高橋 優
『世界で一番読まれたい手紙』
- 第27回 僕のキャメロン・ディアス
さんへ -

拝啓 『私の中のあなた』に出演してくれてどうもありがとう。

これまでの僕の、あなたに対するイメージは『メリーに首ったけ』や『ホリディ』などで見受けられ る、どこかイケイケで、プリプリとしたビューティーブロンド的なものが強くありました。それ が、『私の中のあなた』を拝見して一変しました。

本編の長さが2時間弱もあったのかと時計を疑ってしまうほどあっという間に終わった、という のが率直な僕の感想でした。それほど物語に惹き込まれ、魅入ってしまっていたのだなと我なが ら驚きました。物語の展開は勿論のこと、魅入ってしまった大きな理由の一つには、あなたが演じた、アナやケイトの母親「サラ」の存在が非常に大きかったように思います。これまでのあなたの イメージは、あなたの演技によって根底から覆されたのです。三人の子と夫を前に本気で笑い、泣 きじゃくり、怒り、苦悩する、家族における一人の女性という存在を、見事に演じておられました。

本編において突きつけられた問題、それに対する行為が果たして正しかったのか、それとも間違 いだったのか。そこのところを、あなたが演じたサラが物凄く良い意味で曖昧にしてくれたよう に思います。

これほどまでに人間臭く、格好悪く、それでいて誰よりも逞しい女性をあなたが演じてくれたこ とによって、見終わったあとの僕の瞼は随分と腫れぼったくなりました。

いつかお会い出来ましたその際には、是非とも、あなたのパフォーマンスに対する思いの丈を聴 かせていただきたいのです。 敬具

あなたへの一文字・・・「賀」