アリアナ・グランデ、なぜ逆さまなの
か?
都内を中心に街のあちこちに、ひっくり返ったアリアナ・グランデの写真が出現しているのをご存知だろうか。
8月17日(金)にリリースされる彼女の4作目のアルバム『スウィートナー』(Sweetener)のジャケット写真だが、なぜ逆さまなのか? よく見ると、書かれている文字も上下が逆だったり、裏返しだったり。そういえば、その新作からのファースト・シングル「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ」のMVも、天地がグルグル回転したり、アリアナが天井を歩いたり。重力とは無関係な空間を遊泳してみせる。
▲逆さまの看板広告(渋谷区桜丘町17-9第2昭和ビル)
エッシャーのだまし絵のようなこの世界観について、彼女は「もう二度と地面が見つからないというアイデアをもてあそんでみたの。やっと今、私は地に足が付いたって感じだから」(『タイム』誌5月号より)と説明する。つまり昨年5月に起こったテロ事件がモチーフだという。英国マンチェスターの彼女のコンサート会場で起こった爆破事件は、実行犯の他、22人のファン(その多くは幼い子どもたちだ)と保護者の命を奪い、250人が負傷。精神的な障害を負った人は、800人以上と言われる。
当然ながら、ツアーはすぐさま中断されると、彼女はアメリカへと帰国。だが、その2週間後に再びマンチェスターに舞い戻ると、チャリティ・コンサート<ワン・ラヴ・マンチェスター>を主宰する。ケイティ・ペリーやジャスティン・ビーバー、リアム・ギャラガーをはじめ多数のアーティストを率いてテロに屈しない姿勢を表明すると共に、現地の人々を励ました。続けて自身のツアーも再開させ、8月には日本公演を実施。すっかり立ち直ったかのように見受けたが、事件から1年以上たった今、初めてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていたことを告白。めまいや呼吸困難、不安や鬱に悩まされてきたという。
当然ながら、ツアーはすぐさま中断されると、彼女はアメリカへと帰国。だが、その2週間後に再びマンチェスターに舞い戻ると、チャリティ・コンサート<ワン・ラヴ・マンチェスター>を主宰する。ケイティ・ペリーやジャスティン・ビーバー、リアム・ギャラガーをはじめ多数のアーティストを率いてテロに屈しない姿勢を表明すると共に、現地の人々を励ました。続けて自身のツアーも再開させ、8月には日本公演を実施。すっかり立ち直ったかのように見受けたが、事件から1年以上たった今、初めてPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患っていたことを告白。めまいや呼吸困難、不安や鬱に悩まされてきたという。
▲2017年6月4日、英国マンチェスターで起きた爆発事件の犠牲者を支援し、同市内で行われたチャリティー公演<One Love Manchester>で涙ぐむアリアナ・グランデ
「事件について話すの辛すぎる。あんなに多くの人々がとても辛い経験をして、大切な人を失ってしまった。でも、これは現実に起こったこと。被害者の家族や私のファン、あの場にいた誰もが、とてつもなく辛い経験をした。時が癒してくれるのを待つばかり。ただ私は、自分の体験をこんなふうに話すべきじゃないと感じている。何も言うべきじゃないと…」(UK版『ヴォーグ』誌7月号より)
「事件について話すの辛すぎる。あんなに多くの人々がとても辛い経験をして、大切な人を失ってしまった。でも、これは現実に起こったこと。被害者の家族や私のファン、あの場にいた誰もが、とてつもなく辛い経験をした。時が癒してくれるのを待つばかり。ただ私は、自分の体験をこんなふうに話すべきじゃないと感じている。何も言うべきじゃないと…」(UK版『ヴォーグ』誌7月号より)
▲UK版『ヴォーグ』誌7月号でナチュラルな新メイクで表紙を飾ったアリアナ・グランデ
犠牲者や家族を差し置いて、自身の苦悩を語るのは心苦しくもあり、そして、いまだ涙なくして語れないという。だからこそ「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ」の中では”もう流す涙なんて残っていない”と歌って前置きした上で、徹底的にポジティヴで力強いメッセージを発信する。メソメソ泣いたり、悲惨な状況を嘆くのではなく、前向きに生きようと。さらにはスウィートなサウンドで世界を癒したいと語り、アルバム・タイトルには『スウィートナー』(=甘味料)と付けられた。
犠牲者や家族を差し置いて、自身の苦悩を語るのは心苦しくもあり、そして、いまだ涙なくして語れないという。だからこそ「ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ」の中では”もう流す涙なんて残っていない”と歌って前置きした上で、徹底的にポジティヴで力強いメッセージを発信する。メソメソ泣いたり、悲惨な状況を嘆くのではなく、前向きに生きようと。さらにはスウィートなサウンドで世界を癒したいと語り、アルバム・タイトルには『スウィートナー』(=甘味料)と付けられた。
彼女が表紙を飾った『タイム』誌”ネクスト・ジェネレーション・リーダーズ”の特集号の中で、アリアナは「最悪の状況から最善を生み出したい」と語り、「何もしないで文句を言うより、何か美しいものを創造しましょうよ」と訴える。その言葉を具現化するかのように、アルバムからのセカンド・シングル「ゴッド・イズ・ア・ウーマン」のMVでは、アリアナ史上最もコンセプチュアルでアーティスティックな映像をクリエイト。”女性こそが万物の根源だ”というテーマを掲げて、壮大な宇宙観を表現する。あのマドンナも声で出演。彼女のモノローグに合わせてアリアナはハンマーを振り上げ、女性の地位向上を阻むガラスの天井を割ってみせる。まさしく”次世代リーダー”の名に相応しいパワーとバイタリティを見せつける。
▲初めてメディアでマンチェスター事件について自分の気持ちを語った米『タイム』誌の表紙のアリアナ・グランデ
そして、もちろん愛もたっぷり。アルバム中の大半の曲が恋愛ソングであり、メッセージ色の強い2曲のシングルでさえ彼女の手にかかると、なぜだか男女の恋愛ソングに成り代わる。そこが、いかにもアリアナらしくもあるのだが。しかも「ピート・デヴィッドソン」なる曲まで収録。6月に電撃婚約を果たしたコメディアンの彼氏の名が冠され、彼に捧げられている。公私共々、様々な愛がアルバムには溢れ返り、スウィートな癒しが満載だ。「過去とは決別。新しいチャプターの幕開けよ」と宣言するアリアナは、相変わらずキュートだが、すっかり逞しく中身は変身。今や自分のためではなく、世界のために歌い始めたアリアナ・グランデがここにいる。
文:村上ひさし
文:村上ひさし
アリアナ・グランデ『スウィートナー』
2018年8月17日(金)全世界同時発売
1.レインドロップス(アン・エンジェル・クライド)
2.ブレイズド feat. ファレル・ウィリアムス
3.ザ・ライト・イズ・カミング feat. ニッキー・ミナージュ
4.R.E.M.
5.ゴッド・イズ・ア・ウーマン
6.スウィートナー
7.サクセスフル
8.エヴリタイム
9.ブリージン
10.ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ
11.ボーダーライン feat. ミッシー・エリオット
12.ベター・オフ
13.グッドナイト・アンド・ゴー
14.ピート・デヴィッドソン
15.ゲット・ウェル・スーン
16.ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ(インストゥルメンタル)※ボーナストラック
17.ゴッド・イズ・ア・ウーマン(インストゥルメンタル)※ボーナストラック
1.レインドロップス(アン・エンジェル・クライド)
2.ブレイズド feat. ファレル・ウィリアムス
3.ザ・ライト・イズ・カミング feat. ニッキー・ミナージュ
4.R.E.M.
5.ゴッド・イズ・ア・ウーマン
6.スウィートナー
7.サクセスフル
8.エヴリタイム
9.ブリージン
10.ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ
11.ボーダーライン feat. ミッシー・エリオット
12.ベター・オフ
13.グッドナイト・アンド・ゴー
14.ピート・デヴィッドソン
15.ゲット・ウェル・スーン
16.ノー・ティアーズ・レフト・トゥ・クライ(インストゥルメンタル)※ボーナストラック
17.ゴッド・イズ・ア・ウーマン(インストゥルメンタル)※ボーナストラック