ドラマ『僕たちがやりました』× 〈
origami PRODUCTIONS〉 特別座談会
「テレビ・ドラマ × 音楽レーベル」
という異例のコラボが実現した『僕た
ちがやりました』 その裏側とミュー
ジシャンの可能性に迫る!

実写化困難といわれた衝撃作にして累計120万部突破の大ヒット・コミックの実写版TVドラマ『僕たちがやりました』(関西テレビ・フジテレビ系 火曜よる9時〜)は、放送開始から早一ヶ月半、その衝撃的なストーリーや過激な描写、窪田正孝、永野芽郁、新田真剣佑を中心とした若手キャストの大胆な起用などにより、SNSを中心に若い世代から大きな人気を集めている。
また、本ドラマは劇伴をShingo Suzuki、mabanua、関口シンゴ、Kan Sano、Hiro-a-key、Michael Kanekoといった〈origami PRODUCTIONS〉所属アーティストが手掛けたことでも大きな話題を呼ぶことに。レーベルと連ドラがタッグを組むというのは、今までにない新しい試みである。音楽と物語が密接に絡み合った名作映画『Trainspotting(トレインスポッティング)』、『Pulp Fictionn(パルプ・フィクション)』、『Snatch(スナッチ)』のような、”音楽でストーリーを引っ張る”名作ドラマの誕生と言っても過言ではないだろう。その証拠に、SNSでも毎回放送される度に音楽についての言及も多く、視聴者に大きな印象を与えているようである。
今回Spincoasterではそのコラボレーションの実態と、「ドラマ × ミュージシャン(レーベル)」の新しい可能性を探るべく、番組プロデューサーの米田孝(カンテレ)、平部隆明(ホリプロ)、〈origami PRODUCTIONS〉代表の対馬芳昭、所属アーティストの関口シンゴ、Hiro-a-keyの5名を招き、座談会を敢行。ドラマ制作の裏話やアーティストと企業の取り組みについて大いに語ってもらった。
これからクライマックスに向かうドラマはもちろん、9月6日(水)リリースとなる『「僕たちがやりました」オリジナルサウンドトラック』と合わせて本稿を読むことで、ドラマと音楽、それぞれの楽しみ方がより一層深まるはずだ。
Interview by Kohei Nojima
Photo by Takazumi Hosaka
―まず、テレビ・ドラマの劇伴が決まる、基本的な流れを教えて頂けますでしょうか。
米田:いわゆる劇伴を多く手がける作曲家さんがいらっしゃるので、通常のケースだと仕事の中でこれまでに付き合いのある方の中で作品のイメージに合う方にお願いしたり、一視聴者として音楽が印象的だったドラマの劇伴を担当されている方を調べて、その方にオファーしたりすることがほとんどですね。有名な方ですと菅野祐悟さんや高見優さんとか。
―なるほど。では今回、音楽プロダクションである〈origami PRODUCTIONS〉にオファーをした経緯を教えてください。
平部:そういう作曲家の方々もリストアップはさせて頂いていたのですが、ドラマの内容も斬新ですし、出演者も新しく、若い役者さんが中心なので、音楽的にも尖ったものにしたいという想いが生まれてきたんです。個人的にorigamiさんの音楽が好きだったということもあり、試しに米田さんに聴いてもらって。そしたら「これはおもしろい!」ということで、今回オファーをさせて頂きました。
―〈origami PRODUCTIONS〉は、これまでにも企業のお仕事は色々とされていましたが、ドラマの劇伴を手がけるのは初めてですよね。
対馬:そうですね。単曲で依頼を頂いたことはありますが、ドラマ全部を手がけるのは初めてですね。最初にお話を頂いた時は、候補のプロダクションが他に2つあるとおっしゃっていたんですけど、その2つともウチと割とテイストが似ているというか、そう遠くない界隈にいる人たちだったんですよ。ただ、ウチは所属アーティストのバランスもいいので、ウチに決まってくれればいいなーて、祈っていました(笑)。
―実際に〈origami PRODUCTIONS〉が劇伴を担当することに決まり、楽曲を制作するまでの流れをお伺いしたいのですが、アーティストのみなさんはどういった情報を基に曲作りをするのでしょうか?
平部:主に我々ふたりに加え、さらに監督と選曲の小西さんという方がいて。この4人でディスカッションしながら進めていくのですが、最初は「こんな感じ」っていう本当にざっくりとしたイメージだけをミュージシャンの方にお伝えしました。ただ、この作品は原作のマンガがあるので、もちろんそれも読んで頂いて。あとはプロットや台本をお見せするっていう感じですかね。
米田:シーンとざっくりとしたイメージが書いてあるリストを最初に作りましたよね。
平部:「笑い」とか「コミカル」、「悲しみ」といった劇伴としては一般的なものや、今回だと「ヤバ高」とか「マル」とか、そういったワードをリスト化してみて。そうすると30曲から40曲くらいになったので、それをお渡しして。
―対馬さんはそのリストを基に、各アーティストに担当を振り分けていったのでしょうか?
対馬:そうですね。まず1アーティストでやるのかプロダクション全体でやるのかっていうところもあったのですが、このドラマは本当に色々なシーンがあるので、みんなのそれぞれの強みを活かせるんじゃないかなと思い、今回はプロダクション全体でお受けすることにしました。これはたまたまですが、ウチのアーティストは得意とする楽器がそれぞれ違うんですよね。ベーシスト、ギタリスト、ドラマー、キーボーディスト、シンガーと。なので、これは分担したほうがカラフルでおもしろいものになるなと思ったので、みんなでやってみようと。それぞれの適性を考えながら番組スタッフの皆さんと相談して、担当を割り振りました。
―曲を作っていく中で、苦労したポイントなどは?
関口:自分のソロの曲はゆるい曲が多いので、そういうテーマの曲は割とすんなりとできました。ただ、今回僕はドラマのメイン・テーマを制作させてもらったんですけど、あれは苦労しましたね。このドラマって展開がすごく激しいし内容も複雑じゃないですか? 青春だけど、ただ明るいだけじゃなくて犯罪モノやサスペンス的な、追われるっていう強い要素もあったので、いつもはあまり使わないようなアイディアと自分の世界観をなんとかひとつにまとめたいなという想いがありました。苦労はしましたが、楽しかったですね。
Hiro-a-key:具体的に指示を出してくれるパターンもあったのが良かったですね。CMの仕事だともっと抽象的な依頼が多いんですけど、今回は具体的に「もっと不協和音にして欲しい」とか、「sus4(コード)にして欲しい」とか、分かりやすかったなと思います。
―実際に映像に当て込んでから、音楽の方を修正することはありましたか?
米田:今回は当ててからはなかったですね。
平部:映画はピクチャーロック(映像の編集が完了)してからそこに合わせて音楽を作ることが多いので、演出に完全に合わせることができるのですが、連ドラの場合は頂いたものを全10話かけて使い回すので、最初からある程度柔軟に対応できる形で作ってもらうことが多いです。途中で追加のお願いをすることはありますが。
米田:自分の中では連ドラは生き物なんですよね。最初の打ち合わせはクランクインする前なので、ドラマの物語も作っていく過程だったりします。撮影が進む中で企画当初から形が変わって行きますし、お芝居や監督のやり方を見ることで気づくことも沢山あります。それによって欲しいものも変わっていくんですよね。逆に頂いている音源で「そういう感じできたか!」っていうのもあって、今回もやり取りをしていく中で色々と変化はありましたね。例えば、飯室という刑事に付けたいと思っていた曲が、実際には全然違う形で活かされていたりとか、やっていきながら臨機応変に試行錯誤していくっていうのが連ドラの個性なのかなと思います。
平部:途中で若干方向転換して「メイン・テーマのバリエーションを増やして欲しい」となったんですよね。今回は劇伴をレコーディング・アーティストにやっていただくので、洋画の『Guardians of the Galaxy(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー)』みたいに既存の洋楽のような強力な音楽をドンドン入れて行きたいと思っていたんですが、作っていくうちに「何かが足りないな」ということになり。普通、連ドラはひとりの作曲家が全ての曲を作るので、メイン・テーマを軸にアップテンポだったりバラードだったりバリエーションを作るんですが、今回はそういう方針から当初はお願いしていなかったんです。ただ、いざ届いたメイン・テーマがとてもよかったので、やっぱりこれでバリエーションを作ってもらったほうがいいという話になって。結果、メイン・テーマがかなり軸になりましたね。
米田:めちゃ使ってますね。
平部:心情曲はほぼそれで。センチメンタルなやつとか「悲しさ」とか、「ちょっと幸せな感じ」とかはメイン・テーマのバリエーションですね。新城監督のリクエストだったのですが、それがあったからこそ、他の曲も引き立ったと思います。
米田:使っていくうちに、ドラマの個性とマッチしていくというか。僕らもお茶の間も耳が慣れてくると思うんで。メイン・テーマのバージョン違いの方が登場人物の心情を表現するのに相応しいんですよね。
平部:最初はmabanuaさんのぶっ飛んだ曲がたくさん送られてきて(笑)。元々はそういう極端な感じを狙っていたんですが、そういうのばっかりだと攻めすぎかなと思いまして、方向修正をしていきました。
米田:そうですね。そもそもこのドラマは、時代が変わりゆく中で、テレビもチャレンジをしていかなければいけない、今までと同じことをやっていてもダメだという想いが企画の根幹にありました。なので、今回は「連ドラっていう世界とorigamiのアーティストさんという、普段決して隣にはいない者同士を混ぜたらどうなるんだろう?」というチャレンジでもあって。かなり試行錯誤ではあったのですが、僕はメイン・テーマが送られてきた時に「あ、これはいける!」と思いましたね。
平部:このドラマにはマルっていう仲間のお金を盗む一番クズなキャラクターがいるんですが、mabanuaさんの曲は大体そこに当てていますね(笑)。ケチャ(インドネシアのバリ島で行われる音楽劇/民俗芸能)風に始まるめちゃくちゃな曲なんですがなぜかハマるんですよね。お金をバーっと使ってアドレナリンが出まくっている時の音楽としては最高だなと。(M18.「desire」)
―対馬さんはいかがでしょう? 制作を進めていく中で、特に印象に残ったことがあれば教えてください。
対馬:最初に音楽を担当している小西さんから、ステム(パート毎に分解された音源形式)で納品して欲しいと言われて。というのも、「シーンによってはドラムだけ使う場合もある」ということで、ひとつの束となった2mix音源を使うというよりは、尺もパートも柔軟にエディットできるようにしたいと。なので、僕らも最終的にどう使われるかは結構分からないままだったんです。だからOAがすごく楽しみでしたね。小西さんには劇伴について色々と教えて頂きました。例えば「高校生のドラマにはジャズは似合わない。なぜなら殆どの高校生はジャズなんて演奏できないから。それよりもギターのスリー・コードの方がハマる」とか、「外のシーンだったらアコギのような室外で演奏できる楽器の方ががハマる」とか、そういうセオリーもレクチャーして頂きました。ただ、今回は劇伴作家を使わないということで、敢えてそういうセオリーからは少し外れた違和感を狙っていたということもキャッチしていたので、僕らもアーティストに頼む時に、要望やイメージに対してど真ん中のものもあれば、敢えてちょっと外したものもあって。「関口がこれをやれば、おもしろい違和感が生まれるんじゃないかな?」というような狙いもありました。なので本人たちは苦労したと思うんですが、結果楽しかったっていうのはそういうことなのかなと。ドラマ製作者のみなさんもチャレンジされてましたし、僕らにとっても大きなチャレンジだったので、そこで今までにないものが出来上がったのかなというのはありますね。
―関口さんとHiro-a-keyさんは、実際に制作していく中で、特に印象に残った楽曲などはありますか?
関口:僕の場合はやっぱりメイン・テーマですかね。(M01.「The theme of Bokuyari」)4分くらいと少し長めの尺で、4ブロックに分かれた組曲っぽい構成になっているんですけど、その中で喜怒哀楽とかドラマの要素をひとつにまとめあげるのが大変でした。あと、メイン・テーマのピアノ・バージョンですね。(M21.「The theme of Bokuyari (Piano ver.)」)僕はギタリストなので、ピアノで繊細に表現するこということがあまりなかったので、相当頑張りましたね。3日間ぐらいはあの曲にかかりっぱなしでした(笑)。でも、すごくいい経験になりましたし、ドラマでたくさん使って頂いている曲なので、努力が報われて嬉しいです。
―やはり映像と合わさって観ると、グッと来ますか?
関口:ものすごくグッときますね(笑)。
Hiro-a-key:僕の作った曲の中で、途中でトライアングルが鳴る曲があるんですけど(M17.「Jungle Whisper」)、緊張感高まるシーンの中でチーンって鳴ってお笑いっぽく落とされるシーンとかがあって。「あ、こんな使い方してくれるんだ!」って感動しましたね。
平部:Hiro-a-keyさんのその曲は、前半と後半で曲調が違うんでかなり使っていますね。最初はセクシーなシーン用に作ってもらったんですが、割とコミカルなシーンでも使わせてもらうことが多くて。
関口:どのシーンもそうなんですけど、音楽があまりにも映像とマッチしているので、自分の作った曲に気づけないこともあるんですよね。「あ。これよく聴いたら自分の曲だ!」みたいな(笑)。
―ちなみにドラマの中ではEd Sheeranの「Shape of You」が大事な場面で使われていますが。既存の曲はこの一曲だけですよね。
米田:既存の曲は使い所が難しいんですよね。歌もあって、元々強い個性を持っているものを当てるということなので、下手したらセリフや内容を邪魔するし、上手くいかないこともあったりします。今回はたまたまEd Sheeranの曲をご提案頂いたということもあったのですが、やっぱり若い子たちに反応して欲しいなっていう狙いがあって。賭けに近いものもありましたが、話題性や音楽性という部分では申し分ないですし、今回のドラマに関しては「とりあえずやってみたらいいんじゃない?」という精神だったので。結果的にはとてもいい感じにハマりましたし、Edの曲が流れたらTwitterでもバーっと湧くし(笑)。さらにドラマをおもしろくしてくれたんじゃないかなって思いますね。
―権利的な面からすると、既存の曲はやはり使い易いのでしょうか。
平部:放送上はそうですね。ただ、パッケージや配信だとまた権利の関係上難しくなるので、今回に関して言えばそこがShingo Suzukiさんが手がけた楽曲(「M3.Countless Luv」)に差し替わっています。
米田:洋楽は特にそうですね。二次利用の際は色々と調整が必要になるケースが多いです。
―ドラマからは少し離れた話題になるのですが、〈origami PRODUCTIONS〉では今回に限らずテレビ系のCMや企業案件のお仕事も色々とやられていますが、普段のどのような活動がそういった外部発注のお仕事に結びついていると思いますか?
対馬:僕は元々広告代理店に務めていて。その会社はもう倒産してしまったんですけど、その当時の300人くらいの元同僚が、今も色々なところで活躍しているんですね。僕は代理店を辞めた後はメジャー・レーベルに務めていたんですけど、メジャーを辞めて〈origami PRODUCTIONS〉を立ち上げて、ミュージシャンをサポートしようってなった時に、どうやって生きていこうかということをすごく考えました。彼らはもちろん自分たちの作品も出すんですけど、例えば他のアーティストのプロデュースだったりツアーのサポート、あとはバンマスをやったりとか、彼らがやれる仕事と時代のニーズっていうものは常に探っていました。
対馬:そういう中で、やっぱりインストって映像にハマりがいいんですよね。なので、元々代理店にいた仲間や、その延長で知り合った方々には「僕らこういう音楽やっていますよ。こういうことができますよ」っていう話はしていて。何かひとつ決まると、またそれを見てくれた人がオファーしてくれてっていう流れもありました。なので、営業もあるしオファーを頂くこともあるしっていう感じですかね。またこの先彼らがやっている音楽とマッチするものが、映像じゃない形になってくればきっとそこに行くだろうし、そこは時代に応じて柔軟にっていう感覚ですかね。
―関口さんやHiro-a-keyさんは、アーティストとしてのご自身の活動もあると思うのですが、そういったプロデュースとか企業案件のお仕事とのバランスはどのように考えていますか?
関口:やっぱりバランスなんですよね。僕は2年前に自分のアルバムをリリースしたんですけど、3年もかけて作っていたんですよ。そこから全国ツアーをやらせてもらったりすると、結構(自分の中の音楽を)出し切った状態になるんですよね。なので、そこにサポートとか企業のお仕事、プロデュースとかの外部仕事をやらせてもらえると、新たに自分を開拓してくれるんです。「今度はこういうことやってみたいな」とか、自分だけじゃ得られない刺激がいっぱいあって。もちろんそれが仕事になって生活に繋がっていくということもありますけど、そういう仕事をやっていくと、次はまた自分の100%の作品を作りたいという気持ちが溜まってくるので。そういういいバランスで続けていけたらなって思いますね。
―収入面のバランスという意味ではいかがでしょうか?
対馬:そこは多分なんとも言えなくて。例えばCDとかの作品って10枚しか売れない人もいれば10万枚売れる人もいるわけじゃないですか。結局収入源みたいな話でいうと、CDって無限の可能性もあるし、赤字の可能性もあるんですよね。なのですごく難しいんですよ。ただ、僕らがすごく大事にしているのは、今回みたいなお仕事ってお金がどうこうというよりも、僕らが普段自分たちで発信するところとは全く違う世界まで広げてくれるっていうことで。やっぱり電波に乗るっていうことはすごい波及力なので、僕らでは届かない人たちに一気に知ってもらえる。下手したら海外まで飛んでいく。作品をCDで売る、界隈の人たちがライブを観にきてくれるっていうのも大事なんですけど、やっぱりメディアに乗るっていうのはちょっと桁違いなプロモーションになりますね。なので、収入というよりは、そっちの方が大きいかもしれないですね。
―若いアーティストでスキルや才能や器用さはあるけど、なかなか食べていけないアーティストってたくさんいると思うんです。そういうアーティストに企業やテレビから仕事が入ってきて、それで生活しながら音楽活動ができるという流れができればいいなと、個人的には思っているのですが、今後そういう仕組みや流れが確立することは難しいことだと思いますか?
対馬:難しいか簡単かと言われたら、たぶん難しいことだと思います。簡単なことって逆にないじゃないですか。例えば映像の世界でも監督になって続けていけるのは一握りの人ですよね。プロ野球選手だってどれだけ体力があってどれだけセンスがあっても、戦いの中で残っていくのは極一部だし。やっぱりそこはシビアな世界だと思います。でも、だからこそのおもしろさでもあるんじゃないかなと思いますね。やっぱり長く続けていくのが一番大変なことですからね。途中でスランプもあるだろうし、そこでヘコたれてしまうってことも多いだろうし、逆にそこまでにいかずに終わってしまう人も多いと思うので。
―テレビ制作側からすると、若いアーティストに劇伴を任せたほうがコストを抑えられるのではないでしょうか。
米田:でも、そういうのは巡り合わせなんですよね。システマティックにそういう仕組みができれば確かに美しいなって思うんですけど、なかなかそういうことを確立していくのは難しくて。僕自身がorigamiさんとご一緒させて頂くということ当初は想像もしてなかったですし。今回は偶然平部さんと一緒にやることになって、平部さんが対馬さんと繋がっていて、という流れがあって、その結果として『僕たちがやりました』とorigamiのアーティストさんたちがこんなにもマッチして。こういうのは色々な網の目がマッチしていかないと難しいことなんだなと思います。音楽は自分たちの畑じゃないので、どう想像を超えてもらえるかが肝であったりもするので、やっぱりいい出逢いがあるかどうか、ということになってくるのかなと思いますね。
平部:僕は趣味でライブにも行くので、極力色々なところでそういう繋がりを作っていきたいとは思っています。これまでにもそんな流れでJazztronikやソイル(SOIL & “PIMP” SESSIONS)、大橋トリオさんたちと一緒に仕事させてもらっていて。
今回はライブを観てすごくいいなと思って、彼らなら絶対できるだろうと、完全に飛び込みで声をかけました。特に今回はorigamiさん所属のアーティストが手がけるという、初めての試み自体が魅力でもあったので。普段は違うところにいるけど、きっと彼らならこのドラマをいい方向に引っ張ってくれると思ったので、強く推薦しました。スタッフのみなさんも一発で気に入ってくれたから、彼らの音の説得力を感じました。ちょっとさっきの質問の答えになっているかわからないんですけど、若いアーティストさんたちがこうして機会を掴むのは、難しいけどチャンスはあると思います。
―音楽活動を続けていればチャンスは巡ってくるかもしれないと。
平部:そうですね。どんどん色んな人と会って、色んな人に自分たちの音楽を聴いてもらうのがいいと思います。
米田:結局、楽曲の力なんですよ。僕らが「ハマった!」と思ったのもそうだし、お茶の間の方に「このドラマ、音楽もカッコいいな」って言ってもらえるのは、当たり前なんですけど音楽の力なんですよね。システムとか巡り合わせとか色々なことがありますけど、やっぱりアーティストさんの力なんだなと思いますね。
新聞の試写欄みたいなところに、記者が事前に完パケしたドラマを見て結構シビアな感想を書くという欄があるんですよ。我々としてはどう書かれるのか、毎回結構ドキドキして見るんですね。で、この『僕やり』の感想が載った時、「音楽も洗練されている」みたいなことを、小さいスペースの中に書いてくれてたんですよ。こんな小さいスペースで音楽のことにまで触れられることなんてほとんどないことなので、そこはありがたかったですね。ちょっと脱線しちゃいましたけど。
―それはやはりこの取り組みがすごくいい化学反応を起こしていることを裏付けていますよね。
米田:そうですね。こういう形で発露してよかったなと思いますね。
平部:コラボですからね。音楽があってドラマがあって、どちらかだけではできないですから。
対馬:さっき、関口が「僕はギタリストだけど今回ピアノに挑戦した」って言っていましたが、ウチのアーティストってそうやって自分の仕事の範疇を越えていくパターンが多いんですよね。音楽だけに言えたことじゃないと思うんですけど、これからの社会ってひとりひとりが多才になっていかなきゃいけない時代だと思っていて。昔はそれぞれ専門の仕事というものがあったんですが、今の時代はパソコンやスマホ一台あれば何でもできてしまう。だからこそミュージシャンも多才さを必要とされるんですよね。なので、今回みたいにギタリストにピアノを弾いてもらうっていうのは有意義な仕事だったと思います。
ウチは予算がないという理由もあって、ミックスも自分で、レコーディングのマイキングも、コーラスも自分で、なんならアルバムのジャケットも自分でデザインして、みたいな。そういう無茶振りから始まっているんですよね(笑)。
そういう無茶振りをこなしていく中で、だんだんPro Tools(DTMソフト)が使えるようになったり、ミックスができるようになったり、いちギタリストの枠を越えていく、みたいな。そうなった状態でまたギターを持つと、新しいものが見えてくるんじゃないかなとも思います。
関口:CDショップに置く看板も自分たちで切って作りましたからね(笑)。
対馬:それがインディなので、才能があればどんどん広がっていく世界だと思います。
―なるほど。ちなみにHiro-a-keyさんは今回の仕事を通して枠の広がりを感じましたか?
Hiro-a-key:僕は普段はシンガーなんですけど、今回はラップを書いたり(3.「Countless Luv feat. Nenashi」)もしたので、今後はラップものにも挑戦したいなと思いました。あとは参考資料で送って頂いたセクシーな音楽にサックスが入っていて。実は僕、小中高とサックスをちょっとやっていたので、今回は久しぶりに引っ張り出して吹いてみたんです。そういう部分でもミュージシャンとしての幅を広げてもらったなって思いますね。
―ありがとうございます。では、最後に物語もクライマックスに差し掛かってきましたが、今後の観どころ、聴きどころなどがあれば教えて下さい。
米田:ドラマは終盤に向けて展開のスピードがさらに上がっていきます。このドラマの個性は、バカバカしいこととシリアスなことの振り幅が広いところで、それを音楽が彩ってくれているなと思うんです。そういうことを感じてもらいながら、実は最後ドキッとさせられるテーマを突きつけるつもりで作っているので、そこへ向かっていく様子を見守って頂ければなって思います。
【リリース情報】

V.A. 『「僕たちがやりました」オリジナルサウンドトラック』

Release Date:2017.09.06 (Wed.)
Label:origami PRODUCTIONS
Cat.No.:OPCA-1033
Price:2,700 + Tax
Track List:
※origami PRODUCTIONS(Shingo Suzuki、mabanua、関口シンゴ、Kan Sano、Hiro-a-key、Michael Kaneko
■ドラマ『僕たちがやりました』 オフィシャル・サイト:https://www.ktv.jp/bokuyari/index.html

Spincoaster

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