SVB / Disco Is Long Life ドラムマ
シンは電子音楽の夢を見るか。まろや
かに朽ちゆくエクスペリメンタル・ポ
ップは、恍惚へとあなたを誘う

またひとつ、誰かの頭の中で流れるだけだった音がこの世界に紡ぎ出された。彼女の人生にこれまでずっと寄り添ってきたであろうこの音楽が、ついにカセットテープとなって放たれることに対して、私は素直に「おめでとう」と言いたい。

今回取り上げるSVBは、NY・ハドソンにて産声を上げたアーティスト。Sarah Van Burenによるソロ・プロジェクトだ。

※今回ご紹介する「Disco Is Long Life」は、1曲目の4分36秒辺りからだと思われる。

Disco Is Long Life by SVB(http://essveebee.bandcamp.com/album/disco-is-long-life)

BPM88ほどの緩やかなビートと、空間的な広がりを感じさせるシンセサイザーを基にした曲調。Inga Copelandの世界観をスパイスとして加えつつ、Unhappybirthdayの持つなつかしさを再解釈したようで、何ともドリーミーで捉えどころのない質感を呈している。ぼうっと聴いていると催眠に陥ってしまいそうだ。

サルヴァドール・ダリが夢で見た光景をキャンバス上に描き起こしたように、彼女もまた己の根底にある不安定な意識を具現化したかったのだろう。曲の中で歌われている”Show your knife.”という詞には怒りや哀しみ、疑い、恐れなどが象徴されているに違いない。一方で、”Disco is long life.”という「おまじない」にはそれらと対照的な精神性が窺える。もはや、この世の何もかもがこの二言に集約されている、とも思えるほど。

そこで勝手な憶測だが、彼女の制作アプローチはどちらかと言えば表現主義を志向しているのではないだろうか。なぜなら、外的な環境を前提とする印象主義の特性よりも、内的な経験や心情を主題とする態度が強く伝わってくるからだ。
だからこそ、楽曲はリアリズムに依拠せずなめらかな感触を持つことができるのだろうし、それでいて真実味を失うこともない(つまりこれは思い出なのだ)。そして、シンセのやさしい音色は胎児の記憶を呼び覚まし、適度にファンキーなカウベルがやがては「眠り」の補助線となってくれる。

そういうわけで、これはまさにSVBによるSarahのためのディスコ・ミュージックであり、ひいては私たちの人生にとっても――


【リリース情報】

SVB 『Disco Is Long Life』

Release Date:2018.06.01 (Fri.)
Label: FRESHMAGICK
Tracklist:
A1. Synergistic Energy Exchange // Disco Is Long Life
B1. Forcefield // Same Old Blues // Mirror Soul

Disco Is Long Life by SVB(http://essveebee.bandcamp.com/album/disco-is-long-life)

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