『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の“映画の指輪のつくり方”』

『みねこ美根の
“映画の指輪のつくり方”』
- 第一回 -
「イノセント・ガーデン」の指輪

2017年から本格的に活動を開始したシンガーソングライター〈みねこ美根〉が大好きな映画の世界から作り出す紙粘土細工と指輪の制作過程をお見せします。ミニチュア好きな方、アクセサリーづくりに興味のある方は是非見ていってください。指輪はライブ会場にて展示しております。

動画監督・撮影・編集・演奏:みねこ美根

「変態にさせられる映画」(2013年「イノセント・ガーデン(Stoker)」)

「あ、これはやばいものを見始めてしまったかもしれない。」
冒頭の数分でそう思った。主人公の少女インディア(ミア・ワシコウスカ)が足の裏にできたまめを潰すシーン。ぎゃあ。自分もやったことはあるけれども改めて見せられる気持ち悪さに、好奇心と勢いで単身飛び込んだ映画館は、途端に居心地の悪いものになった。

 2013年公開のパク・チャヌク監督作品「イノセント・ガーデン」。宣伝ビジュアルが非常に美しかったことから、映画館で見ようと決めた映画だった。当時高校2年生だった私は、映画の予告を手当たり次第に見ることにハマっていた。そんな中見つけたこの作品の、アダルトでサスペンスホラー的で陰鬱とした雰囲気に、大変引き込まれた。それまで誰かと一緒でしか映画館に行ったことがなく、一人で映画館で見た映画は劇場版「コドモ警察」だけだった私は、次なる単身映画館鑑賞のための作品を見つけ出したのである。

 「大人へと成長していく人間の姿ほど、恐ろしくて、官能的なものはないんだなぁ…」当時、見終えた後、そんなことを考えながら、清掃員に追い出されるまで、チケット売り場で呆然としながらシナモン味のチュロスを食べていたことだけ覚えている。

 大人の女性へと狂気とともに変化していく主人公の姿、暴力的な描写は、最初こそ居心地が悪いが、次第に、身近なもののような、他人事ではないような気がしてきてしまう、目が離せなくなるのだ。
 物語は父親を事故で亡くすところから始まる。唯一の理解者を失った娘インディアは鋭敏な感覚を持ち、母親とは分かり合えずにいた。そこへ、父親の弟であるチャーリーが突然現れる。家政婦、大叔母が姿を消し、事の真相が明かされていくのと同時にインディアにも変化が現れる…というミステリアスなあらすじだ。

 とにかく音の使い方がすごかった。こんなにも音で印象が変化するのかと、驚いた。

 普段、食べる音、咀嚼するときの音を聞いて、「官能的だ!」と思う人間はなかなかいないだろう。食事となると、しょっちゅうそんなことを考えなくてはいけなくなって大変だからだ。生活ができない。だがしかし、中盤ででてくる、主人公がアイスを食べるシーン。どうして、アイスを食べるシーンで、少女の危うさを表現できるのか!それだけではない。卵を割る音、○○が折れる音、足音、呼吸の息遣い、なにもかもが、ささやかに、でも確かに響いているのだ。鋭すぎる感覚を持つ主人公とともに見る世界。現実的なのにファンタジー、生々しい日常的な「音」たちは、見終えた後も、私たちにしつこく響いてくる。それだけ、音へ、感覚へアンテナを張ることを強要されるこの作品は、少なくとも私を数日間、生活騒音変態にさせた。本当に困った。

 私は、このスリリングな映画体験に味をしめ、このころから映画館に一人で行くことが増えた。この作品の主題歌を勝手に作ったりもした。作ってみたものの、イマイチな出来だったのでお蔵入りにしていたが、思い出したこの機会に手直ししてみようかと思う。しかし、いったい誰が聞いてくれよう。その日までに、お客様を増やすのだ。さあ、頑張ろう。
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指輪: モチーフ…プレゼント箱、アイスクリームの箱、メトロノーム、黄色の傘
    音楽…「Duet」Philip Glass (オルゴールver. cover)
みねこ美根 プロフィール

ミネコミネ:6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2019年1月リリースの配信EP『心火を従えて愈々』で楽曲のクオリティの高さ、世界観が注目を集め始める。5月にはサウンドプロデューサーの小名川高弘氏と2017年秋から続いている制作作業のなか生まれている楽曲から第二弾「数式」「悲鳴」を発表。みねこ美根 オフィシャルHP

OKMusic編集部

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