デーモン閣下、名古屋能楽堂に優しい
“うた”を響かせたプレミアムコンサ
ート

デーモン閣下の<うただま プレミアムコンサート>千秋楽公演が、6月30日、愛知・名古屋能楽堂にて行なわれた。
今回のコンサートは、魔暦19(2017)年に発表された閣下の最新ソロアルバム『うただま』を基調としたもの。アンプラグド中心のサウンドに乗せて“あの頃の風景”や“美しく受け継いで行くべき心”が綴られたアルバム同様、優しく響く“うた”の世界で客席を魅了した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

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オープニングSEが聴こえると会場からは少し笑い声が聞こえてきた。最近放送されている「ラクマ」のCMの音である。これは閣下らしいほんの“おあそび”の導入部分だ。

そして、暑い夏の日を連想させる虫の声の中、厳かな鐘の音が幾つか鳴った後、演奏が始まる。パッフェルベルの「カノン」を主題とするイントロに乗せられたアルバムのリード曲「少年時代」からコンサートはスタートした。見慣れている激しいロック・ヴォーカルとは異なり、閣下は静かに言葉をつむぎ、客席もはなから座ったままそれに聴き入る。

続けて、NHK Eテレ『2355』で閣下が歌う異色曲「砂漠のトカゲ」。観客の手拍子が起こり、楽しい雰囲気に。次の「見上げてごらん夜の星を」では、閣下の新境地“優しいうた”に客席では早くも涙する人がかなりの数。この3曲が冒頭まずは披露された。
CD収録音源とは楽器編成が異なるが、アコースティック楽器のみという編成は変わらない。今回のツアーでは、アルバムにも参加しているスギテツの杉浦哲郎(Pf,Key)がバンドマスターとしてコンサート用にオリジナルアレンジを担当。さらに、彼と共にスギテツとして活動する岡田鉄平(Vn)、閣下とも何度も共演している稲葉明徳(篳篥,笛,笙)、吉見征樹(Tabla)、瀬尾高志(Cb)という著名“すご腕”プレイヤーたちとの豪華コラボレーション編成。アコースティックならではのプレイヤーの息づかいがダイレクトに心に響き渡り、閣下の歌声との見事なハーモニーがコンサート開始から観客の心を魅了する。そして、名古屋能楽堂という伝統ある能舞台に、篳篥(ひちりき)、笛、笙(しょう)という邦楽器が、荘厳な佇まいを更に引き立たせる。

閣下一流の小粋なトークに客席が和んだところで、演目はアルバム『うただま』の収録曲順で進行してゆく。2ブロック目の冒頭、雅やかな笙の音が奏でられると、会場は一気に時空を超える雰囲気に包まれ「千秋楽 - 雅楽・盤渉調古典曲をモチーフとした独自楽曲 -」で閣下のアートの世界が噴き出す。続けて、地球誕生から人類誕生までを大らかに表現する「やつらの足音のバラード」、さらにアルバム収録と同じ“ニューヨークの街の雑踏音”がSEとして流され、閣下の世を忍ぶ仮の姿の父親がかつて「この曲の様な、そんな家庭を築きたい」と言ったとされるドヴォルザークの交響曲「新世界より」、その第2楽章に閣下が『うただま』で新たな歌詞をあてた「今も翔ぶ - From The New World -」が抒情的に披露され、まさにプレミアムな一味違う閣下のコンサートに観客は引き込まれて行く。
一方「このコンサートのテーマは“うた”だから」と、再びデーモン閣下のトークが始まるや、絶妙なトークが会場を笑いの渦に包む。NHKでの短歌の番組にゲスト出演する際に、これまで作った短歌についてのアンケートがあり、それまで短歌を詠んだ経験がなかったので、これを機会に挑戦してみようと思い自身が今まで作った歌詞をモチーフにして短歌を作ってみた、というエピソードを披露。なんと、どんどん面白くなり3日で117首もの短歌を作ってしまったという。

そんなエピソードから、せっかく作った短歌をただ寝かせておくのはもったいない!と、それらの短歌を記した札をボックスに入れてステージに用意し、閣下がそこからランダムで取り出し披露する。くじのように札をボックスから引き、短歌の頭部分だけを詠む閣下に、バンドメンバーたちがインスピレーションで演奏を繰り広げ、閣下はその演奏に合わせてモノマネも交えつつ(!?)歌唱しながら短歌を詠じるという即興演奏を繰り広げ、会場は大爆笑。さすがデーモン閣下!というエンターテインメント性溢れるステージ演出であるとともに、今回のバンドメンバーの何にでも対応できてしまう“半端ない”スキルの高さがクローズアップされた。
ステージは後半戦に突入。ここからは“育った場所から離れ故郷を偲ぶ”といったイメージのブロックとも言えるだろうか。まずは“戦争での残留孤児や、異国に拉致された人々とその家族”などをテーマに作られたという閣下のオリジナル曲「Zutto」。今まで幾多のアレンジにて披露されてきたこの曲だが、今回はトイピアノ、ヴァイオリン、笛というアレンジでまた別の哀愁が奏でられていた。

再びアルバム収録と同じ“秋の虫たちの声”がSEとして流され、童謡の「故郷」が今度は鍵盤ハーモニカを中心とした演奏で披露される。閣下の歌唱もかつて聴いたことのないような閑かさで、またも観衆は別世界へと誘われてゆく。そしてこのブロックの締め。アルバムでは1番のみが収録されていた「君が代」が、めったに歌われることのない2番までを入れて披露され、閣下の穏やかな声と能楽堂の景色も相まって幻想的に美しく響き渡ると、世界と宇宙と日本がそこに呼応する感覚が観客を魅了した。

最後にNHK Eテレ『0655』ですっかりお馴染みとなっている「toi toi toi !! - うただま編 –」にて、会場全員が一体となって盛り上がり本編が締めくくられ、アルバム『うただま』収録曲全10曲の披露が完遂された。
アンコールでは聖飢魔IIの名曲「嵐の予感」がまず披露され、閣下の往年の信奉者からは悲鳴にも似た叫び声が上がった。しみじみと懐かしい空気に包まれた会場。しかしこの場面に及んでも閣下と“愉快ですご腕な仲間たち”のエンターテインメントは終っていない。先ほど披露した閣下の“オリジナル短歌の札”、これをプレゼントする抽選会が行なわれた。数分前に思いがけない曲を聴き涙していた観客がまた笑顔に包まれる。涙したり笑ったり感動したり、忙しいけれどもそれが“閣下ならでは”であり、観客もそれを求めて足を運んでいるように、筆者には思われる。

抽選会でひとしきり盛り上がったあと閣下から観客に、訓話とも決意表明とも受け取れるちょっとまじめな話があり、その流れで最後の曲に。

![Exclamation](閣下のソロ・ユニット)オリジナル曲「AGE OF ZERO!」が、このスペシャルな編成、シンフォニック・アレンジでのヴァージョンで演奏開始、総立ちの観衆は一気にクライマックスの歓喜に包まれ、感動的なプレミアムコンサートツアーは幕を閉じた。
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<デーモン閣下「うただま プレミアムコンサート」>

魔暦20(2018)年
6月18日(月)、19日(火) 東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
6月24日(日) 兵庫・新神戸オリエンタル劇場
6月30日(土) 愛知・名古屋能楽堂

【出演】
※6月18日、19日、30日
デーモン閣下(Vo) / 杉浦哲郎(Pf,Key) / 稲葉明徳(篳篥,笛) / 吉見征樹(Tabla) / 岡田鉄平(Vn) / 瀬尾高志(Cb)

※6月24日
デーモン閣下(Vo) / 杉浦哲郎(Pf,Key) / 稲葉明徳(篳篥,笛) / 吉見征樹(Tabla) / 岡田鉄平(Vn) / 大桃俊樹(Cb)

【セットリスト】
~SE~Interlude -天-
1. 少年時代
2. 砂漠のトカゲ
3. 見上げてごらん夜の星を
4. 千秋楽 - 雅楽・盤渉調古典曲をモチーフとした独自楽曲 -
5. やつらの足音のバラード
~SE~Interlude -人-
6. 今も翔ぶ - From The New World -
7. Zutto
~SE~Interlude -地-
8. 故郷
9. 君が代
10. toi toi toi !! - うただま編 –
- ENCORE -
11. 嵐の予感
12. AGE OF ZERO!

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