高橋 優
『世界で一番読まれたい手紙』
- 第29回 僕の渡辺 明棋士へ -
拝啓 『渡辺 明の詰将棋 中級編』のアプリを世に送り出してくれてどうもありがとう。小学生時 代、コレと言った趣味も特技も無かった僕が、父からの影響でなんとなく始めたもの、それが将棋 でした。一局終える度にその盤の奥深さやスリルに魅了され、毎晩家で父と指すところから最終 的には折り畳みの簡易式の盤をいつも持ち歩き、近所の将棋大会に出場してしまうほど好きにな りました。現在も尚、大切な趣味として携帯アプリで楽しんでおります。
そんな先日、全国ツアーの移動の車中で、おもむろにバンドメンバーの一人が僕に携帯を差し出 してきました。画面を覗いてみると、あなたの詰将棋アプリの盤面がありました。「この問題がど うしても解けなくて、もう三日経つねん。答えが気になって夜も眠れへん..」と、ため息混じりに メンバーは言いました。じゃあ一緒に解こうと軽い気持ちで挑戦してはみたものの、これが本当 に難しい。いつも笑い声の絶えない車内が一変し、重い沈黙に包まれました。降参して解答を見て しまうのはボタンひとつですぐ出来るのだけれど、どうしても自分たちの力だけで解きたくて、 およそ40分間、静寂の戦いを繰り広げました。難しい上にライブ後の移動ということもあって疲 労感にも苛まれ、もう諦めようかと思ったそのとき、何処からともなくやってきた閃きに導かれ て、正解することが出来ました。そのときの感動ったらありませんでした。やり遂げた達成感、その意外な詰め方への鳥肌、そして僕以上に喜んでくれたメンバーの顔。
あなたがこの詰将棋のアプリを作ってくれたおかげで、僕らはまるで小学生のときのような無邪 気で真っ直ぐな感動に、あの夜浸ることが出来たのです。あの喜びは忘れることが出来ず、そして また挑戦したくなる中毒性をも含んでおります。
いつかお会いできましたそのときには、是非ともあなたから直々に詰将棋の問題 を出題していただきたいのです。 敬具
あなたへの一文字・・・「閃」
そんな先日、全国ツアーの移動の車中で、おもむろにバンドメンバーの一人が僕に携帯を差し出 してきました。画面を覗いてみると、あなたの詰将棋アプリの盤面がありました。「この問題がど うしても解けなくて、もう三日経つねん。答えが気になって夜も眠れへん..」と、ため息混じりに メンバーは言いました。じゃあ一緒に解こうと軽い気持ちで挑戦してはみたものの、これが本当 に難しい。いつも笑い声の絶えない車内が一変し、重い沈黙に包まれました。降参して解答を見て しまうのはボタンひとつですぐ出来るのだけれど、どうしても自分たちの力だけで解きたくて、 およそ40分間、静寂の戦いを繰り広げました。難しい上にライブ後の移動ということもあって疲 労感にも苛まれ、もう諦めようかと思ったそのとき、何処からともなくやってきた閃きに導かれ て、正解することが出来ました。そのときの感動ったらありませんでした。やり遂げた達成感、その意外な詰め方への鳥肌、そして僕以上に喜んでくれたメンバーの顔。
あなたがこの詰将棋のアプリを作ってくれたおかげで、僕らはまるで小学生のときのような無邪 気で真っ直ぐな感動に、あの夜浸ることが出来たのです。あの喜びは忘れることが出来ず、そして また挑戦したくなる中毒性をも含んでおります。
いつかお会いできましたそのときには、是非ともあなたから直々に詰将棋の問題 を出題していただきたいのです。 敬具
あなたへの一文字・・・「閃」