空前のヒットを記録した劇場版サウンドトラック「THE END OF EVANGELION」

空前のヒットを記録した劇場版サウンドトラック「THE END OF EVANGELION」

クラシック×アニメの意味と可能性を
更新した旧劇場版サウンドトラック
【エヴァンゲリオン サウンド・クロ
ニクル <弐>】後編

エヴァンゲリオン旧劇場版楽曲の中からヴォーカル曲について検証した前編に引き続き、後編では作品とともに大ヒットしたサウンドトラックの中から劇伴についても語らねばなるまい。

登場キャラクターによる弦楽四重奏の演奏という体裁をとりながら、それぞれのキャラクターにまつわる名シーンを振り返っていくという作りが印象的だった「DEATH編」。その音楽は、TVシリーズの総集・再構成という作品の性質もあってか、場面場面を彩る楽曲としての魅力以上に、全体としての構成美が際立つ仕上がりとなっている。鷺巣詩郎による劇伴はもちろん、既存のクラシック楽曲も要所要所で効果的に用いられ、それらの合間に「チェロ—第四弦 調弦」「ヴァイオリン—第二弦 調弦」「ヴィオラ—第三弦 調弦」「未了への、調律」といったサウンドがインタールード的に挿入され、映画のエンディングとなる「Kanon D-dur」へと導かれていく。サントラ盤『EVANGELION:DEATH』の方でもそんな本編に近い形での楽曲収録がなされており、まるで映画を追体験するかのように楽しめるのが嬉しい。また同盤には、畳み掛ける映像とセリフの応酬で観る者を釘付けにした、あの劇場版予告編使用曲「Dies irae [REQUIEM]」が収録されている点も見逃せない。
『THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に』においてもクラシック楽曲は重要なポジションを占めており、「Air」では「II Air [ORCHESTRAL SUITE No.3 in D Major, BWV.1068]」を、「まごころを、君に」では「Jesus bleibet meine Freude [Herz und Mund und Tat und LebenBWV.147]/主よ、人の望みの喜びよ」をそれぞれ聴くことができる。これら名曲の旋律は、シーンと密接に関わりあいながら、作品をよりドラマチックに、かつ奥深いものへと昇華させている。そして、エヴァの完結編を謳うこの作品では、鷺巣詩郎による劇伴が抜群の冴えをみせている点にも注目したい。中でも、アスカの復活劇を華麗に飾った「偽りの、再生」、クライマックスを壮大に盛り上げた「閉塞の拡大」は絶品の一言! まさしく劇場版ならではの迫力とスケール感でストーリーに華を添えている。

最後に、劇場版に関連する音楽アイテムとして、アルバム『NEON GENESIS EVANGELION ADDITION』についても記しておきたい。『DEATH & REBIRTH シト新生』公開の約3ヶ月前にリリースされたこのアルバムには、ミサト(CV:三石琴乃)、レイ(CV:林原めぐみ)、アスカ(CV:宮村優子)のヴォーカルによる「残酷な天使のテーゼ〈Director's Edit.Version II〉」をはじめ、コミカルな内容に爆笑を禁じえない「ドラマ『終局の続き』(仮題)」、TVシリーズで使用されたクラシック楽曲や激レアなヴォーカルナンバーの数々、ミサト、レイ、アスカによる劇場版予告などが収録されている。劇場版はおろか、TVシリーズにおいても中盤にさしかかるあたりからコミカルな要素とは無縁になっていくエヴァ。今にして思えば、このアルバムの存在はある意味で救いになっていたのかもしれない…。

テーマソング、挿入歌、クラシック、そして劇伴。エヴァを取り巻く音楽たちは、いずれも強烈な個性を放ち、主張しているにも関わらず、不思議と違和感なく共存ができている。それだけシーンにとって必要不可欠な存在であり、その結びつきもまた強固であるということなのだろう。そしてそれは、アニメ制作スタッフ、音楽制作スタッフたちによる、情熱と努力の成せるわざであるということも忘れてはならない。(text by center)

OKMusic編集部

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