【MOROHA インタビュー】
俺らの曲は連続ドラマ。
今までを知ってほしい!
MOROHAがベストアルバム『MOROHA BEST~十年再録~』でメジャーデビューを果たす。タイトル通り、結成10年の軌跡と言える全12曲を再録した本作。これまでの活動も振り返りつつ、その聴きどころを語ってもらった。
このベスト盤でいよいよメジャー第一弾リリースですね。
アフロ
俺たちのことを知ってるのは、今はまだ音楽好きの詳しい人の中って感じなんですよ。でも、メジャーになってだんだんと外へ広がってる気はします。
そんな中で、3月に急遽リリースした新曲「ストロンガー」(メルカリで数量限定販売)もびっくりしました。
アフロ
すげぇ頭にくることがあって感情的な部分もあったんだけど、自分たちの人間性を見せておくっていうか、表明するのが大事だと思ったから。
UK
後付けだけどね(笑)。でも、“これがMOROHAだよ!”って言ってくれる人も多かったです。
アフロ
メジャーデビュー発表後の初リリースがメルカリなんて、バカっぽくてワクワクしたしね。MOROHAをまったく認識してなかった会社内の人たちにも“どういう奴らなんだろう?”って良くも悪くも関心を持ってもらえたし、これを止めないで俺たちの意志を尊重してくれたし、結果的にユニバーサルとの絆は強くなったと思います。
UK
最近はやさしい曲が続いてたから“ダークサイド来た!”みたいな反応も嬉しかった。
アフロ
その上で「革命」が『宮本から君へ』のエンディングテーマでしょ? 完璧な流れだよね。あのタイアップはドラマの制作チームをはじめ、主演の池松壮亮くんや原作の新井英樹さんがMOROHAをプッシュしてくれたんです。
あの曲がきっかけでMOROHAが気になった人、絶対に多いですよ。
UK
「革命」って自分たちの中でボツになる予定の曲だったんだよね。「tomorrow」もそう。どっちも最初は歌詞との噛み合わせが悪かったけど、ギターフレーズを変えたらしっくりきた感じで。メロディーが立ちすぎてたのをアレンジして、テンションの高くない、それでいてグッとくるメロディーにする過程がありました。
アフロ
UKはこのあたりから覚醒してきた気がする。そもそもMOROHAってギターがかなり歌ってるので、歌じゃなくてラップがちょうどいいんですよ。そこが絶妙だと思う。
ボツにならなくて良かったです。めちゃくちゃいい曲だから。
アフロ
「革命」は《半径0mの世界を変える》という歌詞があるように、世界平和とかじゃなく、自分のことしか変えられないから、自分が変わろうってだけなんです。やっぱり、怒りの感情は大切にしたいな。30歳をすぎたミュージシャンが“周りへの悔しさがなくなって、今はもう自分との闘い”みたいに落ち着いてくるけど、本当かよって。嘘くせぇと思うものを結構見てきたので、そこに対してはひたすら中指を立てなきゃいけない自覚があります。俺の性根には合わない。
UK
ムカつくことや葛藤はまだまだあるよね。あったほうがいいのかも。
こういうベスト盤にしたかった、みたいなのは?
UK
過去曲を寄せ集めただけのベストは好みじゃないから、納得がいくように再録したかったですね。
アフロ
UKもギターが上手くなってるし、俺も発声が全然変わってるから、今のスキルで録り直したいのはずっとあったんですよ。特に1stアルバム(『MOROHA』/2010年発表)とか、自分じゃもう聴けないレベルなので。
UK
そうそう。2ndアルバム(『MOROHA II』/2013年発表)の「バトル鉛筆」の歌詞でも言ってる通り、1stは《豚の餌だった》んで。10年経った今だからこその正解が自分たちなりに出せたと思います。
アフロ
あと、この拡散力のあるタイミングで、はじめましての人たちに今までのMOROHAを知っておいてほしかった。曲の入ってくる感じが絶対に変わるじゃないですか。俺らの曲は連続ドラマ的に出来上がってるから、昔の曲を聴いた上で新しい曲を聴いてもらったほうが染みるんです。こう言えばカッコ良いけど、3rdアルバム(『MOROHA III』/2016年発表)までががっつり売れてたらベストは必要なかったのかもしれないんで敗北とも取れる。そういう意味じゃ、しがみ付いて勝負懸けてます。
「二文銭」「三文銭」「四文銭」はそれこそシリーズのように続いてる曲ですよね。
アフロ
基本的にいつも自分のことを歌ってるけど、その中でも徹底してMOROHAのドラマを入れたつもりです。
UK
最初はこうなるなんて想像してなかったよね。地元の真田家の家紋に六文銭があって、“俺ら二人だから“二文銭”にしようぜ”だったじゃん。その続きの物語っぽい曲にしたくて“三文銭”ってタイトルにしたら火が付いて。“次は“四文銭”!? めちゃくちゃ楽しみ!”みたいにリスナーが先走ったり、でも俺らも“いつか“四文銭”を作るんだろうな”と思ったり。使命感と闘ってるようなところもあります。
再録の「三文銭」が印象的で、独特のかすれ声だなと思いました。
アフロ
あっ! そうなんですよ。この一曲だけ特殊。俺は決して良いとは思わなくて、やけっぱち感すらあるテイクで。けど、録り終わったあとにエンジニアさんが“これでしょ!”って言ってくれて、ブースから出てきたUKも同じ見解だったんですよね。
UK
“今のはエモくてヤバかったね!”って。ギターもそうだけど、がむしゃらっていうか、ちょっと粗いほうが良く聴こえることはあるんですよ。整っちゃうと面白くないラインっていうか。
収録曲で思い出すターニングポイントってありますか?
UK
「恩学」は曽我部恵一さんが初めてライヴを観に来てくれた時の記憶と結び付いてますね。下北沢のCCOで、すごくいい感じでライヴができたので。あの光景とざわつきは今も忘れられないです。
アフロ
作った当時の「俺のがヤバイ」はぶつける対象が身内というか、一緒にパーティーをやってるラッパーたちだったんですよ。歌詞を書く時にはもちろん超大物をイメージしてたんだけど、本当にその弾をぶつけられるとは思ってなかったかな。結局そいつらを驚かせるだけの“こんなこと言っちゃう俺、ヤバイだろ?”くらいの規模で。でも、いつの間にやら射程距離がどんどん伸びていって、今日はeastern youthと対バンしてこれを歌うわけだから。少しだけ感慨深い気持ちにもなりますね。
取材:田山雄士