと思えば、ハートフルに流麗な旋律を歌い上げる遠藤。そこにはメロディーの強さもあるのだろうが、やはり彼のヴォーカリストとしての力量を痛感する。フロントマンである絶対的な存在感はもちろん、艶気もあるエモーショナルな低音ヴォイスの魔力と、己の人生哲学が込められた歌詞のメッセージ性は絶大である。つまり、強固なバンドサウンドによるダイナミックなグルーヴが全身を刺激し、遠藤のヴォーカリゼーションで心を鷲掴みにするのだ。だからこそ、終演後には心地良い満足感と一緒に、ディープな音空間の余韻も噛み締めていた。
ends プロフィール

日本のデジタル・ミュージックに多大なる影響を与えたソフト・バレエのヴォーカルとして6年活動した後に、ソロ活動に転向した遠藤遼一=ends。96年に"THE ENDS"名義でシングル「蜘蛛と星」をリリースし、その後、活動名義をendsに変更し、ハイ・ペースで作品を発表し続けている。
ソフト・バレエ在籍時から孤高の文学性/哲学性を打ち出してきた遠藤だが、グループ在籍時が自己宇宙を探求するものだとすれば、ソロ活動以降は内的なすべてを解放するプリミティヴ志向に変換を遂げたといえるだろう。とにかく自己に降り積もる日々の垢や澱(おり)といったものを、強靭な肉体と精神力で一瞬にして吹き飛ばすような音楽性を誇る。
60'sサイケ・サウンドを基軸に、トライバル/ゴア・トランス的サウンドも加味した情熱ほとばしるライヴ・パフォーマンス——そこには、かつての華奢な文学青年風の趣きは一切なく、鍛え上げられた体躯はイギー・ポップやジム・モリソンを彷彿させるほどである。また詞世界も、タイトルを見ただけでも「反逆」「炎天」「オーイエイ!」「やぶれかぶれ」「俺をしぼりとれ」……と明らかに直情型のストレートなものへ——。インサイドからアウトサイドへとアプローチを雄々しく変換させたendsには、次に何が飛び出してくるかまったく想像がつかないおもしろさが充満している。また、婦女子を瞬時にして恍惚とさせる魅力の低音ヴォイスはさらに磨きがかけられ、威風堂々と健在である。公式サイト(アーティスト)

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