撮影:箭内史子/text:石田博嗣

1987年7月15日に初ライヴを行なったGargoyleが、その20年後の同日に横浜BLITZにてアニバーサリーライヴ『虹遊』を開催した。まず、オープニングアクトとして登場したのは、ANCHANG(V-o&Gu/SEX MACHINEGUNS )、白田“RUDY”一秀(Gu/ex.PRES-ENCE、ex.GRAND SLUM)、DEN(Ba/BY-SEXAL~ZIGZO~test-No)、YURAサマ(Dr/Psycho le Ce'mu~Dacco)によるスーパーセッションバンド。この豪華な面子でGargoyleのナンバーをカバーするというのだから、まさにスペシャルである。かつてのGargoyleと同じく映画『風の谷のナウシカ』の「ナウシカレクイエム」をSEに使用し、ファンの間でも人気の高い「神風ギャング団~自爆遊戯~」「完全な毒を要求する」「BALA 薔薇 VARA」を抜群のテクニックでもって披露すると、当然ながら会場は大いに盛り上がった。 スーパーセッションバンドが客席を温めた後は、いよいよGargo-yleの出番。いきなりステージを隠していた幕に、この日発売となるニューアルバム『刃~YAIBA~』のリード曲「ジェットタイガー」のPVが大迫力で映し出される。さらにPV終了後に幕が落ちると、般若の面をつけた紋付袴姿のメンバーが仁王立ちしており、“現在までただひたすら、自分に誠実にやりたいことだけをやってきた”といった内容の口上が始まった。通常のライヴでさえ趣向を凝らしたステージングで観る者を驚かせてきたバンドだけに、どんな仕掛けをしてくるかと期待していたのだが、20周年記念らしい演出はここまで。ふたりの女性コーラスが入り、多少の特殊効果はあったものの、だからと言って特別感はない。プレイリストも1stアルバムからの曲もあれば、ニューアルバムからの曲もあって新旧さまざまだが、それは普段のライヴでも同じこと。KATSUJIの爆裂サウンドを作り出す高速ハイパードラム、TOSHIのメロディックで重心の低いベース、KENTAROの泣きのフレーズから速弾きまでこなすギター、KIBAの天然ヴィヴラートのかかった野太く力強いヴォーカル。その4つの音が錯綜するアグレッシヴかつドラマチックなサウンドが客席を激しく攻めて立ていき、それを観客はヘッドバンキングやモッシュでもって応戦する。まさに、いつもの光景だ。本編ラストを初めて作った曲として知られる「邪悪」で締めくくったのだが、20周年記念を意識していたのは、この選曲ぐらいかもしれない。 ライヴ中、何度も“今日は「おめでとう」と言われるよりも「ありがとう」と伝えられるライヴにしたい”と語ったKIBA。そんな彼の言葉の中でも印象的だったのは、“僕らはやりたいことをやるので、期待を裏切ることはあるけど、信頼は裏切らない”というもの。ここに彼らが20年間やってこれた理由がある。やりたいことだけをやり続けるGargoyleと、そんな彼らを支持し続けるファンとの間に、絶対的な信頼関係が存在しているのだ。記念すべき20周年ライヴを普段通りにやったのも“裏切り”のひとつだったが、凝った演出などなくとも観客は熱く沸き、ライヴは大盛況に終わった。そういう意味では、実にGargoyleらしいアニバーサリーライヴだったと言えるだろう。
Gargoyle プロフィール

1987年結成、大阪出身のメタル・バンド。1989年6月に1stシングル「蠢」、同年10月には1stアルバム『禊』を発表。荒廃した世界観を表現した歌詞と骨太で荘厳なサウンド、また「ヴィジュアル系の先駆者」と称される派手なコスチュームで人気を博し、渋谷公会堂ワンマン・ライヴは度々ソールド・アウトを記録した。1993年4月、VIDEO『タントラ・マントラ』で<日本コロムビア>よりメジャー・デビュー。その翌月に4thアルバム『天論』を発売した他、11月にはロンドン公演を敢行。1995年5月発表のインディーズ時代の音源を収録したCD-BOX『異人伝』は予約のみで完売。ヴィジュアル系のインディーズバンドがこぞってメジャー進出する中、翌年6月にリリースしたベスト・アルバム『borderless』をもってインディーズ・シーンに復帰する。その後もコンスタントに作品をリリースし続け、2012年7月には結成25年を記念したセルフカバー・アルバム『虹融合』を発表。日本ハードロック・シーンの草分け的存在として、現在に至るまで精力的に作品制作、ライヴ活動を続けている。また、1998年12月大晦日、11年のキャリアで発表した全93曲を一夜で演奏する前代未聞のオールナイト・ライヴ『終わりのはじまり'98全曲制覇』を神戸チキンジョージにて開催したり、“Battle Gargoyle”と名乗って激しい楽曲のみで構成するライヴを行うなど、貪欲なまでに自分達が楽しめるライヴを展開していることも特筆すべきところだ。Gargoyle オフィシャルHP

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