【D】
『D TOUR 2017「Dark fairy tale」』
2017年8月29日 at 赤坂BLITZ
やはり、このバンドのバランス感覚は面白い。いや、“面白い”ではなく、“絶妙”と言い換えてもいいだろうし、場合によっては“奇妙”と言い換えられるかもしれない。6月にリリースされたシングル「Dark fairy tale」を受けての全国ツアー、そのファイナル。今作のキーワードは“妖精”ということで、それに合わせたかたちで、ステージ上には花と蝶があしらわれた。いずれもだいぶ大振りで、客席から観るメンバーがちょうど妖精のサイズに感じられるようなステージ演出だ。艶やかなコスチュームに身を包んだ5人はまさしく妖精に扮しているのだが、だからと言ってそこで繰り広げられたのは演劇でもミュージカルでもなく、当然の如く、バンドのライヴなのであった。MCで“幻想的な世界に酔いしれよう”と言いつつも、例えばサイケデリックな音でそれを醸し出すのではなく、基本的にはハード、ヘヴィなバンドサウンドで攻め、ところどころ“Oi!Oi!”とオーディエンスを煽る。また、決してフランクすぎるお喋りがあるわけではないが、この日が誕生日のASAGI(Vo)がメンバーから祝福される場面があったり、Ruiza(Gu)の物販紹介があったり、曲間には文字通りのライヴ感もあった。観た目はとてもシアトリカルな印象なのだが、音は極めて剥き出し、そしてメンバーは本人のキャラクターを隠さない。ギャップと言えば言えるが、でも、それこそがDのライヴの本質であり、彼らの魅力なのだ。“今、自分が生きていることを実感させてもらっている”とASAGIは言ったが、それはライヴバンドなればこその台詞なのであった。
撮影:TAKUYA ORITA/取材:帆苅智之
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