L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)

L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)

【GLIM SPANKY インタビュー】
ポピュラリティーとマニアックさが
いい具合に混ざり合った

“ロックでしか鳴らせない凄み”を鋭角的に突き付けてくる表題曲「愚か者たち」。そして、最新型の世界観の「In the air」に、名ポップソングのカバー「I Feel The Earth Move」。新作はルーツを見せつつ新たな方向性を提示し、ロックの醍醐味を堪能させてくれる作品集だ。

「愚か者たち」、もうイントロを聴いた瞬間にしびれました!

亀本
最初はなかったんですよ、あのイントロ。でも、映画『不能犯』の関係者の方から“始まり方をもっと刺激的にしてほしい”というリクエストがあって。で、いろいろ考えているうちレミさんが…
松尾
トイレで手を洗っていたら、あのイントロが降ってきました(笑)。この曲は前アルバム『BIZARRE CARNIVAL』を作る前にレコーディングを終えていたんですけど、その時に私、The Byrdsにはまっていたんで、これは完全にThe Byrdsからインスピレーションを受けたフレーズなんです。66年から67年あたりのアルバムに入っているようなフレーズというか。それをあえてこういうハードな曲に付けたらどうなるんだろう?と思って12弦ギターで実験してみたら意外にはまって。The Byrdsのサイケデリックなイメージと、怪しくてハードでダーティーなサウンドが結び付いたという感じですね。ポピュラリティーとマニアックさがいい具合に混ざり合って、そこにさらに棘をいっぱい生やしてこういう曲になりました。
亀本
ハードなサウンドですけど、サビはキャッチーなコード進行で聴きやすくなっています。で、そのサビ前に違う展開に持っていこうということで、普段はあまりやらないBメロを入れて、サビも2段構成にして。
松尾
そのサビもバックのサウンドはシンプルで武骨なのに、メロディーはちゃんとメロディアスにって。それがポップさとロックさが共存して成り立っているポイントだと思います。

映画の余韻とはまたちょっと違う世界の余韻を感じられそう。

松尾
結構攻めているので。しかも、最後は“お前ならさぁどうする?”って終わるから、また考えさせられるふうにとらえてもらえたら、それはそれで面白いかなって思ってます。

答えはくれてないですからね。《右か左か》って問われているけど、右と左に何があるのかすら分からないし。

松尾
そうなんですよ。だから、いろんなシーンで誰が聴いても、誰でも当てはまるというか。

個人的には2番サビの《嫉妬なんか醜いよ》が刺さりました。

松尾
そこはレコーディング当日にできたんです。最初は違う言葉だったんですけど、ここで何を歌うかっていうのは重要だと思って、歌入れぎりぎりでこの歌詞にしました。この歌詞は第三者が言っているので、聴いた人が自分に問いかけられているふうに受け止められる…自分の感情で“私は嫉妬している”みたいな歌詞にすると聴き手が感情移入できない気がしたので、そういうところでドキッとできるものにしたくて、この表現を選びました。

サビは巻き舌を使って、やさぐれた歌い方をされていますね。

松尾
この曲はやさぐれました(笑)。特にサビはめちゃめちゃ歪ませて歌っています。

先ほど“棘”という話がありましたが、ギターソロはまさに引っかき傷を負わせるような感じを受けました。

亀本
ギターソロはBlack Sabbathです(笑)。「War Pigs」みたいなのをやりたくて。僕の得意分野ですし。
松尾
主演の松坂桃李さんのファンも耳にする曲になるんですけど、そういう曲でとんでもない音を鳴らすのが面白いかなと思います。

そして、「In the air」は表題曲と対照的な浮遊感のある曲で。

松尾
これは一番新しい曲なんです。ベースが打ち込みでドラムは生なんですけど、できるだけ感情をなくして叩いてもらって。かつ、ドラムは全然違うパターンを混ぜたり。いろんな遊びをしながら作りました。歌もサビはどれが主旋律か分からない…それは浮遊感を出すためにわざとやっているんですけど。あえてメロディーをぼやかして、漂う自分の気持ちを歌っています。
亀本
こういうサウンドを僕はずっとやりたかったので、やっとできて楽しいなーと思ってました(笑)。僕、ガシャガシャ鳴っているだけのギターがすごく嫌なんです。コードをバーン!と弾いて…弾き語りだったらいいんですけど、バンドに混ざるとただの“シャーッ”になるじゃないですか。それが嫌というか、やかましくて。で、自分が好きなロックってどうだったっけ?って考えたら、THE BEATLESは“シャーッ”ってやってないし、ジミー・ペイジもやってないし、ジミ・ヘンドリックスもコードを鳴らしながら歌ってない。だから、情報量を少なくして、威圧的な音で場を埋め尽くすような音作りは避けました。
松尾
無駄な“シャーッ”は排除する…という感じですね。
亀本
GLIM SPANKYが『BIZARRE CARNIVAL』を作って、次にどういう音を、音楽を作っていくのかっていうのをちゃんと見せられる曲になって良かったなと思います。
松尾
1曲目がハードなロック、2曲目が今の気分。すごい振り幅を見せられて楽しいなと思っているんですけど、3曲目にキャロル・キングのカバーがあることで、ちゃんと筋も通るというか。だから、シングルというよりは、ミニミニミニアルバムくらいの作り込みはしたかなと思っています(笑)。

その3曲目の「I Feel The Earth Move」はGLIM SPANKYが料理するとこうなるんだなと。原曲はピアノメインですからね。

亀本
ピアノをギターに置き換えてやるのがいいだろうと。なので、“ギターでやるんだったら”ということを考えてアレンジをしていきました。
松尾
あと、70年代前半から後半にかけてのTHE ROLLING STONES…ちょっとディスコ感を出してきた頃のストーンズ的な踊れる感じをイメージしたので、ただ単に“時代に関係なく新しいものにしちゃおう”じゃなくて、ちゃんとオリジナルの当時の時代性とそのもうちょっと先のサウンドも取り入れつつ現代につなげたので、すごく満足しています。

そして、ついに日本武道館ライヴが決まりました!

松尾
私たちは武道館を目標にしてきたわけではなかったので…本当に純粋に好き勝手にロックをやっていながらも武道館に立てるっていうのはすごく誇りに思います。ちゃんとロックがロックのまま武道館でできる、ちゃんとロックバンドとしてやる、というのが楽しみです。もちろんTHE BEATLESへの想いもあるので、日本のロックの歴史が動いた場所でできることも楽しみながら噛み締めたいと思います。
亀本
頑張ります!

取材:竹内美保

シングル「愚か者たち」2018年1月31日発売 Virgin Music
    • TYCT-30072
    • ¥1,300(税抜)

『GLIM SPANKY LIVE AT 日本武道館』

5/12(土) 東京・日本武道館

GLIM SPANKY プロフィール

グリム・スパンキー:⾧野県出身の男女二人組ロックユニット。ハスキーでオンリーワンな松尾レミの歌声と、ブルージーで情感深く鳴らす亀本寛貴のギターが特徴。特に60~70 年代の音楽やファッション、アート等のカルチャーに影響を受けており、それらをルーツに持ちながら唯一無二なサウンドを鳴らしている。2007 年結成、14 年メジャーデビュー。18 年に日本武道館ワンマンライヴを成功させ、同年開催の『FUJI ROCK FESTIVAL』GREEN STAGEに出演。ドラマや映画、アニメなどの主題歌を多数手掛けている。最近ではももいろクローバーZ や上白石萌音、DISH//、野宮真貴、バーチャル・シンガーの花譜など、幅広いジャンルで他アーティストへの楽曲提供も行なっている。GLIM SPANKY オフィシャルHP

L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)
シングル「愚か者たち」

OKMusic編集部

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