『蝶の眠り』(C)2017 SIGLO,KING RECORDS,ZOA FILMS

『蝶の眠り』(C)2017 SIGLO,KING RECORDS,ZOA FILMS

【芸能コラム】中山美穂&夏川結衣&
南野陽子 さらに輝きを増すバブル世
代の女優たち 『蝶の眠り』『妻よ薔
薇のように 家族はつらいよIII』「
西郷どん」

 高校生や20代など、若者を主役にした作品が映画館のスクリーンをにぎわせる昨今。その一方で、このところ1990年前後のバブル期から活躍を続ける女優たちが存在感を発揮している。
 まず、80年代からアイドルとして活躍し、数々の作品に出演してきた中山美穂がいる。現在公開中の主演作『蝶の眠り』は、遺伝性アルツハイマーに侵された女性作家と若い韓国人留学生の恋をつづったラブストーリー。“作家”という孤高の職業にふさわしい透明感あふれるたたずまいと、病気への苦しみから、時に爆発する激しい感情が同居するコントラストが鮮やかな中山の演技が印象的だ。
 そんな彼女の代表作と言えるのが、1995年の『Love Letter』。この作品で一人二役を演じた中山は、ブルーリボン賞主演女優賞など多数の賞に輝き、女優としての評価を確立した。繊細かつみずみずしいタッチでつづられた物語は今も根強いファンを持つが、『蝶の眠り』のチョン・ジェウン監督もその1人。“『Love Letter』の中山美穂を主演に”と熱望し、シナリオと一緒にその思いを伝える手紙を中山に送って口説き落としたという。
 その意味で『蝶の眠り』は、積み上げてきたキャリアに導かれ、中山がたどり着いた一里塚だとも言える。
 透明感漂う中山とは対照的に、生活感あふれる演技を披露しているのが、『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』(全国公開中)の夏川結衣。この作品で彼女が演じたのは、会社員の夫と2人の息子、夫の両親と暮らす専業主婦の史枝。包容力と温かみのあるその芝居は経験からにじみ出たもの…かと思いきや、実は夏川自身は独身。この一点だけで、その演技力がよく分かるというものだ。
 初主演作『夜がまた来る』(94)でヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞するなど、当初から演技力に定評のあった夏川。20代ではOL、年齢を重ねてからは母親や主婦など、年代に合わせた役をしなやかに演じてきた。
 夏川が史枝を演じるのはシリーズ第1弾の『家族はつらいよ』(16)から数えて3度目で、もはや当たり役。しかも今回は主役と言ってもいい活躍ぶり。これも全て、長いキャリアが実を結んだ結果だろう。
 一方、テレビドラマで存在感を発揮したのが南野陽子だ。NHKの大河ドラマ「西郷どん」(日曜午後8時ほか放送中)に、篤姫(北川景子)の教育係・幾島役で出演。威厳と貫禄あるたたずまいに、コミカルなテイストを交えた演技で強い印象を残した。かつてのアイドル時代を知る視聴者は、彼女がこんなに味のある女優になるとは、想像もしなかったに違いない。
 ところで、先日、NHKで放送された「SWITCHインタビュー 達人たち」に出演した蒼井優が、山田洋次監督との対談で「若さだけでは芝居ができなくなる時期が来る」と語っていた。前述の3人も、そういった壁をいくつも乗り越えてきたに違いない。
 実際、南野は当サイトのインタビューで、「初の時代劇だった「武田信玄」(88)のときは、浴衣すら着ることができなかったが、その後、経験を積む中でさまざまなことを学び、今回の演技につながった」という主旨の発言をしている。長いキャリアに裏打ちされた彼女たちの芝居には、若い頃とは違った魅力がある。
 他にも斉藤由貴、若村真由美、富田靖子といった力のある女優がそろったバブル世代。彼女たちの活躍が、これからの日本の映画やテレビドラマをより豊かにしてくれるに違いない。(井上健一)

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