【Homecomings インタビュー】
映画『リズと青い鳥』との幸福な関係
京都在住の男女4人組、Homecomingsが映画『リズと青い鳥』の主題歌「Songbirds」をシングルとしてリリース。自信作になったと語る畳野彩加(Vo&Gu)の言葉からは、映画とバンドの相性がすこぶる良かったことがうかがえる。
今回のシングルは『リズと青い鳥』の主題歌として書き下ろした「Songbirds」をはじめ、カップリングの2曲も含めた全3曲で、Homecomingsがもともと持っていたアコースティックな魅力を改めて印象付けるものになりましたね。
「Songbirds」はとてもいい曲ができたと自分たちでも満足しています。苦労せずにポーン!とできた曲なのに、今のHomecomingsのモードというか、やりたいことが1曲の中にまとまっている感じがして、かなりの自信作になりました。山田尚子監督の言っていることと私たちが常に意識しているもの…ちょっとした寂しさみたいなものが共通していたんです。曲を作る前に監督と打合せをして、どういう曲を作ったらいいかという話をした時に同じような考えを持っていらして、共感できるポイントがたくさんあったからこそ、ちゃんといい曲になったという感じはあります。
山田監督からのご指名だったそうですね。
もともと聴いていただいていたみたいで。逆にメンバーみんな、山田さんがシリーズ演出を担当されていたTVアニメ『響け!ユーフォニアム』を観て知っていたんですよ。だから、話が早かった(笑)。“あの山田監督の新作の主題歌!?”って、びっくりで。かなり嬉しかったです。
「Songbirds」はどんなふうに作っていったのですか?
Homecomingsってこれまで全曲が英語なんですけど、今回は主題歌だから日本語もありかなって考えていたら、監督から“今まで通りやってください”と言ってもらえて一瞬で気が楽になりました。そこからは早かったですね。みんなでスタジオに入って、4時間ぐらいでバー!っと。本当に今まで通りのギターポップのど真ん中という感じで、あとは『リズと青い鳥』に相応しい色合いとか、春らしい感じとか、そういったイメージを膨らませて。聴きながら風通しがいいというか、温かいというか、春に聴きたい曲という方向性が固まっていたので、そっちに向かっていくだけで良かったんです。
でも、ちょっと寂しいところもあって。
そうですね。切なさも足していって。もともとそういうのが好きなんです。マイナー調の曲というわけではなく、普通にいい曲の中でも“ここのコード、ちょっと泣ける”とか、“ここの歌詞がグッとくる”とか、そういうものがもともとメンバーの共通点として軸にあるから、自然にそうなるのかな。ちょっとした切なさ…っていうか、グッとくるものへの執着は他のバンドよりもあるという自信はあって(笑)、それを推していきたい。それがHomecomingsの特徴というか、特技でもあるんです。
そんな魅力もある一方で、演奏そのものはギターポップのど真ん中とおっしゃったようにキラキラしたものになっていて。曲としての聴きどころはどんなところだと?
うーん、全部いいんですよね(笑)。面白いアイデアとしては、曲が始まる前にメトロノームを入れてみました。聴きどころとしては、それがひとつあります。でも、ギターもめっちゃいいし、アルペジオもすごくキラキラと響きわたっているし、もちろんコーラスワークもいいし(笑)。間奏の声がたくさん重なっているところは多幸感を出したかったんです。もともとコーラスが得意というのがあるんですけど、それをふんだんに入れた曲になりましたね。最初、コーラスは2声で始まるんですけど、『リズと青い鳥』はふたりの女の子が主人公なので、そこは意識して映画に寄せてみました。
カップリングの2曲はどんなふうに選んだのですか?
Homecomingsは4人でアコースティック編成のライヴをする機会が結構多くて、その時はアレンジも変えているので、アコースティックバージョンもアピールしていきたいと考えていたことに加えて、この「Songbirds」に入れるとしたらアコースティックがぴったりなんじゃないかと思ったので、「Play Yard Symphony (for New Neighbors)」というHomecomingsの最新の曲のアコースティックバージョンを入れて、さらに「Songbirds」のアコースティックバージョンが入っていたらすごくいいかもねってことで、もう1曲、チェロとアコースティックギターと歌だけの「Songbirds (Miniascape sunset)」を加えたんです。
そんな今回のシングルは「Songbirds」が映画の主題歌ということもあって、これまでよりも多くの人に聴いてもらえるんじゃないかと思うのですが、どんなふうに受け止めてもらえたら嬉しいですか?
『リズと青い鳥』があったからこそできた曲なので、映画を観た流れで最後に流れる曲としてHomecomingsを知ってもらうのがベストだと思っています。それでCDを聴いてもらって…英語で歌っているので、映画館では歌詞の和訳の字幕が流れるんですけど、CDを聴いて和訳を改めて見てもらって、楽曲を理解してもらうっていうのが一番いいかなと思います。聴いて、読んで、理解するって行程が3段階あるんですけど、それが今のHomecomingsのやりたいことなので。しっかりと曲を聴いて、歌詞を読んで、感じてもらうってところまで持っていきたいんです。英語でやっているっていうのはそれがあるからなんですけど、山田監督もそれを理解して字幕を付けてくれたんです。そこも含めて監督と一緒に作っていった曲なので、そこまで聴いてもらえたら嬉しいです。
映画はご覧になりました?
はい。関係者の方がいっぱいいる試写会だったんですけど、恥ずかしいと思いながらもめっちゃ泣きました(笑)。自分の曲が流れるまでドキドキしていて、流れた瞬間…たぶん冒頭のメトロノームのカチカチって音からずっと泣いていました。すごくいい映画でした。映画の内容にも泣き、そこに自分が曲を提供できたってことにも泣き、最終的にバンドやってて良かったって思いました(笑)。
取材:山口智男
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