高橋 優
『世界で一番読まれたい手紙』
- 第14回 僕のペ・ドゥナさんへ -

拝啓 『空気人形』を演じてくれてどうもありがとう。ダッチワイフに心が宿るというなんと もセンセーショナルな設定の映画でダッチワイフ役を演じる女優さんは果たして誰なのか?

それがこの映画の存在を最初に知ったときに僕が抱いた一番の疑問であり期待でもありま した。てっきり国内の新人さんなんだとばかり思っていた僕の目に飛び込んできたのがあ なたの名前でした。

失礼ながらプライベートは勿論のこと、他のメディアに登場するあなたを一切僕は拝見し たことがないので、あの映画の中における一体どこまでが演技で、どこまでが実際のあなた に通ずる仕草なのか全く分かりません。

しかしあの作品においてあなたは背筋が凍るほどに無機質で、その中でボンヤリと宿って しまった‘人の心’を見事に表現しておりました。そこに、僕は圧倒されたのです「。物」だっ たものが「人」の言語や文化をぎこちなく真似する演技にクスクスと笑いがこぼれ、映画の クライマックスである純一とのベットシーンでのあなたの演技に対しては、自分でもどう 名前をつけていいのか分からない感情と涙が止めどなく溢れました。


いつか実際にお会い出来たその日には、僕の「空気」という曲を是非ともあなたに聴いてい ただきたいのです。 敬具


あなたへの一文字・・・「粧」