THE NEON BOYZによる『FOUR PIECES』
30周年記念ライブは、THE ROOSTERZの
“復活”だった

THE NEON BOYZ / THE ROOSTERZ 『FOUR PIECES』30th anniversary LIVE 2018」

2018.5.12@Zher the ZOO YOYOGI
日本のロック史に孤高のバンドとして名を留め、その影響を口にする多くの支持者を獲得しているルースターズ。彼らには「THE ROOSTERS」と表記する時代と、「THE ROOSTERZ」と表記する時代があった。「THE ROOSTERS」は1980年11月にシングル「ロージー/恋をしようよ」でデビュー。メンバーは大江慎也(Vo、G)、花田裕之(G)、井上富雄(B)、池畑潤二(Dr)というラインナップだった。彼らは “めんたいロック”の一角をシーナ&ロケッツやザ・モッズ、ザ・ロッカーズなどとともに担う福岡県出身のバンドとして脚光を浴びる。
1983年、池畑が脱退し、下山淳(G)、安藤宏一(Key)が加入。1984年1月、井上富雄が脱退する。同年4月発売の5thアルバム『GOOD DREAMS』よりバンド名表記を「THE ROOSTERS」から「THE ROOSTERZ」へ変更している。その後も、メンバーやサウンドの変遷を繰り返し、1985年には大江が体調不良のため脱退。大江脱退後は花田がヴォーカルを務める形で、活動は継続していく。1987年、元ロッカーズの穴井仁吉(B)、元ローザ・ルクセンブルグの三原重夫(Dr)が加入。1988年5月、SIONやPANTAも参加した8thアルバム『FOUR PIECES』をリリースし、同年7月の渋谷公会堂でのライブをもって「THE ROOSTERZ」は解散。最後のラインナップは花田、下山、穴井、三原の4人だった。
THE NEON BOYZ 撮影=三浦麻旅子
ルースターズそのものは、“S”も“Z”もその後、度々、再結成しているが、この3月には突如、1985年にリリースされたアルバム『NEON BOY』から取られた「THE NEON BOYZ」名義でのライブを、5月12日(土)に代々木のライブハウスZher the ZOO YOYOGIで行うことが告知された。花田、下山、穴井の3人にROOSTERZ時代、サポート・キーボードだった元オリジナルラブ、ブルートニックの木原龍太郎がゲストに加わることもアナウンスされる(ちなみに解散時のキーボードは元MUTE BEATの故・朝本浩文)。トム・ヴァーレインのテレヴィジョンとの共演後に体調を崩し、2年以上に渡りライブ活動を休止していた三原に、下山が「遊びに来ない?」と誘ったところ、体調も良くなっていたので「遊びでよかったら行こうかな」と三原が言ったのがライブ一週間前。そして、急遽ライブ3日前に木原を含む5人で4時間のリハーサルをしただけで当日に臨んだという。
このメンバーなら「THE NEON BOYZ」改め「THE ROOSTERZ」といっていいだろう。「『FOUR PIECES』30th anniversary LIVE 2018」と命名されたライブは、ルースターズのオリジナル・アルバムとしては最後のアルバム『FOUR PIECES』の発売30周年を記念して花田、下山、穴井、三原という“LAST4”が揃い踏み。4つのピースが嵌り、“再現できないジグソウ・パズル”が再現される。木原のサポートを得て、“Z”の限りない可能性を証明するものになる。
THE NEON BOYZ 撮影=三浦麻旅子
会場は超満員、立錐の余地もない。“Z”の復活には狭すぎる会場だが、むしろ、その狭さが伝説を縁取る。見逃したものは臍をかみ、舌打ちすることになるだろう。それだけ稀有な機会であり、“伝説”の始まりには相応しい。場内BGMとして流れていたジュリアン・コープの「LAND OF FEAR」(同曲のルースターズ・ヴァージョンは『FOUR PIECES』 に収録されている)の音が落とされ、会場の照明が暗転。下山が選曲したという坂本九の「見上げてごらん夜の星を」が流れる中、5人がステージに登場。いきなりのフル・メンバーである。三原や木原のピンポイントでのゲスト参加を想像していたものは不意打ちを食らう。バンドとしての登場に会場が騒めき、期待がヒートアップしていく。
1曲目は、下山の力強いギターリフから始まる「OH!MY GOD」。続いてグラムロック調の「NEON BOY」を畳み掛ける。ギター・チューニング後に花田が「Z会へようこそ。三原くんが帰ってきました」と言って、演奏したのは「Transmission」だ。アルバム『KAMINARI』リリース時の初回特典のソノシートに収録されていたナンバーである。「最初、三原が来ないはずだったので、去年みたいに3人で座ってやろうとしていたのに、楽は出来ませんね。恥ずかしい曲を」と花田が言って始めた曲は大江の脱退後、初のリリースとなった12インチ・シングル「SOS」だ。さらに同シングルにカップリングされ、現役時代にライブでやった記憶がないという「OASIS」を披露。とっておきのレアなナンバーを聞かせてくれる。
THE NEON BOYZ 撮影=三浦麻旅子
「気が小さいのでビール飲まないと歌えないんです」という下山のMC後、下山が「SEIREN」、「WARM JETTY」を歌う。再び、花田のヴォーカルで「鉄橋の下で」「あの娘はミステリーガール」、86年にリミックス盤もリリースされた「STRANGER IN TOWN」が歌われる。今年リリースから30年になるというラスト・アルバム『FOUR PIECES』からライブでは1回もやったことがないという「予言者」、「EVERYBODY’ S SIN」、「曼荼羅」と下山が歌う曲が3曲続いたあとは、イントロの入りを確認しながら、おそるおそる始まった「再現できないジグソウ・パズル」。フランスでレコーディングされたアルバム『PASSENGER』のタイトル・チューンで本編は終わる。
アンコールは、この6月20日に12インチ・アナログ盤がリマスター復刻される『C.M.C』からエリオット・マーフィーのカバー「DRIVE ALL NIGHT」、『FOUR PIECES』から「LADY COOL」。演奏を終え、ステージを降りるが、オーディエンスのアンコールを求める拍手と歓声に促され、再度登場して大江在籍時のルースターズ中期の代表曲「Venus」を花田が歌い、ライブを締めくくった。
THE NEON BOYZ 撮影=三浦麻旅子
『KAMINARI』、『PASSENGER』、『FOUR PIECES』など、“Z”時代後期のアルバムからのナンバーを中心に「THE ROOSTERZ」流のギターロックを轟音でかき鳴らす。花田と下山という二人のギタリストの個性と才能が火花を散らし、ロックンロールの醍醐味を堪能させてくれる。穴井と三原の鉄壁のリズムが二人を支える。三原は休業明けとは思えない。完全復活だろう。“LAST4”が繰り出すスリリングでエッジの立った音塊は、いささかラフなヴォーカルを含め、音が出た瞬間にかっこいいと唸らせるもの。実際、SNSなどでもかっこいいと呟くものが多かった。
また、変に逼迫などしていない。ゆとりのようなものも感じさせる。ゆとりと言っても、だらけてなどはおらず、心地よいテンションがそこにはあるのだ。下山の軽妙なMCはステージの上も下も和ませ、その場にいるものを笑顔にしていくし、穴井の天然なふるまいもアクセントになる。いい意味での時間の経過を感じさせるが、彼らも大人である、このくらいの愛想はあっていいだろう。いまの彼らにはしかめっ面は似合わない。
THE NEON BOYZ 撮影=三浦麻旅子
止まっていた時計が再び、動き出す。そろそろ解凍の時は来たのではないだろうか。この日、4人(実際は5人だが)が纏っていたバンドとしての空気感は、そう抱かせるに充分なものだった。すべてのわだかまりや滓のようなものは霧散していく。オーディエンスが“Z”の復活を待ち望むのは当たり前だが、むしろ、彼ら自身がその復活を必要としているようにも思える。1988年7月22日の渋谷公会堂での解散ライブで、花田は最後の演奏を終えると挨拶もせず、そのままステージを降りている。あっけない幕切れが彼ららしかったが、この日はメンバーが握手しながらお辞儀をして、観客へ挨拶をしていた。その姿を見ていると、何か、新たな始まりを予感させる。
“ONE NIGHT STAND”ではもったいない。これを単なる“イベント”や懐かしの“同窓会”にしてほしくないのだ。いま、新たに“Z”の可能性を追求すべきだろう。この夏、THE STREET SLIDERSの村越“HARRY”弘明と土屋“蘭丸”公平のユニット「JOY-POPS」が再結成されたが、日本のロックのミッシングリンクを埋めなければならない。同時多発、共時性などというと、こじつけ臭くなるが、いま、大人のオーディエンスが必要としているのは、そんな“異人”達の音楽だろう。ロックはかっこいいもの――これは“郷愁”ではない。“LAST4”が新たな扉をこじ開ける、誰もがそれを望んでいるのだ。

文=市川清師(MUSIC STEADY) 撮影=三浦麻旅子
THE NEON BOYZ 撮影=三浦麻旅子

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