日高央×バンアパ荒井×フルカワユタ
カ ゆるめなのに露骨にテンパる!?『
PLAYTHINGS×rawer than raw』って何

7月7日土曜日、上野公園にある上野水上音楽堂で、アコースティック・イベント……いや、ドリンクやフードの出店の充実ぶりを見ると「こぢんまりしたフェスか?」というふうにも見えるが、とにかくアコースティック・ミュージック主体のイベント『PLAYTHINGS✕rawer than raw』が開催される。

一体どういう趣旨のイベントなのか、どのように始まってどのように続いて来たものなのか、今年はどうなりそうなのか、そもそもあなたにとってアコースティック・ライブって何? ということなどについて、出演者のうちの3人=THE STARBEMS・日高央、the band apart荒井岳史フルカワユタカにじっくり話していただきました。とりあえず、いろんな意味で、いろんな方向で、いろんなことがよくわかるテキストになっております。ではどうぞ。

■これぐらい時代に逆行したイベントは、必要な気がする(荒井)
──これはどういうイベントなのか、事情を知らない方のために説明していただいてよろしいですか?
荒井岳史:まず、『PLAYTHINGS』っていうコンピレーション・アルバムのシリーズがあって。そのコンピから派生した『PLAYTHINGS IN BLUE SKY』っていうイベントが、去年あったんです。そのときはこのお二方と、田上さん(TGMX)、忍さん(渡邉忍)、Keishi (Tanaka)とか、ストレイテナーのホリエ(アツシ)くんと9mm(Parabellum Bullet)の卓郎くんもいたりして。
日高央:『PLAYTHING』は、基本、アコースティックのコンピで。普段エレキでバンドをやってる人が、アコースティックでやりましょう、みたいなテーマですね。
荒井:それのイベントの2回目なんですけど。今年は6年ぶりにASPARAGUS主催の『BKTS』ってイベントがあって。ASPARAGUSとLOSTAGECOMEBACK MY DAUGHTERSと僕らでツアーするんですけど、そのファイナルが7月8日のO-EASTなので、前日ですけど、そのアフター・パーティー的に……前に僕がやっていた『rawer than raw』っていうイベントを、今年復活させてくださいってことで。
日高:それもアコースティック?
荒井:そうです。それと『PLAYTHING』の合同イベントっていうことになって。要はアコースティックな感じでライブをやるっていう企画です。まあ、普段からよく一緒にやってるメンツなんですけど、でも今回のこの集まり方はこのイベントならではなのかな、と。
日高:そうだね。
荒井:この人数と、お互いの拡張性の高さは。あ、拡張性っていうのは、この中のメンバーでこのふたりなら一緒にできちゃうとか、3人ならできちゃうとか。
フルカワユタカ:ただの寄せ集めじゃないっていうか、それぞれ関係性があるメンバーだから。
──去年はどんな感じでやったのか、教えていただけます?
日高:基本、そのコンピに入ってる曲は絶対やろうと思ってたんだけど、俺だけ打ち込み使っちゃってたからあんまりアコースティックぽくなくて。だから、ドラムとコーラスの女子を入れて、3人編成でライブをやったの。そしたら結果、俺がトリになっちゃって。
荒井:いや、でもあれで日高さんがトリじゃなかったら大変なことになってた。
日高:(笑)。まあそれはそうかも。
──そんなにみんなグダグダなんですか?
荒井:いやいや、ライブはちゃんとやるんですよ、みんな。でも自分の出番が終わると……今年もなんですけど、会場内に志賀高原のビールとか、出店されてるんですね。で、みんな飲んでヘベレケになってるっていう(笑)。社長がすごいいい方で、出演者にバンバンくれるんですよ、旨いビールを。
日高:酔っぱらった勢いで、誰かのステージに誰かが出て行くとかが、全然普通のことというか。田上くんがやってるときにフルカワが呼び出されるとか全然あるから。そういう、ちょっとゆるめのアコースティック・イベントです。
フルカワユタカ / 日高央 / 荒井岳史 撮影=風間大洋
──フルカワさん、急に呼ばれていかがでした?
フルカワ:いや、去年は、まあ僕は、ほんとに久々に、この界隈に戻してもらった感じだったんで。
日高・荒井:はははは!
フルカワ:やわらかく気を使っていただいていた感じだったので。むしろ今年じゃないですかね。今年はけっこうやれること多い気がします。
日高:禊だったからね、去年は(笑)。
フルカワ:あの日にダカさん(日高)の命令で、インスタ始めたんです。だから1周年なんです。インスタ1周年。
荒井:今や誰よりもうまく上げる。
日高:ねえ、うまいよね、おもしろいんだよ。「いいね」の数、ハンパないもん。
フルカワ:いやいや。でも、インスタ好きになっちゃって(笑)。
荒井:でもほんと、震災以降ぐらいで、アコースティック・ライブ自体が市民権を得たというか……僕みたいな一介のバンドマンがアコースティックでやることに対して、すごくオープンになったので。今ってほんと、いろんなバリエーションがあるなあと思うんです、アコースティック・ライブ自体も。その中で、これぐらい時代に逆行したイベントは──。
日高:はははは。そうだね。
荒井:必要な気がするんです。みんなまじめにやってるけど、場の空気感で、演者がもう半ば取り乱しちゃってるぐらいの(笑)。そういうのを観れるライブって、実はあんまりなくて。演者って、やってるときいろんなことを考えてるんですけど、パッと見でテンパってるかどうかあんまりわかんないもんじゃないですか。でもこのイベントだと、俺、露骨にテンパったりしたので(笑)。
日高:俺がトリで、最後にみんなでセッションしよう、っていうのも当日決まったんですよ。「STAND BY ME」ならコード4つだし簡単にできるでしょ、みんな知ってるから歌えるでしょ、ってやってみたら、いろんな人が取り乱して(笑)。
荒井:テンパりました、俺。最初は日高さんが歌って二番以降をみんなに振ってもらったら、俺以外の演者が誰も全然二番の歌詞を知らなくて(笑)。「こんな有名な曲なのに知らねえの? このミュージシャンたちは!」と思って。
日高:荒井以外みんな「♪When the night」で終わり(笑)。
荒井:それで俺テンパっちゃったんですよ。「誰も歌わねえの!?」って、しょうがなく歌うっていう。でも、そういうのを観れるイベントってあんまりないと思うんですよね。それを楽しんでもらいたいというか。もちろん、普段は全員ビシッとやっているから価値があることなんですけど。でもほんと、多様性が求められてる、みたいな感じじゃないですか? 今、実演の時代だから。だからライブのバリエーションは必要であって、そのバリエーションの中においては──。
日高:うん、かなりレアなイベントだと思う。
フルカワ:こんな時代に、肩の力が抜けまくってるイベント。脱臼してるぐらいの勢いで(笑)。
荒井:下手すりゃマイナス・プロモーションになりかねないイベントを、大掛かりなプロモーションまでしていただいてやる、っていうのはおもしろいなあと。あと、去年を経て、さらにソリッドになっている部分もあるから。たとえば俺はフルカワさんのアルバムに参加したりして──。
フルカワ:うん。一緒にアコースティック・ツアーも7本ぐらい回って。
荒井:だから一緒にやれることがめちゃくちゃ増えてるんです、去年より。だから、グダグダだとかテンパってるとか言ってますけど、実際は、かなりいいコラボがいっぱい観れるんじゃないかなって。他の人たちもそうだし。
フルカワ:うん、普段観れないものがね。
荒井:かなりおもしろい感じになるだろうなあと。あと、今年はフードも何店も入るんですよ。ホスピタリティが充実してるし、13時スタートだから、家族連れも来やすいと思いますね。子供に見せていいものをやるかどうかは置いといて(笑)。
荒井岳史 / フルカワユタカ / 日高央 撮影=風間大洋
■初めて観た頃のバンアパは「メロコアやめます」って宣言してた(日高)
──そもそもこの3人っていつ頃からの付き合いなんでしたっけ?
フルカワ:僕と荒井は古いですよ。15年くらいになるのかな。下北沢シェルターでバンアパと対バンしたりして。
日高:基本的には新宿ACB出身チームだよね? 俺から見ると、『AIR JAM』に間に合わなかった世代がACBに集まってたみたいな──。
荒井:そう、そんな感じです。
フルカワ:それは間違いないですね。俺、最初にバンアパ観たのはACBだった。バンアパがレーベルに入る直前くらいかな。
日高:そのすぐあとに、古閑さん(古閑裕/現在KEYTALK等が所属するKOGA RECORDS代表)も「バンアパやりたい」って言ってて。俺、古閑さんに言われてバンアパを観に行った。ちょうど「メロコアやめます」っていう時期で、ギャグで最後に1曲だけメロコアな曲をやるっていう。
フルカワ:そうそう、「メロコアやめます」ってMCで言ってた。
荒井:ダサいですね、その宣言(笑)。
日高:荒井が「メロディックはもうダサいものだ」って言ってて。それも俺は常々思ってたんで、うれしかったっていうか。音楽としてダサいんじゃなくて、『AIR JAM』が人気だからみんな右に倣えでメロディックやるのがかっこ悪いんだ、ってことね。それを荒井はいち早く言ってた。
フルカワ:当時、一瞬、バンアパって、タワーレコードとかのPOPで「ボサコア」って呼ばれてたよね。
日高:ははははは!
荒井:俺たちボサノヴァだった瞬間、ないよね?
フルカワ:「無理やりコピー付けなくてもいいのに」って思ったのを憶えてる。全然定着しなかったし(笑)。
日高:まあだから、いい時期だよ。みんなで新しいことをやろうっていう時期ね。
荒井:その時期の同期がDOPING PANDAで。日高さんはもっと上で。4人編成のときのBEAT CRUSADERSを観ていて……そもそも僕らのライブの立ち位置があるんですけど。上手側に僕がギター&ボーカルでいて、真ん中がギターで、っていうあの立ち位置は、当時のビークルを真似したんです。
日高:やりやすいもんね、あの立ち位置。
荒井:そうなんです。あの感じに衝撃を受けて、真似したんです。
日高:thaiくん(当時のギター)が真ん中にいて、初めて観た人がthaiくんがボーカルだろうと思ったら、ライブが始まると俺だった、っていうギャグをやりたかったの。
フルカワ:あ、狙いだったんですか?
日高:狙い。だから当時、すごい注意されたもん、「なんで真ん中に立たないんだ」って。まあ、メンバー替わって5人になってからは、真ん中にしたんだけど。
荒井:だからその伝統を俺たちが継承して、それをcinema staffがパクったっていう(笑)。
フルカワ:いやあ、でもいっぱいいたよ、バンアパのフォーメーションのバンド。
日高:バンアパ・フォロワー、多かったもんね。
荒井:でもその元はビークルなんですよね。
荒井岳史 / フルカワユタカ / 日高央 撮影=風間大洋
■一回、酔っぱらって荒井と大ゲンカしてます(フルカワ)
──で、そのあと、ちょっと疎遠になるんでしたっけ?
フルカワ:いやいや、日高さんとはそのままで。メジャーに行ったのも同じくらいのタイミングでしたし。作品に参加してもらったり、フェスで会ってしゃべったり。だからむしろ、インディーに残って活躍してた人たちと疎遠になったっていう。
荒井:俺たちが干したみたいな言い方しないでよ(笑)。「いなくなっちゃった」っていう感覚だったから、俺は。
フルカワ:だから、あのー、グッと……なんて言うんですか? 頑張ってたんで……。
日高:じゃあ俺が無難に説明するね。要は、メジャーに行くっていうのは、タイアップを取るとか、アニメの主題歌になるとか、いろんな音楽裏方政治的なことも頑張らなきゃいけなくなることで。たとえばインディーズのイベントに呼ばれて、出たくても、事務所やレーベルに「それよりもこっちを優先してください」って言われることもあるし。
なかなかアーティストのコントロールが効かない時期が、絶対あるんですよ。ビークルも、TROPICAL GORILLAのイベントに出たいけど、スケジュールが詰まっちゃって無理です、とかあったし。たぶんそういうことがドーパンも続いたんだよね?
フルカワ:いや、俺はそれはないです。
日高:あれ? せっかく庇ってやろうとしたのに(笑)。
フルカワ:いやいや、だから、意地を張ってたわけじゃないけど、出て行ったからには……みたいな。
日高:ああ、なるほどね。
フルカワ:という姿勢が誤解を生み、インタビューでの過激な発言でさらに誤解を重ね(笑)。自分で退路を断ってるつもりだったんですけど──。
日高:自分で自分を追い詰めてたんだね。
──それが一昨年ぐらいから変わって来た?
フルカワ:そうですね。Base Ball Bearのサポートをやったぐらいから、僕の何かが剥がれていきました(笑)。「ああ、人と何かやるの楽しいな」っていう。
日高:Base Ball Bearのおかげなんだ?
フルカワ:みんなのおかげです。
日高:ソロになってからってこと?
フルカワ:いや、ソロになっても最初の頃は、また別な感じで荒んでいて……一回、酔っぱらって、荒井と大ゲンカしてますし。
日高:なんで?
フルカワ:ケンカじゃあないか。俺が宴席の場で後輩ともめちゃって、それを荒井が「ダメだよおまえ」って怒ってくれたんですね。もっと詳細に言うと、俺が後輩ともめて、それを某先輩がなだめてくれたんだけど、俺がその先輩にも噛みつき始めちゃって──。
荒井:もっと正確に言うと、その先輩がキレそうになってたから、俺が先にキレたんです。ビートたけしがキレる前に、つまみ枝豆が――みたいなことです。
フルカワ・日高:ははははは!
フルカワ:もっとしっかり説明すると、その時の記憶、僕、まるっとないです。
日高:(笑)。ないんかい!
荒井:でも、その頃からまたフルカワさんも近くで活動してる感じになってきたんで。それで一緒にやったりするようになって。
フルカワ:だからほんと、いろんなことが、「何やってたんだろうな、俺」って……ほんとありがたいっす、一緒にツアー行ってもらえたりとか。あんなことしたのに(笑)。
荒井:はははは。謎の紆余曲折が。
フルカワ:「それ必要だったの?」っていう。でも、まとめるわけじゃないけど、今度のその上野のイベントも、その紆余曲折の果てが見えると思います(笑)。荒井と俺の。
荒井:確かに去年とはね、ヴァイブスの感じが全然違うと思う。
フルカワユタカ / 日高央 / 荒井岳史 撮影=風間大洋
■とにかく予定調和がイヤなんですよ、この集まりは(日高)
──誰かと誰かが一緒にやったりするときの前準備っていうのは?
日高:一切ないです。
荒井:全部当日です。
日高:特に田上くんとかは、「事前にリハするのかっこ悪い、イヤだ」みたいなのがあるんだよね、意地が。俺もそうだし。ひとりでこっそり家で練習してるんだけど、「前もって集まってリハしよう」はイヤなの。その場で言われてサッとやってる感じを出したいっていう。
荒井:絶対一回集まってリハしときゃいいんですけどね。そしたらテンパらないんだけど。
日高:でも、誰かがテンパってるのを見て笑いたかったりとか。
荒井:でも、ことアコースティックに関しては、誰かと一緒にやるっていうときは、準備しない方がよかったりしますね。それを狙うこともあります。それこそフルカワさんとツアーしたとき、「この曲一緒にやろうか」っていうのをサウンドチェックで一回やるんだけど、「これ以上やらない方がいい」ってそこでやめたりとか。
フルカワ:うん。上手くなっちゃうおもしろくなさみたいな。
日高:どうしても置きに行っちゃうんだよね、アコースティックって。編成が少ないしシンプルだから、完成形がすぐ見えて。だから、演者全員の共通点だと思うんだけど、とにかく予定調和がイヤなんですよ、この集まりは。「最後はアンコールで全員でこの曲です」とか言われると引いちゃう人たちだから。
荒井:それだとおもしろくないんでしょうね、やってる方も。だから、その最たるケースですね、このイベントは(笑)。
──そもそも弾き語りをやり始めたきっかけも、教えていただいていいですか?
日高:そういえば荒井はthe band apart naked(the band apartによるアコースティック・ユニット)もやってるもんね。
荒井:そうですね、今や。僕個人として弾き語りをやり始めるきっかけをくれたのは、それこそ日高さんと吉村さんなんです。bloodthirsty butchersの吉村秀樹さん。
日高:俺と吉村さんでアコースティック・ツアーに行くからって、荒井を誘って。
荒井:2007年にそれがあったから、僕はソロも始めたりとか。
日高:あ、そうだったの?
荒井:はい。その後、東日本大震災があって、ひとりでもライブやるようになった、というのもあるんですけど。それで2013年に自主でソロ・アルバムを作って出したんですけど、きっかけは2007年のあれですね。
──ってことは、やってみたらおもしろかったということ?
荒井:いや、最初はまったく楽しくなかったです。緊張しかしないというか。
日高:ああ、緊張してたね、確かに。
荒井:もうガチガチで。でも、あれから10年近くやってきて、やっとわかってきました、アコースティックの楽しい感じが。っていうか、歌うこと自体がやっと楽しくなってきた。20年バンドやって、「なるほどな」っていう。
日高:俺はそれが一周して、今、弾き語り、いちばんつまんない時期なの。
荒井:なるほど。だからきっと、そういうときが俺にもくるんですよ。
日高:たぶんね。なんか今、自分で自分のゴールが見えちゃってる時期だから、あんまり楽しめないというか。それこそフルカワみたいに自分を追い詰めなきゃいけないんだね、きっと。弾けないようなフレーズの曲をやるとか、普段やらないようなカヴァーをやるとか。だから、当日までに楽しくなるように、仕上げてきます(笑)。
──日高さんは最初は?
日高:俺は最初は、そもそもあんまり弾き語りが好きじゃなくて。フォーク・シンガーのレコード、そんなに聴かないし。だってフォークの人って、レコードとかCDはちゃんとバンド編成で録ってるじゃん。ずっとそこに矛盾を感じてたの。なんのための弾き語りじゃい! と、最初は思ってて。
でも、断れなくて、嫌々引き受けたりして、やってるうちに、歌っていてなんか気持ちいい瞬間があったんですよね。歌うのが楽しくなって、ちゃんとやろうと思って、20万円ぐらいの高いアコギを買ってみたりして、すごい練習するようになった。フルカワはいつから?
フルカワ:昔は全然やってなかったですね。最初にやったのは『SAKAE SPRING』っていう名古屋のイベントで、ひとりで出てくれって言われて。
日高:いつ頃?
フルカワ:2008年とかそれくらいですね。で、ガチガチに緊張したんです、出る前に。「ヤベえ」って思って……(奥田)民生さんが、出る前にビール一杯飲んでから出るって聞いたんで、真似して一杯飲んでから出たら、歌詞が全部飛んじゃって。
日高・荒井:はははは!
フルカワ:で、もう、服のままプールに入ったぐらい汗びっしょりで。失笑に次ぐ失笑で、ラジオ局、ZIP-FMの人も来てたんですけど……普通、「でも、よかったですよ」とか言うじゃないですか? 「今日はしょうがないですね」って言われて。
日高・荒井:(爆笑)。
フルカワ:「ああ、これ、マジでヤバかったんだ」と思って。イベンターとかは多少厳しいことを言うときもあるけど──。
日高:媒体の人に言われるときついね。
フルカワ:それからトラウマになっちゃって。だからドーパンの間はやってないです、一切。で、ソロになって、アコースティックだとフットワーク軽く行けるから、やるようになったんですけど、それも最初はほんとにしんどくて。荒井と同じで、緊張しかしない。何がおもしろいのかわからない。お客さんも近い。しゃべることもない……。
っていう感じだったんですけど、ずっとやってると、だんだん自分に余裕が出てきて。回数を重ねたことで、やっと、なんとかなってきたかなっていう感じですね。2月に荒井とツアー回りましたけど、それはすごい楽しかったです。今はいちばん楽しいですね。バンドと同じぐらい楽しいな、と思う時もあります。しゃべるのも楽しくなっちゃって。
日高:(笑)。いいことじゃん、それは。
フルカワ:インスタが楽しくなったのと同じで。
荒井:はははは。この1年でね。
日高:ギター覚えたての女子高生みたいなこと言ってるね。
フルカワ:いや、でも近いものがあるかもしれません。「あ、こうすると間が保つんだ」ってことがライブでわかったりとか。本当にバンドとはまったく違いますね。
荒井:そう、全然違うんだよね。
フルカワ:歌詞もすぐ飛ぶし。バンドのときはでかい音鳴ってるからなんとかなるんだけど、ひとりだとごまかせないじゃないですか。「ああっ、歌詞間違えたっ!」って言っちゃったりして。
日高:でも、それでいいんだよね。
フルカワ:そのおもしろさがわかってきましたね。

取材・文=兵庫慎司 撮影=風間大洋
フルカワユタカ / 日高央 / 荒井岳史 撮影=風間大洋

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