復活のHER NAME IN BLOODに休止中の
思いと新譜を含めたこれからを直撃

日本を代表するラウド、メタルバンドとなりつつある彼らHER NAME IN BLOOD。さまざまなフェスにも出演し、その名前を多くの人が知るところになり、ヨーロッパツアーへも行くなど、更なる活躍が期待されていたところでの活動休止。そしてそこからの復活。短い期間に相当な経験をした彼らが、海外ツアーで感じたことや休止中に感じたこと、そして今後に向けての想いを話してくれた。
HER NAME IN BLOOD / Daiki(写真左)、Ikepy(写真右)
――今回は復活第一弾EPになりますね。まず活動休止前に初のヨーロッパツアーを回りましたよね。1ヶ月未満で8カ国21カ所ライヴという強行スケジュールでしたけど、やってみていかがでした?
Ikepy:初日から機材トラブルがあって、てんやわんやでした。
Daiki:Makotoが電圧を間違えて、ライヴハウスを停電させちゃって、機材を一つダメにしてスタートしました(笑)。 Ikepy タイムテーブルも遅れたし、初日のオランダはせわしなかったですね。
――波乱のスタートだったと。でも毎日が刺激的だったんじゃないですか?
Daiki:いや、ほんとそうですね。大きなところから小さな会場まで、小さいところはステージ上で動けないぐらいの狭さで・・・。
Ikepy:エスキモー・コールボーイがメインのツアーなので、彼らがフルセットをステージに置くと、その機材の前に自分たちの機材を置かなきゃいけないから。
――ああ、狭いステージがさらに狭くなると(笑)。
Daiki:はい、マジ狭くて。エスキモー・コールボーイはどんな狭いステージでもフルセットで、照明やCO2が出てくるお立ち台も必ず置きますからね(笑)。
――小さい会場だと、キャパはどれくらいですか?
Daiki:イギリスは200人とかそんな場所もありましたね。大きなところはクラブチッタ川崎ぐらいはあったかな。
――HER NAME IN BLOODを初めて観る人も多かったと思うんですが、観客の反応はどうでした?
Daiki:全体的には良かったですね。ずっと一番目でしたけど、最初は様子見みたいな感じで・・・。
Ikepy:最初はほんとに「何だ、こいつら?」って反応で(笑)。でもライヴ終盤になると、盛り上がってくれて。
Daiki:最後はみんな手をあげて、サークルピットもできてたし。終わったら、「おまえら最高だったぜ!」って、お酒をおごってくれたりして。それが毎日でした(笑)。
――ははは。海外の人はフランクですもんね。
Daiki:アニメ、ポケモンとか海外でも人気があるから、日本人というだけでチャホヤされて。
Ikepy:多分、日本のロックが好きな人も多いんだなと。
Daiki:「ありがとう」とか、結構日本語を喋れる人もいましたからね。
Ikepy:俺、日本語だけで会話した人がいたなあ(笑)。
HER NAME IN BLOOD / Daiki(写真左)、Ikepy(写真右)
――スケジュール的にはライヴ、移動の繰り返しだったと思いますが、その辺はどうでした?
Daiki:アメリカのパリセーズというバンドとツアーバスでほぼ一カ月間シェアしたんですよ。
Ikepy:それでなぜか俺のベッドの横のガラスがめっちゃ割れました。
――えっ!
Ikepy:多分、普通にドライバーがぶつけたんだと思うんですけど。そのドライバーがジョークで「おまえがパワーがあるから、やったんだろ?」とか言われて(笑)。
――はははは。
Daiki:あと、ツアーバスの中で「大」ができなくて。だから、ライヴハウスで済ませるとか、それは少し大変でしたね。
――海外のライヴハウスのトイレはひどいところは、便座がないですからね。
Daiki:ないところもありましたね。いろいろ大変でした。
――今回のツアー中で特に印象だった場所は?
Daiki:どこも印象的だったけど、俺はフランスのパリかな。そこまで大きなところではなかったけど、一番盛り上がってくれて。HER NAME IN BLOODのTシャツを着て、ずっと待ってた!みたいな人もいましたね。
Ikepy:温かかったですね。
Daiki:でもMakotoはパリでサイフをすられました(笑)。ポケットにサイフを入れて、外でバシャバシャ写真を撮ってる間にすられたみたいで。しかもMakotoは日本で使うカードとかも全部入れてたんで、それごと取られちゃって。フランスから電話して、カードをいろいろ止めてました(笑)。
――それは僕も経験があります(笑)。Ikepyはどこですか?
Ikepy:ドイツのブレーメンかな。何でこんなに盛り上がるんだろ?って。
Daiki:あと、ドイツ人は地元のビールに誇りを持ってて、「おまえら、これ飲んだことあるか?」って、車からダースごと持って来ましたからね(笑)。
――そんな楽しかった海外ツアーの後に・・・。
Daiki:まさかのブレイクダウンです。
HER NAME IN BLOOD /Ikepy
――ええ、Daikiくんのブログも読ませてもらいましたが、赤裸々に心境をつづってましたね。今は新ドラマーに21歳のMAKIさんを迎えて、動き始めたわけですけど。当時を振り返って思うことは?
Daiki:帰ってすぐだったので、突然過ぎてよくわからなくて。知らせを聞いて、事務所で緊急ミーティングを開きました。それから活動休止になったんですけど・・・よくわからない状態でしたね。
Ikepy:俺もよくわからなくて・・・動くにも動けないから、時間の経過を待つしかなくて。次にどうするかも決められなかったですね。
Daiki:休止中はメンバーとも会ってなかったし、基本自宅にいました。ぶっちゃけ、何も手がつかなかったです。ショックもでかかったし、いろんな人からも連絡が来るし、本当に暗闇の中にいるような感じでした。
――バンドとして動き始めたきっかけは?
Daiki:前のドラムと一緒にやるのは無理だから、新しいドラムを入れてやるのは早い段階で決まってましたね。
Ikepy:そこはすんなりですね。
Daiki:で、何人かのドラマーとスタジオに入ったんですよ。どの人もちゃんと曲は覚えてくれるんだけど、何か違うなと。で、ライヴハウスの人から若くていいドラマーがいるよ、と教えてもらって。久々にライヴハウスに観に行ったら、バリバリ叩いている彼(MAKI)がいて、この子は未来を感じるなと。ナンパして、喫茶店に呼び出して話したら、やってみたいと。スタジオで一緒に合わせても感触が良かったし・・・いかんせん、こういうドラムを叩ける人がいなかったですからね。しかも華があるドラマーが良かったんですよ。
――技術だけじゃなくて、視覚的にも映えるドラマーが良かった?
Daiki:はい。MAKIは見せることもすごく考えてて、「僕はただ叩くだけのドラマーにはなりたくない」と言っていたので、その考え方も俺らと一致しているなと。彼自身もHER NAME IN BLOODで叩いてほしいと言ったときに、「マジっすか!?」という反応だったから。MAKIもたくさんの人に自分のドラムプレイを見てほしい、という気持ちが強いドラマーだったので。
――MAKIさんはプレイ的にどんなドラマーなんですか?
Daiki:前のドラムはハチャメチャでトリッキーだったけど、MAKIはがっちりとした感じなんですよ。ドラムがしっかりしているから、逆にまたそれが難しくかったですね。ドラムが替わると、こんなに変わるんだって。
Ikepy:全体のノリが違うもんね。
Daiki:ブレもあまりないし、安定感がありますね。
Ikepy:そこに慣れるまでは時間がかかりました。
Daiki:俺らは安定してなかったんだなと(笑)。
――改めて気付かされたと?
Daiki:はい。いままでの曲も彼に覚えてもらうんですけど・・・何か違うなって。ここどう叩いていたかな?って、自分たちもドラムのことをよく考えるようになりました。結構、面倒臭いことをやっていたんだなと。
――そうなんですね。
Daiki:なので、MAKIらしさも出しつつ、一緒に考えながらやってます。
――ドッシリとしたドラムという意味では、今作にも通じるところもありますね。今回はどんな作品にしようと思ってました?
Daiki:全部シングルでいける曲を作ろうと。メンバー各々で曲を書いて・・・こういうことがあったからかわからないけど、どこか切ない曲が多いなと。
――ああ、言われてみれば。仄かな哀愁は出てますね。
Daiki:そうなんですよ、哀愁が漂っているなと。
――そうなったのはなぜだと思います?
Daiki:出ちゃったんでしょうね(笑)。
Ikepy:自然と出てきたのかなと。
――映画『全員死刑』エンディング曲に抜擢された「Answer」も、イントロから切ないですもんね。
Daiki:はい、ああいうテイストもあまりなかったから。デモは結構昔からあったんですよね。
――今作の中ではかなり古い曲ですか?
Ikepy:そうですね。しかも最初にその曲をレコーディングしましたからね。
――メタルというより、壮大なロックという雰囲気ですね。
Daiki:僕が作った曲なんですけど、歌をつけるのは時間がかかりましたね。今回試みたのは、歌のパターンをたくさん考えたんですよ。シャウトや歌メロとか、いろいろ試しました。
Ikepy:ひとつのサビに対して、何パターンか考えましたからね。
――それは前作『BAKEMONO』の頃にはやってなかった?
Daiki:前作でもやったけど、さらにいろいろ試そうと。ただ、アレンジはメンバー全員でやったので、そこは前とは違うかもしれない。今の歌より、もっといいものがあるかもしれないと考えて、そこを詰めていきました。
――なるほど。今作はすごく聴き応えがありました。前作は日本人らしさを意識した作風でしたが、今回は?
Daiki:そこまで意識してないですね。
Ikepy:この5人になって初めての音源だから。5曲ともパンチがあって、新しいHER NAME IN BLOODの名刺になるような作品にしようと。
HER NAME IN BLOOD / Daiki
――新しいHER NAME IN BLOODを象徴する曲というと?
Daiki:表題曲の「From The Ashes」じゃないですかね。いままでありそうでなかった曲調だし、新しいアプローチができたなと。
Ikepy:歌とギターでシンプルに攻める。それを自然にやった感じですね。
――あまりこねくり回さずに、正攻法で挑もうと?
Daiki:そうですね。メタル以外の音楽も聴くし。よく聴いてたのはバランス・アンド・コンポージャーですね。アンビエントっぽい音なんですけど。
Ikepy:歌詞は復活に対する思いを書いてます。それはMakotoが書いた歌詞なんですけどね。
――1曲目「Wasted」はミドルテンポで、どっしり攻めた曲調ですね。
Daiki:男臭い、土臭い、うねるような感じを意識しました。
――この曲はパンテラ・オマージュなのかなと(笑)。
Daiki:そうですか? 最近だと、サンズ・オブ・テキサスとか、ああいうノリは出てると思います。
Ikepy:アメリカンな雰囲気があるし、いままでになかったリズムですね。
Daiki:不協和音とか面白いこともやっているので、いい意味でちょっと変わった曲になったなと。
――ヘヴィにうねるグルーヴィーなリフは、パンテラの『脳殺』(メジャー3rdアルバム)収録曲「5 Minutes Alone」に似ているなと。
Daiki:大好きです!(笑)。それも出ちゃってるんでしょうね。TJもニューメタル、ヘヴィロックが好きだから、それも出ているのかなと。
――今作はスクリームぽいコーラスもかっこ良くて、前作よりもコーラス・パートは増えてませんか?
Daiki:増えました(笑)。掛け合うようなパートはハードコア感を出したくて。俺とMakotoは特にハードコアが好きだし、メタル作品だけど、ハードコア臭は残したいんですよ。
――これまで取材して、「ハードコア」という言葉はあまり出てこなかった印象があります。
Daiki:あまり言ってないっす(笑)。でも常にそれは意識してますね。
Ikepy:もともと自分たちがやってきたのはハードコア畑ですからね。根っこにそれがありますからね。
Daiki:メタルだけど、ハードコアの要素もちゃんと感じてもらいたくて。それは今回に限らず意識してますね。歌やシャウトの入れ方はハードコア・バンドを参考にしているから。どちらかというと、そっちの方が好きですね。有名どころだと、ヘイトブリードみたいにわかりやすくて力強いコーラスは影響を受けてますね。最近だと、スティック・トゥ・ユア・ガンズもすごく好きです。
――そう考えると、パンテラはメタル、ハードコアの両要素を感じさせますもんね。
Daiki:そうっすね。ああいう感じが理想ですね。 Ikepy あと、ラム・オブ・ゴッドもそうだよね。ハードコア色も感じるし、あのバランスは理想ですね。
――あと、3曲目「Super Loud」は従来のHER NAME IN BLOODらしい激しい曲ですね。
Ikepy:MAKIの良さも出したいと思ったから、ドラムは派手なフレーズが多いと思います。
Daiki:彼はスラッシュ・メタル・バンドで叩いていたから、速い曲の方が得意なんですよ。彼の力も発揮できる曲を作ろうと。
――これは僕の空耳かもしれませんが、曲の中で「浪速節だ!」と言ってます?
一同:はははははは。
Ikepy:シンガロングのところですね、多分。
Daiki:その気持ちはわかるかもしれないです。でも言ってないです(笑)。
――「BAKEMONO」と同じく、日本語を入れてきたなと思ってました。
Daiki:空耳ですね(笑)。
Ikepy:ウチは関西の人いないですからね。
――ですよね。だから余計に謎でした(笑)。
Daiki:「Let it out Push it up」の部分ですね。あっ、確かにそういう風に聴こえるかも。ウチらの曲は空耳がちょいちょいあるんですよ。『BEAST MODE』収録の「STICKS AND STONES」の最後で「ドスケベサイレンス」と叫んでいるところがあって(笑)。それは結構ほかの人にも言われました。
――今作の楽曲がライヴでどう響くのか、レコ発ツアーも楽しみにしてます。
Ikepy&Daiki:ありがとうございました!
最新のリリックビデオ「SUPER LOUD」はコチラ
取材・文=荒金良介  撮影=三輪斉史
リリース情報
FROM THE ASHES
FROM THE ASHES / HER NAME IN BLOOD
1. Wasted
2. Calling
3. Super Loud
4. From The Ashes
5. Answer
2017.05.17 RELEASE / ¥1,490 (Tax in) / WPCL-12642
ライブ情報
HER NAME IN BLOODのライブ・ツアー情報は
こちらまで http://www.hernameinblood.com/schedule/

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